21-6錦嚢鍼灸秘録
京都大学医学図書館富士川文庫所蔵『錦嚢鍼灸秘録』(キ・223)
オリエント出版社『臨床鍼灸古典全書』21所収
錦嚢鍼灸秘録序
將三軍持兵挾鉾而討賊者謐逆乱安國家
也以刺灸醫病者以天地合人身悉隂陽揆
度奇恒則百病無不治也纔以寸針細艾救
萬民之疾苦其巧無異冝哉前人以醫比言
與良相於于斯上基素難下取諸家而標本
既備集成一扁学者悟此意而窮極其理德
普及天下不亦幸甚哉
旹寛政七年乙卯秌七月之吉 定栄堂識
【訓み下し】
錦嚢鍼灸秘録序
三軍を將(ひき)いて兵を持し、鉾を挾みて賊を討つ者、逆乱を謐(しず)め國家を安ずるなり。
刺灸を以て病を醫する者は、天地を以て人身に合し、陰陽を悉らかにし、
奇恒を揆度するときは、百病治せずということ無し。纔(わず)かに寸針細艾を以て、
萬民の疾苦を救う。其の巧、異なること無し。宜(むべ)なるかな、前人、醫を以て
良相と比べ言うこと。斯(ここ)に於于(おい)て、上(かみ)、素難に基づき、下(しも)、諸家に取りて、標本
既に備わり、集めて一扁を成す。學者、此の意を悟りて、其の理を窮極せば、德、
普(あまね)く天下に及ばん。亦た幸甚ならずや。
旹(とき)寛政七年乙卯秌(あき)七月の吉 定栄堂識(しる)す
【注釋】
○悉:原文にはウ冠あり。あるいは「審」の異体字か。つまびらか。 ○揆度奇恒:『素問』玉版論要篇第十五「黄帝問曰、余聞揆度奇恒、所指不同、用之奈何。岐伯對曰、揆度者、度病之淺深也。奇恒者、言奇病也」。 ○前人以醫比言與良相:宋・呉曾『能改齋漫録』卷十三・文正公願爲良醫:「不爲良相、願爲良醫」。宋代の名儒、范仲淹のことば。「相」は宰相。 ○秌:「秋」の異体字。 ○定栄堂:本書の著者、加藤謙齋の号のひとつ。かれの書物を出版している吉文字屋も定栄堂。その関係は未詳。篠原孝市先生解説「加藤謙齋(一六六七~一七二四)は、名を忠実、字を衛愚、号を謙齋、鳥巣道人と称した。浅見絅齋、稲生若水の門人で、『医療手引草』ほかの多くの著作がある。」
以下、ネットより。
▲方銘 / 定栄堂主人 出版地 煉丹窟蔵版 大坂心斎橋南 ほか 出版者 吉文字屋市右衛門 ほか 亥鼻分館古書コレクション
▲薬方選 定栄堂主人〔加藤謙斎〕 煉丹窟蔵版 吉文字屋市兵衛ら刊 大神文庫目録
▲補方要 野村 謙亨 共同刊行:定栄堂(浪速) 烏巣先生(加藤謙齋)著述書目 定栄堂藏版録 吉文字屋市兵衛ら刊 早稲田大学図書館 画像あり
▲衆方規矩方解上中下付録全2巻、明和8年、浪華定栄堂 渡辺私塾文庫
▲1777 年 加藤忠実(定栄堂主人)『(医通)本草品目』跋刊
▲漢方箋 定栄堂主人 煉丹窟蔵版
▲金匱要畧国字觧. 橋本 正隆 安永7序-9[1778-1780] 浪華書坊定栄堂, 心斉橋通安堂寺町(大阪) 早稲田大学図書館 画像あり
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