2017年8月26日土曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕21

十八 口歯門 幷(ならび)に唇舌(シンゼツ/くちびるした)
経に曰(いわく)く、脾気は口(くち)に通ず。口臭きは、内熱(ないねつ)口乾き、或(あるい)は瘡(くさ)を生ずるは、脾熱に属(ぞく)す、と。唇舌(しんぜつ)・牙歯(げし)倶(とも)に其因〔ソノヨリ〕て病(やむ)ところ異(ことな)りといへども、脾熱(ひねつ)・胃鬱(いうつ)に属するもの居(おお)多(し)。故(ゆえ)に部門を頒(わけ)ざるなり。
〔・「曰(いわく)く」は、原文のまま。『靈樞』脈度(17):「脾氣通于口。脾和則口能知五穀矣」。/・瘡(くさ):皮膚病の総称。ただれ・うみをもった水ぶくれなど。特に、胎毒・梅毒。かさ。/・居多:多数を占める。〕
○歯痛(はいたむ)には、疼(いた)痛(む)歯に灸七(なな)壮(ひ)。即効(そくこう)あり。然(しか)れども慎しんで灸を加(くわう)ことなかれ。必(かならす)附骨疽を患(うれう)なり。
〔『鍼灸經驗方』齒部・上下齒痛・又方:「灸痛齒、七壯。慎勿加灸、必患附骨疽」。〕
〔附骨疽:附骨疽者、以其無破、附骨成膿、故名附骨疽。喜著大節解中、丈夫・產婦喜著䏶...凡人身體患熱、當風取涼、風入骨解中、風熱相摶、便成附骨疽。其候嗜眠沉重、忽忽耳鳴。又秋月露臥為冷所折、風熱伏結而作此疾。急者熱多風少、緩者風多熱少(中國歷代文獻精粹大典·下 )。/疽之生於筋骨部位的稱為“附骨疽”。多因風寒濕阻於筋骨、氣血凝滯而成(中醫名詞術語選釋)。〕
○上歯(うわば)の疼(いたむ)には、下(しも)三里に灸七(なな)壮(ひ)。効(こう)あり。
〔『鍼灸經驗方』齒部・上齒痛:「下三里、灸七壯」。〕
○下歯(したば)の痛(いたみ)には、合谷に灸七(なな)壮(ひ)。奇効(きこう)あり。
〔『鍼灸經驗方』齒部・下齒痛:「合谷灸、七壯」。〕
○又(また)強く歯(は)いたむには、急に丁子(ちょうじ)・甘艸(かんぞう)の煎汁(せんじしる)を噉(ふく)んで即効(そくこう)あり。又(また)方(ほう):麝香を痛む歯(は)に附(つけ)て妙効(みょうこう)。
〔麝香:雄麝臍部麝腺的分泌物。黃褐色或暗赤色,香味甚烈,乾燥後可製成香料,亦可入藥。〕
○虫喰(むしくい)歯にて瘡(くさ)を生じ、腐(くさ)れ爛(ただ)るるものには、
二十八オモテ
承醤(じょうしょう)に灸すること七(なな)壮(ひ)。妙(みょう)なり。
〔承醤:承漿。〕
○口噤(くちくいし)ばり、牙車(はぼね)開(ひらか)ざるには、上関・頰車に五十壮(ひ)。神効(しんこう)あり。
○重舌(ちょうぜつ)舌強(したこわ)ばり、食すること能はざるには、神門・隠白・三陰交、交々(かわるかわる)針灸(しんきゅう)して効(こう)を斂(おさ)む。
〔『鍼灸經驗方』口部・重舌舌裂舌強:「舌者、心之竅也。神門・隱白・三陰交」。〕
〔・重舌:舌下靜脈鬱血而腫脹,如多生一小舌,或與舌體連貫成花狀、伴有頭項痛、發熱等,日久可潰爛。/①即舌下粘膜炎症、腫脹,突起狀若小舌,由心脾濕熱,熱重於濕所致。②舌下腺囊腫,隆起突出如小舌。為心脾濕熱,濕重子熱所致。二者均位於舌下,與舌相疊,故稱“重舌”。〕
○口中(こうちゅう)血(ち)出(いづ)るには、上星(じょうしょう)に五十壮(ひ)。風府に針(はり)三部(さんぶ)。
〔『鍼灸經驗方』口部・口中出血不止:「上星五十壯」。〕
○口中(こうちゅう)・舌(した)ともに白(しろく)して、娥口(かこう)のごとく瘡(くさ)を生ずるは、大抵血熱(けつねつ)の致(いた)すところなり。承漿(じょうしょう)・営宮(えいきゅう)を治(ぢ)すべし。或(あるい)は桑(くわ)の汁(しる)を塗りし、忽(たちま)ち治(ぢ)すべし。
〔・「塗りし」は「塗りて」か。〕
〔・娥口:『重訂囊秘喉書』蛾口:「一名雪口。初生月內小兒,滿口舌上白屑,如蛾口樣者,故名之。形如腐衣,後變黃色,轉如黑色者,不治。若口如魚口,或作鴉聲者,難治。此心脾積熱,又名迷口」。〕
〔・営宮:未詳。『鍼灸經驗方』別穴になし。字形と口中の瘡からすると、労宮の誤りか。『鍼灸經驗方』齒痛・齒齗腐:「合谷・中脘・下三里、幷針。承漿七壯、勞宮一壯」。〕
○口中、膠(にかわ)のことく粘(ねば)るは、大谿(たいけい)を治(ぢ)すべし。
〔『鍼灸經驗方』口部・口中如膠:「大谿」。〕
○唇(くちびる)乾(かわ)燥(き)さけて、繭(かいこ)のごとくなるは、多く陰虚火動(かどう)に因(よ)る。迎香(けいこう)・虎口(ここう)に灸すべし。
〔虎口:『鍼灸甲乙經』卷三:「合谷、一名虎口」。〕

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