2024年4月6日土曜日

鍼灸溯洄集 71 卷下(17)消渴

   卷下・十四ウラ(754頁)

 (17)消渴[ショウカツ]

消渴者口常渴也

  【訓み下し】

消渴は,口(くち)常に渴くなり。

  【注釋】

 ○消渴:病名。泛指具有多飲、多食、多尿症狀的疾病。出『素問』奇病論。亦作痟渴。分上消、中消、下消三種。『證治匯補』消渴章:「上消者心也,多飲少食,大便如常,溺多而頻。中消者脾也,善渴善飢,能食而瘦,溺赤便閉。下消者腎也,精枯髓竭,引水自救,隨即溺下,稠濁如膏」。本證見於糖尿病、尿崩症等。詳上消、中消、下消各條。又指口渴、多飲、多尿而小便甜的病證。

 ◉『指南』病名彙考・消渴:「俗に云かわきの病也。『入門』に,〈消は燒[ヤク]也。物を烹燒[ニルヤク]する理の如し云云〉。上中下の三消有。上消は熱 心肺に在(あり)。煩躁して舌赤く唇紅。食少く飲多く,小便數(しげし)也。中消は熱 脾胃に在(あり)。よく食して反て飲少く小便數(しげく),大便硬し。下消は熱 腎に在(あり)。飲水多く小便濁(にごり),腿(もも)膝細(ほそく),面黑く形瘦枯[ヤセカル]」。

 ◉『病名彙解』・消渴:  https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100232367/332?ln=ja

 ◉『萬病回春』卷5・消渴:「消渴者,口常渴也」。


○小便不利而渴者內有濕也

  【訓み下し】

○小便 利せずして渴する者は,內に濕 有り。

  【注釋】

 ★下文と対になっているとすれば,「內」の上に「知」を残して置いた方がよかったろう。

 ◉『萬病回春』卷5・消渴:「小便不利而渴者,知內有濕也」。


○小便自利而渴者知內有燥也

  【訓み下し】

○小便 利して自(よ)り渴する者は,內に燥有ることを知る。

  【注釋】

 ○小便自利:指小便排出順暢。自利指自然情况下小便排出增多。不斷的小便流失津液。「小便不利」に対して尿量の多すぎることだが,一般に「利してより」とは訓まない。

 ◉『萬病回春』卷5・消渴:「小便自利而渴者,知內有燥也。


○三消者俱属內虗有熱也

  【訓み下し】

○三消は,俱に內虛 熱有るに属す。

  【注釋】

 ○三消:內科消渴病的上消、中消、下消的合稱。病名。亦稱三痟。三種消證總稱。『太平聖惠方』卷五十三謂三消為痟渴、痟中、痟腎,以飲水多而小便少者為痟渴;吃食多而飲水少,小便少而黃赤者為痟中;飲水隨飲便下,小便味甘而白濁,腰腿消瘦者為痟腎。『丹溪心法』分消為上消、中消、下消。『景岳全書』雜證謨謂:「上消者,渴證也,大渴引飲,隨飲隨渴,以上焦之津液枯涸,古云其病在肺,而不知心脾陽明之火皆能熏炙而然,故又謂膈消也。中消者,中焦病也,多食善飢,不為肌肉,而日加削瘦,其病在脾胃、又謂之消中也。下消者,下焦病也,小便黃赤,為淋為濁,如膏如脂,面黑耳焦,日漸消瘦,其病在腎,故又名腎痟也」。

 ◉『萬病回春』卷5・消渴:「大抵三消者,俱屬內虛有熱也」。


○上消者肺火飲水多而食少也

  【訓み下し】

○上消は肺火,飲水 多くして食 少なし。

  【注釋】

 ○多:添え仮名は「ヲホヽシテ」。

 ◉『萬病回春』卷5・消渴:「上消者肺火,飲水多而食少也」。


○中消者胃火消食易飢不生肌肉小水赤黃也

  【訓み下し】

○中消は胃火,食を消し飢え易く,肌肉を生ぜず,小水 赤く黃なり。

  【注釋】

 ◉『萬病回春』卷5・消渴:「中消者胃火,消穀易饑,不生肌肉,小水赤黃是也」。


○下消者腎虗火小便濁內經二陽結則消

  【訓み下し】

○下消は腎虛,火(ひ)にして小便 濁る。『內經(だいきよう)』に,「二陽 結する則(とき)は消(しょう)す」。

  【注釋】

 ◉『萬病回春』卷1・萬金一統述:「三消者,多屬血虛也。上消者,肺也;中消者,胃也;下消者,腎也」。

 ◉『丹溪心法』消渴:「下消者,腎也,小便濁淋如膏之狀,面黑而瘦」。

 ◉『黃帝內經素問』陰陽別論:「二陽結謂之消,三陽結謂之隔,三陰結謂之水,一陰一陽結謂之喉痺」。


○消渴五勞七傷腎俞[十四推下去脊中各二寸]灸

  【訓み下し】

○消渴,五勞七傷は,腎の俞[十四推の下,脊中を去ること各二寸]灸す。

  【注釋】

 ◉『鍼灸聚英』腎俞:「主……消渴,五勞七傷……」


○腎虗消渴腰脊強中膂[二十一推下去脊中各二寸]灸刺

  【訓み下し】

○腎虛消渴,腰脊(せなか)強(こわ)ばり,中膂[二十一推の下,脊中を去ること各二寸]灸刺す。

  【注釋】

 ★「二十一」は「二十」の誤りであろう。

 ◉『鍼灸聚英』中膂內俞:「(一名脊內俞) 二十椎下,兩旁相去脊中各一寸五分,俠脊伸〔胂〕起肉,伏取之。……主腎虛消渴,腰脊強不得俛仰……」。


  卷下・十五オモテ(755頁)

○消渴身熱目黃意舍[十一推下去脊中各三寸半]灸刺

  【訓み下し】

○消渴,身(み)熱し目黃ばみ,意舍[十一推下,脊中を去る(こと)各三寸半]灸刺す。

  【注釋】

 ◉『鍼灸聚英』意舍:「主……消渴,身熱目黃」。


○中消四肢懈憜大谿[足內踝後跟骨上陷]照海[足內踝下]支正[腕後五寸]淺刺

  【訓み下し】

○中消は四肢(てあし)懈憜(がいだ)す。大谿[足の內(うち)踝の後(あと)跟(きびす)骨の上の陷]・照海[足の內踝の下]・支正[腕(わん)後五寸]淺く刺す。

  【注釋】

○憜:実際に書いてあるのは「忄+遀」。

 ◉『醫學入門』治病要穴・太谿:「主消渴」。

 ◉『鍼灸聚英』照海:「主……四肢懈惰……」。

 ◉『鍼灸聚英』支正:「主……四肢虛弱,肘臂攣難屈伸,手不握,十指盡痛……」。


○消渴行間[足大指縫間陷]大冲[足大指本節後二寸]曲池[肘橫紋頭]淺刺

  【訓み下し】

○消渴,行間[足の大指の縫間(ほうかん)の陷]・大冲[足の大指の本節の後(あと)二寸]・曲池[肘(うで)の橫紋の頭(かしら)]淺く刺す。

  【注釋】

 ◉『鍼灸聚英』行間:「主……消渴嗜飲……」。

 ◉『鍼灸聚英』太衝:「主……嗌乾善渴……」。

 ◉『神應經』鼻口部・消渴:「水溝 承漿 金津 玉液 曲池 勞宮 太衝 行間 商丘 然谷 隱白(百日以上者,切不可灸)」。

0 件のコメント:

コメントを投稿