2017年8月15日火曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕17

十四 心痛門 幷〔ナラビ〕に胸痛(むねいたむ)
△心痛、多くは気鬱に因(より)て熱をなし、痛(いたみ)をなす。心真痛の如きは、針灸(しんきゅう)・薬兕(やくお)の能(よく)治(ぢ)すべき所に非(あら)ず。其(その)発する
二十オモテ
なり。心(む)胸(ね)卒(にわか)に疼痛(トウツウ/いたみいたみ)して悶(もた)へ苦しみ、或(あるい)は汗大(おおい)に出(いで)、或(あるい)は手足の爪(つめ)の甲(こう)倶(とも)に皆(みな)青色(あおく)、其急なること夕(ゆうべ)に発(はっ)して朝(あした)に死す。之(これ)に類する症(しょう)あり。針灸(しんきゅう)薬(くすり)の及ぶ所なれば、医の豫(あづか)るところなり。其(その)一二(いちに)を知(しら)して初心に便(たより)す。
〔・心真痛:下文「真の心痛」。『靈樞』厥病(24):「真心痛.手足青至節.心痛甚.旦發夕死.夕發旦死」。/・兕:おそらく「咒」(「呪」の異体字)の誤り。/・其發するなり:おそらく「其發也」で、「其の發するヤ」と訓じて、下文につづけるべきであろう。/・初心に便す:初心者に便宜をはかる。〕
○心(しん)微(すこ)しく痛(いたん)で汗出(いで)苦しきあり。若(もし)早く治(ち)せざれは、真(しん)の心痛にいたる。倶(とも)に急に三稜針を用(もっ)て、神門・列缺・間使・大敦(たいとん)を刺(さし)て多く血(ち)を取(とり)棄(すて)べし。
○胸(むね)痛んで、冷(つめた)き酸(す)き水(みづ)を吐くことあり。尾窮骨(びきゅうこつ)に灸五十壮(ひ)。足の大指(おおゆび)の内(うちうち)、初(はじめ)の節(ふし)の横紋(よこすぢ)の中(なか)に三壮(ひ)。即効あり。
○痰(たん)厥(のぼ)せて胸(むね)痛(いたむ)ことあり。或(あるい)は胸(むね)腹(はら)ともに痛(いたむ)には、脊(せ)の第三椎(ずい)の下(しも)、四の椎(ずい)の
二十ウラ
上(うえ)に近きを量り、脊(せ)骨(こつ)の上(うえ)より両傍(りょうぼう)へ各々(おのおの)四分に灸(きゅう)二十一壮(ひ)より五十壮(ひ)に至る。立(たち)ところに愈(いゆ)。奇〻(きき)妙〻(みょうみょう)の神効あり。
○年(とし)久しく胸(むね)痛(いたむ)には、足(あし)の拇指(あうゆび=おーゆび)の爪(つめ)の甲(こう)の根もとの当中(まんなか)に灸七壮(ひ)。男(おとこ)は左(ひだり)、女(おんな)は右(みぎ)り。章門に七壮(ひ)。太冲(たいしょう)・独陰に五壮(ひ)。立(たち)どころに愈(いゆ)。もし或(あるい)は愈(いえ)ざれば、更(さら)に焼(やく)べし。
○腹中(ふくちゅう)に陽気微(うす)くして、冷気(れいき)、心(しん)を衝(つい)て痛め、或(あるい)は痰沫(だんまつ)を嘔(おう)し、大便(たいべん)頻(しき)りに利せんとして、快(こころよ)く通(つう)せず、或(あるい)は腹中(ふくちゅう)倶(とも)に痛(いたむ)には、臍(へそ)の下六寸、両傍(りょうほう)の𤄃(ひら)き各々(おのおの)一寸づつに灸すること二十一壮(ひ)。
〔・臍の下六寸:骨度法では臍(神闕)から曲骨までを五寸とする。〕
○又方(ほう)、蝋縄(もとゆい)を以(も)て病人の口の両角(りょうすみ)を一寸となし、夫(それ)を三摺(■けおり)になし、三角(さんかく)とし、一角(いっかく)を以(もっ)て
二十一オモテ
臍(へそ)の心(しん)に置き、両角(りょうすみ)は臍(へそ)の下(しも)に垂(たら)しめ、両傍(りょうほう)の端(はし)に点(しる)記(し)を附(つけ)て、灸二十一壮(ひ)。神効あり。立(たち)どころに差(いゆ)るなり。
〔・もとゆい:元結い。髻(もとどり)を結ぶ糸。/・摺:おりたたむ。「三摺」は、三つに折るという意味であろうが、はじめのカナ(■)が読めず。どなたか、ご教示下さい。/・心:芯。中心。〕
△是(この)病(やまい)急に救(すくわ)ざれは、三四日の中(うち)に死す。大病(たいびょう)の後(のち)、或(あるい)は老人などに是(この)症(しょう)を発せば、一両日(いちりょうにち)に死す。急に丁子(ちょうじ)・乾薑(かんきょう)の類(るい)を服さしめて後(のち)、艾火(がいか)を施すべし。必ず針(はり)を刺(さす)ことなかれ。針(はり)に補瀉ありといへども、実は瀉に効(こう)あり。瀉するときは気を脱す。予(よ)常に門生(もんせい)に示して針(はり)を禁ず。針(はり)もし腹内(ふくない)に下(くだ)りて、痛(いたみ)忽(たちまち)止(やむ)ことあり。忽(たちまち)死す。恐(おそ)るべし。丁子(ちょうじ)・乾薑(かんきょう)・茴香(ういきょう)の咽(の)とに下(くだ)りて回陽(かいよう)するなり。甚(はなはだ)速(すみや)かなり。
○心(むね)痛(いた)んで涎(よだ)れ沫(あわ)を嘔(えづ)き吐(はく)こと数日(すじつ)にして愈(いえ)ざれば、必ず三(みつ)の
二十一ウラ
虫(むし)あり。是(この)虫を取(と)れは、涎(よだれ)の多きも止(やみ)、心(むね)の痛(いたみ)も止(やむ)なり。上脘に灸すること七壮(ひ)。十二日にして治(ぢ)す。三虫(さんちゅう)を取(とる)の法、口授(くじゅ)。
〔・三つの虫:三虫。三尸のことであろう。〕
○胸中(きょうちゅう)へ瘀血逆(のぼ)り滞り痛(いたむ)あり。胗候(みよう)、口伝(くでん)。下(しも)三里・内関・神門・太淵に鍼(はり)して即効(そくこう)あり。
○心(むな)痛(いた)んで口禁(クチキン/くいしばる)ずるには、期門に三壮(みひ)。陰卵(きんたま)の下(した)、十字の紋(すぢ)に五壮(いつひ)。

0 件のコメント:

コメントを投稿