2017年8月12日土曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕12

九 積聚(しゃくじゅ)門 しやくつかへ
△積(しゃく)はつむと訓(くん)じ、聚(じゅ)はあつまるの義(ぎ)にして、気血(きけつ)の何日(いつ)となく積(つみ)て塊(かたまり)をなし、或(あるい)は集(あつま)り結ぼれて、腹中こころ好(よ)からぬの名(な)なり。五積(ごしゃく)の差別(しゃべつ)ありといへとも、針灸(しんきゅう)の治療(ぢりょう)多くは同じ。
○痞悶(つかえ)といふて、心下(むなした)怏(あし)く脹(はり)、こころに覚(おほ)へ、按じて痛(いたみ)なきを痞塊(ひしゃく)といふ。専(もつ)はら痞根(ひこん)の穴(けつ)に灸すべし。此(この)穴所は脊(せ)の第十三椎(ずい)の下(し)も左右へ𤄃(ひら)くこと各(おのおの)三寸半。多くは左辺に灸す。
〔覚(おほ)へ:原文「ほ」ではなく「え」に見えるが、意味として「覚(おぼ)へ」であろう。〕
十一ウラ
若(もし)左右ともに塊(かたまり)あらば、左右を焼(やく)べし。毎日二百壮(ひ)より三百。
○臍下(サイカ/へそ)に結(かた)塊(まり)ありて碗(わん)の大(おおきさ)のごとく、或(あるい)は盆(ぼん)のごときあり。新久を問〔トワ〕ず、関元・間使、各(おの)おの三十壮(ひ)。太冲(たいちゅう)・太谿(たいけい)・三陰交(さんいんこう)・合谷(こうこく)等(とう)に灸三壮(ひ)。腎の兪(ゆ)に年(とし)の壮(かず)。病者(びょうしゃ)若(も)し一月(いちげつ)を焼(やか)は果(はた)して病(やまい)の塊り消散すべし。
〔『鍼灸經驗方』積聚・臍下結塊如盆:「関元・間使、各三十壯。太冲・太谿・三陰交・合谷、各三壯。腎兪以年壯。獨陰、五壯」。〕
○疼積(とうしゃく)にて塊(かい)なさば、肺兪に百壮(ひ)。期門に五壮(ひ)。脊(せ)の第六椎(ずい)の下(した)七椎(しちずい)の上(うえ)、骨(ほね)をはづして右辺(みぎり)に炷(すゆ)べし。小(ちいさ)き棗(なつめ)の核(たね)の大(おおきさ)にして二十一壮(ひ)。神効(しんこう)あり。
〔『鍼灸經驗方』積聚・痰積成塊:「肺兪、百壯。期門、三壯」。したがって、「疼積」は「痰積」のあやまり。「みぎり」は「ひだり」の反対。〕
○奔豚気(ほんとんき)といふは、小腹(しょうふく)痛(いたむ)積(しゃく)なり。是(これ)は腎水(じんすい)の虚(キョ/へり)より発(おこる)の積(しゃく)にして、二種(にしゅ)あり。一は、奔豚(ほんとん)として動気(どうき)下(しも)より発(はつ)し、中脘・上脘と敵上(うちのぼ)るあり。
十二オモテ
倶(とも)に腎の積なり。脇(わき)章門に百壮(ひ)。腎兪に年(とし)の壮(かず)。気海に百壮(ひ)。期門に三壮(みひ)。独陰(どくいん)に五壮(いつひ)。太冲(たいしょう)・太谿・三陰交・田根(でんこん)に各(おの)おの三壮(みひ)。約するに五十日を焼(やき)て治(ぢ)すべし。若(も)しくは軽症のものは、廿一日に治(ぢ)す。
〔『鍼灸經驗方』積聚・奔豚氣:「小腹痛也。氣海、百壯。期門、三壯。獨陰、五壯。章門、百壯。腎兪、年壯。太冲・太谿・三陰交・田根、各三壯」。『鍼灸經驗方』獨陰二穴:「在足大指次指內中節橫紋當中。主胸腹痛及疝痛欲死。男左女右」。
『鍼灸經驗方』甲根四穴:「在足大拇指端爪甲角、隱皮爪根左右廉內甲之際。治疝。鍼(一分)灸(三壯。極妙)」。よって「田根」は「甲根」のあやまり。『鍼灸大成』獨陰二穴「在足第二指下,橫紋中是穴,治小腸疝氣,又治死胎,胎衣不下,灸五壯」。甲根の出典に『針灸奇穴辞典』は『千金翼方』を掲載するが、『千金翼方』原文は「治卒中邪魅恍惚振噤法︰鼻下人中及兩手足大指爪甲,令艾炷半在爪上,半在肉上」で、「兩手足大指爪甲」、主治もことなる。
「一は」といい、「二は」あるいはもう一度の「一は」がなく、「倶に」という。脱文あるを疑う。〕
○腹中の積塊(しゃくかい)上(かみ)へ行(のぼ)るあり。中極に百壮(ひ)。また懸枢の穴に三壮(ひ)。これは第十二椎(ずい)の節(ふし)の下(した)にあり。伏(うつぶ)して取(とる)べし。
〔『鍼灸經驗方』積聚・腹中積聚氣行上行:「中極、百壯。懸樞、三壯。在第十三椎節下間。伏而取之」。本文の「十二椎」はあやまりであろう。〕
○積気(しゃくき)熱(ねつ)を貯(たくわ)ふときは、動気(どうき)臍(へそ)の傍(かたわら)より生じて、心先(むなさき)へ上(のぼ)り、気(き)聚(あつま)りて塊(かたまり)をなし、脊(せ)の第(だい)七九(しちく)の椎(ずい)より、或(あるい)は腰(こし)を周(めぐ)りて鬱重(ウツチョウ/うつしおもく)し、或(あるい)は痺(しび)れ、或(あるい)は咳嗽(せき)出(いで)て大便難(かた)き症(しょう)あり。腎兪に年(とし)の壮(かす)。肺兪・大腸兪・肝兪・太冲(たいしょう)等(とう)に二十一壮(ひ)。三十日を焼(やき)て、腹中に脹(チョウ/はり)
十二ウラ
悶(モン/くるしき)を覚(おぼ)へざれば、日(ひ)に百壮(ひ)より二百に及ぶ。数日(すうじつ)にして灸一万壮(ひ)に至れば、積根(しゃくこん)すでに絶(たえ)て、生涯(しょうがい)積(しゃく)の患(うれ)ひなし。
○積聚(しゃくじゅ)に五種(ごしゅ)あり。伏梁(ふくりょう)・息賁(そくほん)・肥気(ひき)・痞気(ひき)・奔豚(ほんとん)。いづれも倶(とも)に臓病(ぞうびょう)に属す。聚(じゅ)は腑病(ふびょう)を主(つかさど)る。皆(みな)艾火(がいか)を用ひて効(こう)あり。唯(ただ)其(その)急に発(はつ)して腹(はら)いため、及び心下(しんか)を攻(せむ)るときは、鍼術(しんじゅつ)を施(ほどこ)し急に治(ぢ)すべし。天枢・章門を刺(さく)こと二寸。即効(そくこう)あり。
〔刺(さく):おそらく「刺(さす)」のあやまり。〕

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