2016年10月28日金曜日

卓廉士先生の『素問』標本病伝論(65)講義 その4

「先逆而後病者.治其本」――例:『霊枢』四時気(19)」「腹中常鳴.気上衝胸.喘不能久立.邪在大腸.刺肓之原.巨虚上廉.三里」〔【現代語訳】しばしば腹鳴があり、気が胸部に向って衝〔つ〕き上げ、息苦しくて長くは立っていられないのは、病邪が大腸にあるからです。このときには、気海・巨虚上廉(上巨虚)・足三里に取穴し刺します〕。先に腹中の逆気があって上って胸部を衝き、後に喘息を病んで長くは立っていられない。これは邪気が大腸に留まっているためである。生理的な状態では、衛気は「胸腹に散」〔S.43〕するので、腹部に本来は分散すべきであるのに、いまは反対にあつまって上逆している。よって「肓の原」(気海穴)を鍼刺して腸道の気機〔気の機能活動〕をととのえ、同時に下肢の本部に位置する上巨虚と足三里などの腧穴を取って逆気をさげる。他の例:『霊枢』四時気(19):「小腹控睾.引腰脊.上衝心.邪在小腸者.連睾系.属于脊.貫肝肺.絡心系.気盛則厥逆.上衝腸胃.熏肝.散于肓.結于臍.故取之肓原以散之.刺太陰以予之.取厥陰以下之.取巨虚下廉以去之.按其所過之経以調之」〔【現代語訳】下腹部から睾丸にかけて引きつり、腰背部にも痛みが波及し、胸に衝〔つ〕きあげて心蔵部が痛むのは、病邪が小腸にあるからです。小腸の経絡は皐丸に連なり、脊椎に付き、上って肝と肺を貫いて、心系に絡んでいるからです。そこで病邪が盛んですと、逆乱した気が上逆し、胃腸に衝〔つ〕き上げ、肝蔵を熱し、肓膜に取り、臍部に集結します。したがってその治療は肓の原の気海穴に取穴して結集した邪気を散らし、さらに手の太陰肺経に取穴して補法を行い、足の厥陰肝経に取穴して瀉法を行います。小腸経の合穴の下巨虚に取穴してその邪気を除き、同時に症状が現れている経脈を勘案して調整します〕。疝気は小腸気痛〔小腸が腹腔内から陰嚢にさがり、引っ張られるような痛みの症状〕、あるいは寒気が肝脈に滞留したことによる。この証は先に厥逆があり、その後に気がへそに結ぼれる。鍼刺は、本部の腧穴、すなわち足厥陰と足太陽の滎穴と輸穴、それに小腸の下合穴を取るべきである。

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