2024年4月18日木曜日

鍼灸溯洄集 81 卷下(28)癭瘤

   卷下・廿一ウラ(768頁)

 (28)癭瘤[附結核瘰癧]

  【訓み下し】

  癭瘤(ようりゅう)[附(つけた)り結核瘰癧]

  【注釋】

 ○癭:和刻本『萬病回春』の添え仮名は「ヱイリウ」。「癭」字には「よう」「えい」両音あり。『說文解字』:「頸癅也」。


癭多於肩項瘤則隨氣凝結此等數年深遠侵大

侵長堅硬不可移癭瘤氣血凝滯也

  【訓み下し】

癭 肩項に多し。瘤は則ち氣に隨って凝結,此れ等は數年 深遠,侵(やや)大に侵(やや)長し,堅硬して移す可からず。癭瘤は,氣血 凝滯なり。

  【注釋】

 ○侵(やや):「やや」という訓は「浸」字と誤読したか,あるいは通ずると考えたか。「侵」は副詞では一般に「ようやく」と訓む。しだいに。だんだんと。

 ○癭(cervical mass):以頸前區喉結兩側腫大或有結塊為主要臨床表現的一類外科常見疾病。俗稱「大脖子」。以西北高原地帶及山區較為多見。相當於西醫的地方性甲狀腺腫、甲狀腺腫瘤。一般起病緩慢、病程纏綿,局部漫腫或有結塊,皮色不變,逐漸增大,不會破潰。古代文獻中將癭分為五種,即氣癭、肉癭、血癭、筋癭和石癭。/癭的病名最早載於『說文解字』,謂癭即頸瘤。隋代『諸病源候論』提出癭的病因是憂恚氣結等情志因素,以及經常飲用山水、黑土中的泉流。

 ○瘤:身體組織或器官因細胞增生所長的贅生物。如:「肉瘤」、「腫瘤」。

 ○癭瘤:病名。即癭與瘤的合稱。或單指癭。出『中藏經』卷上。

 ◉岡本一抱『指南』癭瘤:「『正宗』に云,〈癭は色紅にして高突し,蒂(ほぞ?)[ネモト]小にして下垂(さがりたる)。瘤は色白くして漫腫し,痒痛[カユクイタム]を覺ざるなり云云〉。按に癭瘤は俗間に云コブの類(たぐい)なり」。

 ◉『病名彙解』癭瘤:「古より和訓コブと讀り。然ども諸方書に癭も瘤も共に潰(ついへ)て癰のごとくになると云り。世俗にコブと稱するものは,一生潰へず。按るに,五癭の內,石癭と云もの,俗にコブなるべし。石癭,一に骨癭と云り……」。

  https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100232367/346?ln=ja

 ◉『萬病回春』卷5・癭瘤:「癭多著於肩項,瘤則隨氣凝結。此等年數深遠,侵大侵長,堅硬不可移者,名曰石癭。……癭瘤,氣血凝滯也」。


  卷下・廿二オモテ(769頁)

               ○結核或

在項側在頸在臂在身如腫痛者在皮裏膜外火

氣熱甚則欝結堅硬如果中核也多風痰欝結也

  【訓み下し】

○結核,或いは項側に在り,頸(くび)に在り,臂(ひじ)に在り,身に在り,腫痛の如きは,皮裏 膜外(ばくがい)に在り。火氣 熱甚だしき則(とき)は,欝結 堅硬して,果中の核(さね)の如し。多くは風痰 欝結なり。

  【注釋】

 ◉岡本一抱『指南』結核:「皮膚の下に,肉のかたまりを生じて,菓中の核(さね)の如きを云。いくつも連(つらなり)て生ずるを瘰癧と云。ただひとつ生ずるを結核と云。『準繩』に云〈結核は獨[ヒトリ]形にして小核なる者を結核とす云云〉」。

 ◉『病名彙解』結核:「瘰癧の類なり。形小にして連らずして一つ生ずるなり。○河間の云……」。

  https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100232367/220?ln=ja

 ◉『萬病回春』卷5・結核:「結核,或在項側,在頸、在臂、在身,如腫痛者,多在皮裏膜外,多是痰注不散。問其平日好食何物,吐下後用藥散核。又云結核,火氣熱甚則欝結,堅硬如果中核也。不須潰發,但熱氣散則自消矣。/結核者,風痰欝結也。又云火因痰注而不散也」。


○結核連續者爲瘰癧也

  【訓み下し】

○結核連續する者は,瘰癧と爲す。

  【注釋】

 ◉岡本一抱『指南』瘰癧:「疒(やまいだれ)を除(のぞき)て見るべし。皮下に結核を生じ,いくつも累々と連(つらなり)て經歷[ヘメグル]するを云……」。

  https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100314627/79?ln=ja

 ◉『病名彙解』瘰癧:「『要訣』に云,〈瘰癧の病,皆血氣壅[フサガリ]結して根(ね)臟腑にあり,多く項[ウナジ]頸[クビスヂ]の間に結して累々として大小定りなし。寒熱を發し,膿血潰亂[ツイヘタダル]す。或は此(ここ)没しては彼(かしこ)に起る。……〉。

  https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100232367/114?ln=ja

 ◉『萬病回春』卷8・瘰癧:「結核連續者,爲瘰癧也」。


○結核瘰癧肩井[肩上陷中]曲池[肘橫文頭]大迎[曲頷前一寸三分骨陷中]淺刺

  【訓み下し】

○結核・瘰癧,肩井[肩(けん)上陷中]・曲池[肘(うで)の橫文(おうもん)の頭(かしら)]・大迎[曲頷の前(まえ)一寸三分の骨の陷中]淺く刺す。

  【注釋】

 ◉『鍼灸聚英』治例・雜病・諸瘡:「瘰癧瘡:灸肩井、曲池、大迎」。


○瘰癧少海[肘內大骨外去肘端五分陷中]天池[腋下三寸乳後一寸]章門[大橫外直季脇肋端]臨泣[足小指次指本節後間陷]淺刺

  【訓み下し】

○瘰癧,少海[肘(うで)の內の大骨の外,肘端を去る五分の陷中]・天池[腋(えき)下三寸,乳(ちち)の後(あと)一寸]・章門[大橫の外(ほか),直季脇肋の端(はし)]・臨泣[足の小指の次指の本節の後の間の陷]淺く刺す。

  【注釋】

 ◉『神應經』瘡毒部:「瘰癧:少海(先推針皮上三十六息,推針入內,追核大小,勿出核,三十三下乃出針)天池 章門 臨泣 支溝 陽輔(百壯) 手三里 肩井(隨年壯)」。

 ◉『鍼灸聚英』少海:「主……瘰癧……」。


○瘰癧人迎[頸大脉結喉旁一寸五分]缺盆[肩下橫骨陷中]淺刺

  【訓み下し】

○瘰癧,人迎[頸(くび)の大脈,結喉の旁ら一寸五分]・缺盆[肩下の橫骨の陷中]淺く刺す。

  【注釋】

 ◉『鍼灸聚英』人迎:「主……咽喉癰腫,瘰癧」。

 ◉『鍼灸聚英』缺盆:「主……瘰癧喉痹……」。


○癭頸瘰癧天容[耳後曲頰後陷]翳風[耳後尖角陷中按之引耳中痛]間使[掌後三寸兩筋間陷]淺刺

  【訓み下し】

○癭頸瘰癧,天容[耳後(にご)曲頰の後の陷]・翳風[耳後の尖角の陷中,之を按(お)せば耳中(にちゅう)に引いて痛む]・間使[掌後三寸,兩筋の間の陷]淺く刺す。

  【注釋】

 ◉『鍼灸聚英』天容:「主癭頸項癰,不可回顧,不能言……」。

 ◉『醫學入門』治病要穴:「翳風 主耳聾及瘰癧」。「間使 主脾寒之證,及九種心痛,脾疼,瘧疾,口渴。如瘰癧久不愈,患左灸右,患右灸左,效」。

0 件のコメント:

コメントを投稿