卷下・十七オモテ(759頁)
(21)下血[附溺血]
【訓み下し】
下血(げけつ)[附(つけた)り溺血(できけつ)]
【注釋】
○溺:デキ音で「おぼれる」。ジョウ・ニョウ音で「尿,小便」の意。
卷下・十七ウラ(760頁)
便血者大便出血藏府蘊積濕熱也
【訓み下し】
便血は,大便に血を出だす。藏府に濕熱を蘊積し,
【注釋】
○「蘊積」の添え仮名は「ウンセキレ」に見える。「レ」は「シ」か。和刻本『万病回春』は「ウンセキス」。
◉『萬病回春』卷4・失血:「便血者,大便出血,臟腑蘊積濕熱也」。
○腸風下血者必在糞前名近血
【訓み下し】
○腸風下(げ)血は,必ず糞前に在り,近血と名づく。
【注釋】
○腸風下血:病名。見『太平聖惠方』卷六十。即腸風。腸風:①病名。以便血為主證的疾病。出『素問』風論。⑴指大腸久積風冷所致的便血。『太平聖惠方』卷六十:「大腸中久積風冷,中焦有虛熱,……風冷熱毒,搏於大腸,大腸既虛,時時下血,故名腸風也」。⑵指內痔、外痔、舉痔、脫肛、肛瘺出血。『世醫得效方』:……。⑶指因風邪而便純血鮮紅的病症。『證治匯補』:「或外風從腸胃經絡而入害,或內風因肝木過旺而下乘,故曰腸風」。其證便前出血如注,顏色鮮紅,肛門不腫痛,或見腹痛、腸鳴。⑷指以濕熱為主因的下血。『雜病源流犀燭』諸血源流:「腸風者,腸胃間濕熱鬱積,甚至脹滿而下血也」。
◉岡本一抱『萬病回春指南』腸風藏毒:「先ず鮮[アザヤカ]血を下して後に大便す。即ち是れ腸風。先ず大便して後に濁[ニゴル]血を下す。是を蔵毒と云(詳義,『外科正宗』に見えたり」。
◉『病名彙解』腸風:「下血のことなり。○『本艸綱目』に,〈血清(すむ)ものを腸風とし,虛熱風を生じ,或は濕氣を兼(かぬ)。血濁(にごる)ものを臟毒とす。積熱食毒兼(かぬ)るに濕熱あり〉。臟毒便血と合(あわせ)みるべし。また近血と名づく」。
◉『萬病回春』卷4・失血:「腸風下血者,必在糞前,名近血也」。
○藏毒下血者必在糞後名逺血也
【訓み下し】
○藏毒下血は,必ず糞後に在り,遠血と名づく。
【注釋】
○逺:「遠」の異体字。
○藏毒下血:病證名。因腸胃濕熱所致大便下血,多為污濁色暗之血。見『儒門事親』卷四。又稱臟毒便血。『證治要訣』腸風臟毒:「血清而色鮮者為腸風,濁而暗者為臟毒」。由腸胃濕熱鬱滯引起,主要症狀為大便下血,污濁色暗,胃納不振,身體疲乏,苔黃膩,脈濡數等。
◉『病名彙解』藏毒: https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100232367/275?ln=ja
◉『萬病回春』卷4・失血:「臟毒下血者,必在糞後,名遠血也」。
○溺血者小便出血心移熱於小腸也
【訓み下し】
○溺血(できけつ)は,小便に血を出だす。心 熱を小腸に移す。
【注釋】
◉『萬病回春』卷4・失血:「溺血者,小便出血,心移熱於小腸也」。
○下血熱入血室期門[直乳二肋端]深刺
【訓み下し】
○下血,熱 血室に入るは,期門[直乳二肋の端(はし)]深く刺す。
【注釋】
○血室:解剖結構名。『傷寒論』辨太陽病脈證並治:「婦人中風,七八日續得寒熱,故作有時,經水適斷者,此為熱入血室,其血必結,故使如瘧狀,發作有時,小柴胡湯主之」。『金匱要略』婦人雜病脈證並治:「婦人少腹滿,如敦狀,小便微難而不渴,生後者,此為水與血俱結在血室也,大黃甘遂湯主之」。關於血室有三種解釋:①指衝脈。『婦科經綸』:「王太僕曰:衝為血海,諸經朝會,男子則運而行之,女子則停而止之,謂之血室」。②指子宮。『類經附翼』:「故子宮者,醫家以衝任之脈盛於此,則月經以時下,故名血室」。③指肝。『傷寒來蘇集』陽明脈證:「血室者,肝也。肝為藏血之臟,故稱血室」。
◉『鍼灸聚英』期門:「主……熱入血室……下血譫語者,為熱入血室……」。
◉『鍼灸聚英』治例・蓄血:「陽明病,下血譫語,必熱入血室,頭汗出者,當刺期門」。
○腸風在胃與大腸下血隱白[足大指端內側去爪甲角]三里[膝下三寸]
【訓み下し】
○腸風,胃と大腸とに在り,下血,隱白[足の大指(おゆび)の端(はし)內側,爪甲の角を去る]・三里[膝の下(しも)三寸]。
【注釋】
◉『鍼灸聚英』治例・下血:「腸風多在胃與大腸,鍼隱白,灸三里」。
○下焦陷下血氣海[臍下一寸半]陽關[十六推之節下間]腎俞[十四推下去脊中各二寸]灸刺
【訓み下し】
○下焦 下血に陷り,氣海[臍下一寸半]・陽關[十六の推の節の下(した)間]・腎の俞[十四推の下,脊中を去る各二寸]灸刺す。
【注釋】
★出典未詳。
◉『鍼灸重宝記』針灸諸病の治例・下血 ちをくだす:「腎俞・氣海・陽關・關元・三陰交・絕骨」。
○溺血精出隂莖痛小便熱列缺[去腕側上一寸五分]三隂交[踝上三寸]淺刺
【訓み下し】
○溺血,精出で,隂莖(いんぎょう)痛み,小便熱し,列缺[腕側の上(かみ)を去る一寸五分]・三隂交[踝上三寸]淺く刺す。
【注釋】
◉『鍼灸聚英』列缺:「主……溺血,精出,陰莖痛,小便熱……」。
◉『鍼灸聚英』三陰交:「主……陰莖痛……夢遺失精……」。
○小便清血關元[臍下三寸]太陵[掌後骨下兩筋間陷]深刺
【訓み下し】
○小便清血に,關元[臍下三寸]・太陵[掌後の骨下,兩筋の間の陷]深く刺す。
【注釋】
○清血:圊血,便血。ただし『鍼灸聚英』などによれば,「清」は「如」の誤字か。
◉『鍼灸聚英』大陵:「主……小便如血……」。
◉『鍼灸聚英』關元:「主……小便不通黃赤……」。
◉『神應經』陰疝小便部:「小便赤如血:大陵 關元」。
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