2017年8月2日水曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕05

二 中風(ちゅうぶう)門 かぜにあたる
△夫(それ)中風(ちゅうぶう)の證(しょう)に於(おけ)る劉河間は火(ひ)を主(しゅ)とし、東垣は気(き)
四ウラ
を主とし、丹渓は湿を主とす。後世(こうせい)に至(いたり)て種々(いろいろ)の論辨ありといへども、今(いま)これを載(のせ)て益なし。故(ゆえ)に略す。脉は大法浮沈なるものは吉(きつ)なり。急疾(キュウシツ/はやきはやく)にして大数(タイサク/はやく)なるは、凶(あし)し。
○中風(ちゅうぶう)寒(かん)を夾(さしはさ)むときは、浮遅(フチ/うかみおそく)を帯(おぶる)ぞ。暑(しょ)を夾(はさむ)ときは、脉虚す。湿を夾(さしはさ)むときは、脉浮(フ/うかむ)にして濇(ショク/しぶる)なり。
○卒中にて言(もの)いわず、肉痺(しび)れて人事を知(しら)ざるには、神道の穴に灸すること三百壮(ひ)すれば、立(たち)どころに差(いゆ)べし。
〔『鍼灸經驗方』「卒惡風不語肉痺不知人:神道在第五椎節下間、俛而取之、灸三百壯、立差」。〕
○遍身(そうみ)麻(しび)れ語(もの)言(いう)ことかなはず、口眼(くちめ)斜(ゆが)み喎(ひき)つりなどするには、間使・大迎(たいけい)・三里・承漿・合谷等(とう)に灸すること二十一壮(ひ)づつ十五日を約(やく)して治(ぢす)べし。
〔『鍼灸經驗方』「口眼喎斜:合谷・地倉・承漿・大迎・下三里・間使、灸三七壯」。〕
○遍身(そうみ)痒くして虫の行(はう)がごとく、但(ただ)怏々(こころわろ)く忍びがたく、或(あるい)は呵(あく)び嚔(はなひ)り
五オモテ
眼口(めくち)斜(ゆが)む等(とう)には、合谷・三陰交・曲池・神門(じんもん)に針入(いる)ること七部、而(しこう)して後(のち)肘の尖(とがり)に灸すること七壯(ななひ)、神効あり。
〔「怏」字、原文「快」に作る。意味から「怏」とした。九 積聚門も参照。「部」字は「分」が正しい(あるいは、かなと認識して「ぶ」と表記すべきか)と思われるが、ひとまずかえないでおく。以下、おなじ。 「而」のふりがな原文は「しかふう」か「しかつう」。/『鍼灸經驗方』「遍身痒如蟲行、不可忍:肘尖七壯。曲池・神門鍼。合谷・三陰交」。〕
○言舌(ごんぜつ)蹇渋(もとらず)して半身遂(かな)はず、或(あるい)は左右ともに癱瘓(ナンカン/なえ)し、久しく愈(いえ)ざるには、委中の穴に三稜針を入(いる)ること二部。悪血数升を出(いだ)して治(ぢす)べし。若(もし)くは軽症のものには、風市(ふじ)・絶骨・三里・曲池・肩井・列缺・委中等(とう)に灸すること、毎日五十壮(ひ)づつ、七十日を約(やく)して治(ぢす)ること神効(しんこう)あり。
〔癱瘓:本来の音は「タンタン」。 /『鍼灸經驗方』「言語蹇澁、半身不遂:百會……肩井幷風市・下三里・絕骨・曲池・列缺・合谷・委中・太冲・照海・肝兪・支溝・間使……」〕
○中風(ちゅうふう)睛(め)を弔視(つりあげ)語言(ものいう)こと能(あた)はず、手足(てあし)屈伸(のびかがみ)ならざるには、脊(せ)の第二椎(ずい)と五椎(すい)との上に七壮(ひ)、艾炷(カイチュウ/もぐさ)の大(おおき)さ小(ちいさ)さ、棗(なつめ)の核(たね)の大さにして炷(すゆ)べし。神効あり。
〔「椎」字、原文「推」に作る。『鍼灸経験方』にしたがい、改める。以下、手偏と木偏の字は意味にしたがい、適宜改める。 /『鍼灸經驗方』「中風眼戴上、及不能語者:灸第二椎幷五椎之上、各七壯同灸。炷如半棗核大」。〕
△中風(ちゅうぶう)の証、内傷(ナイショウ/うちのそんじ)に因(よる)ものは、外(ほか)の風邪(ふうじゃ)にあらず。多(おおく)は労役(ロウエキ/ほねおり)
五ウラ
することの甚(はなはだ)しく而(して)、真気を虚(へら)し、或(あるい)は憂へ怒(いかる)ことの積(つん)で其(その)気を傷(やぶ)るもの、卒(にわか)に目(め)眩(くるめ)いて倒れ、手足癱(なえ)痺(しび)れ、眼口(めくち)喎(ひきつ)り斜(ゆが)み、舌(した)強(こわ)りて語言(ものいい)がたき等(とう)は、必(かならず)しも針術(しんじゅつ)を数(しば)々施(ほどこ)すべからず。反(かえっ)て其(その)精神(せいじん)を竭(つく)し、命期(メイキ/いのち)を促(はやむ)るに至る。慎むべし。また肩井・曲池・三里・絶骨・風市(ふじ)・列决〔ママ〕等(とう)は、中風(ちゅうぶう)の妙灸(みょうきゅう)穴といへども、虚証の中風(ちゅうぶう)には多く炷(すゆ)べからず。三七壮(ひ)を期(ご)とし、但(ただ)薬液(ヤクエキ/くすり)の中(うち)を補ひ気を益(まし)を見(み)とめ、或(あるい)は防風・羗活・天麻・半夏・木香等(とう)の内(うち)より順多(じゅんき)して、手足に真陽の回(めくる)を候(うかが)ひて後(のち)、多く針灸すべし。深く虚実を認(とめ)て施さざれば、害多し。慎(つつし)むべし。
〔順多:ふりがなによれば、「順氣」の誤字か。/認(とめ)て:とむ。さがしもとめる。尋・求。〕

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