卷下・廿一オモテ(767頁)
(27)汗[カン]
盗汗者属陰虗睡中而出醒則止也
【訓み下し】
盜汗は,陰虛に屬す。睡中にして出づ,醒(さ)むる則(とき)は止(や)む。
【注釋】
○盗:「盜」の異体字。
◉『病名彙解』盜汗:「俗に云ネアセなり。盜(ぬすびと)の人の睡(ねぶり)に乘じて出(いづ)。盜(ぬすびと)の如なることありと云り。又寢汗とも云り」。
◉『萬病回春』卷4・汗證:「盜汗者,屬陰虛,睡中而出,醒則止也」。
○自汗者属陽虗時時常而出也
【訓み下し】
○自汗は,陽虛に屬す。時時(ときどき)常に出づ。
【注釋】
○時時常:『萬病回春』作「時常」。時常:常常;經常。常に。しょっちゅう。
◉『病名彙解』自汗:「皮膚虛して常に汗をかくことなり。身を動搖勞役して汗をかくは自汗にあらず。安居して汗の出ることなり」。
◉『萬病回春』卷4・汗證:「自汗者,屬陽虛,時常而出也」。
卷下・廿一ウラ(768頁)
○心汗者心孔有汗別處無也因七情之欝結而成也
【訓み下し】
○心汗は,心孔に汗有って,別處に無し。七情の欝結に因って成る。
【注釋】
○心汗:證名。指心窩部多汗的症候。出『丹溪心法』盜汗。『醫林繩墨』汗:「又有心汗者,當心膻中,聚而有汗」。因憂思驚恐,傷及心脾所致。
◉『病名彙解』心汗:「別處に汗なく,只(ただ)むねにのみ汗するを心汗と云り」。
◉『萬病回春』卷4・汗證:「心汗者,心孔有汗,別處無也(名曰心汗。因憂思悲恐驚、勞傷、欝結而成)」。
○頭汗者邪搏諸陽首其症飲多小便不利此濕熱也
【訓み下し】
○頭汗(ずかん)は,邪 諸陽の首(はじめ)に搏(はく)して,其の症,飲多うして小便 利せず,此れ濕熱なり。
【注釋】
○諸陽之首:頭の代名詞。『慎齋遺書』頭暈:「頭為諸陽之首,病人頭暈,清陽不升也,頭重不能抬起,陽虛不能撐持也」。『醫宗金鑑』金匱要略註・痙濕暍病脈證并治第二:魏荔彤:「頭中為諸陽之首,非寒濕能犯之地」(『金匱要略方論本義』)。
◉『萬病回春』卷4・汗證:「頭汗者,邪搏諸陽之首也。其症渴飲漿水、小便不利,此濕熱也」。
○河間曰心熱則汗出亦有火氣上蒸胃中濕亦作汗
【訓み下し】
○河間の曰わく,心熱する則(とき)は,汗出で,亦た火氣有って,胃中の濕を上蒸して,亦た汗を作(な)す。
【注釋】
○河間:劉完素(12世紀約1100年—1180年),字守真,自號通元處士,河間(今河北河間市)人士,世稱劉河間。金元四大醫學家之一,研究五運六氣,為「寒涼派」的創始人。劉完素的著作有:『黃帝素問宣明論方』、『素問玄機原病式』、『宣明內方』、『內經運氣要旨論』、『傷寒直格』、『傷寒標本心法類萃』、『三消論』、『素問藥注』、『醫方精要』。
◉『萬病回春』卷4・汗證:「『原病式』曰:心熱則汗出,亦有火氣上蒸胃中之濕,亦作汗」。
○多汗者補合谷[手大指次指歧骨間]瀉復溜[足內踝上二寸之筋骨陷中]淺刺
【訓み下し】
○多汗は,合谷[手の大指の次指の歧(ちまた)骨の間]を補う,復溜(ふくる)[足の內踝の上二寸の筋骨の陷中]を瀉す,淺く刺す。
【注釋】
◉『鍼灸聚英』雜病歌・汗:「多汗合谷補之先,次瀉復溜汗即乾」。
○自汗曲池[肘橫文頭]冲陽[足跗上五寸]湧泉[足心中]然谷[足內踝前起大骨下]淺刺
【訓み下し】
○自汗,曲池[肘(うで)の橫文(おうもん)の頭(かしら)]・冲陽[足の跗上五寸]・湧泉[足心の中]・然谷[足の內踝の前,起こる大骨の下]淺く刺す。
【注釋】
○冲陽:衝陽。
◉『鍼灸聚英』然谷:「主……自汗盜汗出……」。
◉『神應經』汗部:「自汗:曲池 列缺 少商 崑崙 衝陽 然谷 大敦 湧泉」。
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