2017年8月14日月曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕15

十五オモテ
十二 淋病門 及び遺尿(よばり) 遺精(せいのもる) 白濁(おりもの)
〔よばり:夜尿。「ばり」は「ゆばり(尿)」の略。〕
△淋病(りんびょう)は、五臓(ごそう)の不足より、膀胱(ぼうこう)に熱を貯(たくわ)ふて致(いた)すと。湿毒(しつねつ)の熱(ねつ)蒸(むし)来(きた)りて、水道(すいどう)通(つう)ぜす、淋瀝(しただり)て出(いて)ず。或(あるい)は尿(しょう)水(べん)、豆(まめ)の汁(しる)のごときあり。或(あるい)は沙石(シャセキ/すないし)、或(あるい)は冷(ひえ)淋(しただ)りて、膏(み)蜜(つ)のごとく、或(あるい)は熱し淋(しただ)り、又は血出(いづる)あり。
○絶骨・太冲(たいしょう)・気海・中極に百壮(ひ)。曲骨には七壮(ひ)より二十一壮(ひ)に至る。
〔『鍼灸經驗方』陰疝・五淋:「復溜・絕骨・太冲・氣海・中極、百壯。曲骨、在橫骨上、毛際陷中。七壯至七七壯」。
・「湿毒(しつねつ)」は,「湿毒(しつどく)」のあやまりだろうか。/・しただる:滴る。下に垂れる。〕
○老人、気虚(きょ)して淋病を患(わずら)ふには、脊(せなか)第七(しち)九(く)の椎(すい)の𤄃(ひら)き一寸半、各(おの)おの二十一壮(ひ)。
○小便赤く渋(しただ)り、閉(とぢ)て通ぜす、及び熱淋・血淋、或(あるい)は酒(さけ)の後(のち)、房事(ホウジ/いんよく)を行なひて病(やみ)たるには、気海に二百壮(ひ)と臍下(へそのした)一寸半に灸五十壮。手の左右の曲池に五
十五ウラ
壮(ひ)。五日を約(やく)して治(ぢ)すべし。
〔臍下一寸半:気海穴の位置と同じ。/『萬病回春』淋證:「八正散 治心經蘊熱,臟腑閉結,小便赤澀,癃閉不通及熱淋、血淋。如酒後恣欲而得者,則小便將出而痛,既出而痛,以此藥主之」。〕
○知(しら)ず、精(せい)の遺(もる)るあり。夢見て遺(もる)るあり。腎兪に二十一壮(ひ)。陽関に五壮。
○遺尿(イニョウ/よばり)には、気海・石門に百壮(ひ)。八髎に五十日。約(やく)するに、十日を焼(やき)て治(ぢす)べし。妙々(みょうみょう)。然れども飽食(ぼうしょく)するときは治(ぢ)せず。食(しょく)すること日(ひ)に一合(いちごう)半。食を減じ胃嚢(いぶくろ)を細くして後(のち)、灸すべし。
〔五十日:「五十壮(ひ)」の誤りか。〕
△余(よ)常に瓜蔕(かてい)を用ひて一吐(いっと)せしめ、胸膈を踈(すか)し後(のち)、食を減ずること七日、体(から)多(だ)微(すこ)しく瘦(やせ)たるを見て、烏頭(うづ)・附子(ぶし)・破胡紙(はこし)の類を服さしめ、屡々(しばしば)面眩(めんけん)に似たるときは、治(ぢ)を得(う)る。瓜葶を與(あた)ふこと増減あり。病者(びょうしゃ)の面色(めんしょく)を照(てら)して用(もち)ゆ。口授(くじゅ)。
〔破胡紙:補骨脂。マメ科。オランダビユの成熟した実。/ ・瓜葶:瓜蔕(蒂)。/・面眩:瞑眩。〕
○溺道(しょうべん)より白き濁(にごり)たるもの出(いづ)るには、照海・期門・陰蹻・腎兪・三陰交
十六オモテ~十九
〔おそらく「十七」~「十九」の板番号(丁)をぬかしたのであろう。〕
皆灸すること二十一壮(ひ)。神効(しんこう)あり。
〔『鍼灸經驗方』陰疝・溺白濁:「照海・期門・陰蹻・腎兪・三陰交、皆灸」。陰蹻は照海穴の別名でもあるが、同時にもちいられているため、交信の別名と考えられる。〕

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