2017年8月10日木曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕11

八 嘔吐門 附 翻胃(ホンイ/しょくかえす) 呑酸(トンサン/すきおくび) 呃逆(キツギャク/しゃくり)
〔すきおくび:酸っぱいゲップ。胃内酸水、口にのぼる。〕
△凡(およそ)嘔吐(えづき)する症は、陰気上(かみ)へ逆(さかのぼ)り、陽気の勝(たえ)ざる
十オモテ
より致(いた)すものなり。又(また)心腹痛んで嘔(オウ/えづき)するなり。あるひは寒熱より致すあり。或(あるい)は痰飲の腸胃に客(かく)となりて致すあり。これは病(やまい)ありて後(のち)嘔するなれは、其(その)主(しゅ)たる疾(やまい)を療(りょう)すれは、嘔(おう)は自(みづか)ら止(や)む。医者切(せつ)に其〔ソノ〕因(より)て来(きた)す所を察せずんは、何(なに)の効(こう)か有(あら)ん。
○下(しも)閉(とぢ)て大便せず、気上(かみ)へ逆(のぼ)せて嘔吐するは、関格(かんかく)の症(しょう)といふ。宜しく四関(しかん)の穴を針して幾次(いくたび)も瀉すべし。
〔四関の穴:『鍼灸大成』『鍼灸経験方』:合谷と太衝をいう。〕
○腹中に冷気を含んで嘔吐するには、中脘・内関に針して、陽気を揺(うご)かし、三陰交に針を留(とど)めて、呼吸十二息(そく)。大〔オオイ〕に神効(しんこう)。
○乾嘔(カンオウ/からえづき)するには、尺沢・中渚(ちゅうちょ)・隠白(いんはく)・章門・間使・乳(ち)の下(した)一寸等(とう)に灸三壮(みひ)。
〔乳下一寸:『備急千金要方』卷十六胃腑・嘔吐噦逆第五「乾嘔:灸心主尺澤亦佳。又灸乳下一寸三十壯」。〕
十ウラ
○気、膈(むね)に否(つか)へて食進(すすみ)がたく、脊(せ)の七・九痛(いたむ)には、膈の兪(ゆ)・亶中(たんちゅう)・間使に三壮(ひ)。
○吐せんとして吐せざるには、心兪。
○嘔吐、忽(たちま)ち寒く、たちまち熱して、心神(しんじん)煩(わつら)はしきには、中脘・商丘・大椎(たいずい)・中衝・絶骨。
〔忽ち……たちまち:乍A乍Bにおなじ。二つの対立する状態・動作がつぎつぎに交替してあらわれる。〕
○虚人(きょじん)の常に食進みがたくして、嘔(えづき)の気味(きみ)あるは、脊(せ)の第七(しち)八(はち)九(く)椎(ずい)の𤄃(ひら)き、両方に灸五百壮(ひ)。即効あり。
〔椎の𤄃:脊椎から(一定の距離)はなれること。「開くこと」「去ること」とも表現される。〕
○噯気(あいき)呑酸は、胃中の熱と膈(カク/むね)上(しょう)の痰、相(あい)逆(むか=むこ)ふて清水(せいすい)を嘔吐す。中脘・膈兪に灸すべし。
△胃口(いこう)冷へ、手足ともに冷へ、呃逆(しゃくり)するには、中脘に灸すること二十一壮(ひ)。大に効(こう)あり。然(しかれ)ども是等(これら)の症は、針灸(しんきゅう)の能(よく)治(ぢ)すべきにあらず。丁子(ちょうじ)・乾薑(かんきょう)・桂枝(けいし)・良薑(りょうきょう)・柹蒂(してい)の
〔柹葶:柿蒂。柿のヘタ〕
十一オモテ
類を温服(うんふく)して良効(りょうこう)あり。湯液(トウエキ/くすり)に因(よっ)て針灸(しんきゅう)を与(あた)ふべし。然(しか)るときは、愈(いえ)ざるの病(やまい)なからむ。

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