2011年1月31日月曜日

24-6 長寿養生灸治論伝記

24-6長寿養生灸治論伝記
     京都大学医学図書館富士川文庫所蔵『長寿養生灸治論伝記』(チ・96)
     オリエント出版社『臨床鍼灸古典全書』24所収

長壽養生灸治論傳記序文 爲人身骵脾胃藏者土也
○夫人者天地之受於気與理生出而保於長壽也以忠
以孝以仁于信心守於忠孝仁也是故備於天地人心物
之五臓也肝心脾肺腎木火土金水也故人之身体于胸
中下心之藏日神仁信火親止賜而祐於壽命夫々之務
於業全於生命継於先祖之後々也樂於子孫長榮者爲
諸皆人間之與常也福與貧者有運與不運又有勤與不
勤業也有壽命者皆是于養生爲人之身躰脾胃之藏者
  一ウラ
與土也天日親火者仁也是故從天日火受之火生土也
生〔シヤウウマルヽハヱルスヽムハヤシセイ/イキルナマシウムスキハヒソタテルヤシナフ〕
           與讀也此故自灸之火受之
人之身体土與脾胃之藏土生々而目出度々行於天理
爲長々於養命全于茲也 〔於赤坂類焼仕故/東都柴口新橋竹川町之横丁〕
 弘化四〔丁/未〕歳梅月〔陰陽師天社神道/活物本心流針灸醫〕栢野大文字貫齊(花押)
御上様 〔御醫師方/御覧之上〕奉進上 点見 淵齊堂展成(花押)
    御執心之方ヱハ進上申候


  【訓み下し】
長壽養生灸治(ぢ)論傳記序文 人の身體脾胃の藏は土と爲(す)るなり。
○夫(そ)れ人は、天地の氣と理とを受けて生まれ出でて長壽を保つなり。忠以(も)ち
孝以(も)ち仁以(も)ち信心に忠孝仁を守るなり。是の故に天地人と心物
の五臓を備えるなり。肝心脾肺腎木、火土金水なり。故に人の身体、胸
中(キョウチュウ/むねのした)下心の藏に、日神仁信火親止(とど)まり賜うて壽命を祐(たす)け、夫(それ)々の
業を務む。生命を全うして先祖の後々(あとあと)を繼ぐなり。子孫長榮を樂しむは、
諸(これ)皆人間の常と爲(す)るなり。福と貧とは、運と不運とに有り。又勤むと
勤業(つとめ)ざるとに有るなり。壽命は、皆是れ養生に有り。人の身體脾胃の藏は
  一ウラ
土(つち)と爲(す)るなり。天日(てんじつ)親火は、仁(めぐ)むなり。是の故に天の日(じつ)火(ひ)從り之を受けて、火(か)、土(つち)を生ずるなり。
生〔しょう、うまるる、はえる、すすむ、はやし、セイ/いきる、なまし、うむ、すぎわい、そだてる、やしなう〕
           と讀むなり。此の故に灸の火(ひ)自り之を受けて
人の身体の土(つち)と脾胃の藏の土(つち)と、生々(いきいき)して目出度(めでたく)々(めでたく)天理を行う。
長々(ちようぢよう)養命を茲(ここ)に全う爲(す)るなり。 〔赤坂に於いて類焼仕(つかまつ)る故/東都柴口新橋竹川町の横丁〕
 弘化四〔丁/未〕歳梅月〔陰陽師天社神道/活物本心流針灸醫〕栢野(かやの)大文字貫齊(花押)
御上様 〔御醫師方/御覧之上〕進上奉(たてまつ)る 点見 淵齊堂展成(花押)
    御執心の方へは進上申し候


  【注釋】
○骵・躰:「體」「体」の異体字。 ○
  一ウラ
○スキハヒ:すぎはひ。生業。「はひ」は接尾語。なりわい。生計を立てていくための職業。 ○東都柴口新橋竹川町:現在、東京都中央区銀座七丁目あたり。 ○弘化四〔丁/未〕歳:一八四七年。 ○梅月:旧暦二月。 ○陰陽師天社神道:現在、福井県大飯郡おおい町に(陰陽道)天社土御門神道の本庁がある。 ○活物本心流:本書末には「活物本心流針灸醫一天無二療治問家」とある。 ○栢野大文字貫齊:「齊」は「齋」の略字であろう。臨床鍼灸古典全書解説は「栢野」を「柏野」に誤る。また「本文十九葉、都合二十葉」とするが、「本文二十葉、都合二十一葉」であろう。 ○淵齊堂展成:


  書末にある跋を句切り、通用のカナにかえる。

  (跋)
愚、針灸にて難治の卒中風、勞症、肝症、肺よふ、風疾、脹滿、累年の持病疼、積、留飲、
疝氣、脚氣、打身、くじき、其外諸病、即坐より二三四五治にて全快
して、其人〃の直筆實印の禮證文を申受有之故ニ、疑人にハ見せ申候、但し頭痛、
霍亂その外、病ニよりて針を以、即坐ニ治す故ニ、治療を受て、其功知り給ふへし、
 活物本心流針灸醫一天無二療治問家    栢野大文字貫齊


  【注釋】
○愚:自己についての謙遜語。 ○肺よふ:肺癰。 

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