卷中・十一オモテ(697頁)
(8)瘧
瘧者因外感風寒暑濕內傷飲食勞倦或飢飽色
欲過度以致脾胃不和痰留中脘來時呵欠怕寒
手足冷發寒戰大熱口渇頭痛腰胯骨節酸疼或
卷中・十一ウラ(698頁)
寒後熱或熱後寒或單熱單寒或寒多或熱多待
熱退身凉方可飲食切不可帶熱飲食恐不消成
痞名瘧母痞散或皷者間有之
【訓み下し】
瘧(ぎゃく)
瘧(おこり)は,外(ほか) 風寒暑濕に感じ,內(うち) 飲食(いんしい)勞倦に傷(やぶ)り,或いは飢飽・色欲 過度に因り,以て脾胃の不和(ふか)を致し,痰 中脘に留(とど)まり,來たる時は,呵欠(あくび)し寒を怕(おそ)れ,手足 冷え,寒戰を發し,大熱,口渇き,頭痛,腰胯(もも)骨節(ほねふし) 酸(しび)れ疼み,或いは
卷中・十一ウラ(698頁)
寒して後(のち)に熱して,或いは熱して後に寒し,或いは單(ひとえ)に熱し,單に寒し,或いは寒多く,或いは熱多し。熱退き身凉(ひ)ゆるを待って,方(まさ)に飲食(いんしい)す可し。切に熱を帶ぶ可からず。飲食 恐らくは消(こな)れずして痞(つかえ)と成り,瘧母(ぎゃくも)と名づけて,痞散じて,或いは皷となる者間(まま)之れ有り。
【注釋】
★不消:原文に返り点なし。添え仮名「不消(コナレシテ)」。
★『萬病回春』卷3・瘧疾の原文によれば,「須待熱退身涼,方可飲食也(熱が退いて身体が涼しくなるのを待って,それから飲食すべきである)」と「切不可帶熱飲食(熱を帯びているときには必ず飲食すべきではない)」は対になっていると思われるので,句読が誤っていると思われる。
◉『萬病回春』卷3・瘧疾:「夫瘧者,因外感風寒暑濕,內傷飲食勞倦,或飢飽色欲過度,以致脾胃不和,痰留中脘。然無痰不成瘧。脾胃屬土,有信來去,不失其時。若移時,或早或晚者,是邪無容地,瘧將好也。瘧疾來時,呵欠怕寒、手足冷、發寒戰、大熱口渴、頭痛、腰胯骨節酸疼,或先寒後熱,或先熱後寒,或單寒單熱,或寒多熱少,或熱多寒少,一日一發,受病淺也,容易治。間日發者,或二日連發,住一日者,皆難痊。治宜在表無汗者,散邪湯為主;有汗者,正氣湯為主;在半表半里者,柴苓湯為主;分利陰陽而未已者,人參養胃湯加減,後方可截之;若用截藥吐出黃膠水者,瘧自愈也。不可一二日早截,早則邪氣閉塞而成壞症;又不可遲截,遲則元氣衰憊而成虛怯;當在三四日就截為好。須待熱退身涼,方可飲食也。切不可帶熱飲食,恐不消而成痞,一名瘧母,痞散成鼓者有之矣。
○寒戰:證名。見『素問玄機原病式』六氣為病,形寒作顫抖狀。體內寒盛多見此證,亦可由熱鬱所致。在諸熱病中,瘧疾「先寒後熱」之寒,多表現為寒戰。參見寒慄,戰慄。
○凉:「涼」の異体字。 ○瘧母:病證名。瘧疾日久不愈,頑痰挾瘀結於脇下所形成的痞塊。又稱瘧積、母瘧、勞瘧。『金匱要略』瘧病脈證幷治:「病瘧以月一日發,當以十五日愈,設不差,當月盡解。如其不差,當云何?師曰:此結為症瘕,名曰瘧母。急治之,宜鱉甲煎丸」。『張氏醫通』卷三:「瘧母者,頑痰挾血食而結為症瘕」。『醫學入門』暑類・瘧:「陽為腑,邪淺,與榮衛並行,一日一發;陰為臟,邪深,橫連募原,不能與正氣並行,故間日蓄積乃發,或三四日一發,久則必有瘧母。……凡瘧經年不瘥,謂之老瘧,必有痰水瘀血,結成痞塊,藏於腹脇,作脹且痛,乃瘧母也」。 ○皷:「鼓」の異体字。鼓脹?
Patients should not start to eat and drink normally until there is no fever. If not, there is the possibility that the disease will not recede and cause flatulence, which is also called the product of malaria. In some cases this leads to abdominal distension.
https://www.corpus.cam.ac.uk/articles/curing-thousands-diseases
○痎瘧寒熱經渠[寸口陷中]前谷[手小指外側本節前陷中]百會[頂中央旋毛中有容豆]淺刺
【訓み下し】
○痎瘧寒熱に,經渠[寸口の陷中]・前谷[手の小指の外の側(かたわら),本節(もとふし)の前の陷中]・百會[頂(いただき)の中央(まんなか)旋毛(つじげ)の中(うち),豆を容(い)るるほど有り]淺く刺す。
【注釋】
○痎瘧:瘧疾的通稱。馬蒔『黃帝內經素問註證發微』欬論(38)注:「痎瘧者,瘧之總稱也」。
https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100314627/82?ln=ja
◉岡本一抱『指南』:「㾬瘧:痎瘧とも云。『內經』瘧論の王氷註に曰:〈痎猶老也,亦瘦也〉。楊上善曰:〈二日一發名㾬瘧〉(丹溪も此に從也)。『類經』・馬玄臺は,痎の音は皆。瘧の總名とす(この說是也)。按に龔氏は丹溪・王氷に從へる也」。
◉蘆川桂洲『病名彙解』痎瘧
https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100232367/128?ln=ja
◉『神應經』瘧疾部:「瘧疾:百會 經渠 前谷」。
◉『鍼灸聚英』瘧疾:「瘧疾百會與經渠,前谷三穴實相宜」。
○温瘧中脘[臍上四寸]大推[一推上陷者中]深刺
【訓み下し】
○温(うん)瘧は,中脘[臍の上(かみ)四寸]・大推(ずい)[一の推(ほね)の上(かみ)の陷者(くぼみ)の中(なか)]深く刺す。
【注釋】
○溫瘧:中醫指先發燒後發冷的瘧疾。『素問』瘧論:「陽盛則熱矣,衰則氣復反入,入則陽虛,陽虛則寒矣,故先熱而後寒,名曰溫瘧」。
◉『病名彙解』温瘧
https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100232367/186?ln=ja
◉『鍼灸聚英』雜病歌・瘧疾:「溫瘧中脘大椎穴」。
◉『神應經』瘧疾部:「溫瘧:中脘 大椎」。
○痰瘧寒熱合谷[手大指次指歧骨間陷中]後谿[手少指外側本節後陷中握拳取之]淺刺
【訓み下し】
○痰瘧寒熱に,合谷[手の大指の次の指の歧骨(ちまたほね)の間の陷中]・後谿(こうけい)[手の少(こ)指の外の側(かたわら),本節(もとふし)の後(あと)の陷中,拳を握り之を取る]淺く刺す。
【注釋】
○痰瘧:病名。瘧疾之一。見『醫學入門』卷五。『證治匯補』瘧疾:「痰瘧,因夏月多食瓜果油麵,鬱結成痰,熱多寒少,頭疼心跳,吐食嘔沫,甚則昏迷卒倒。寸口脈浮大者,吐之;關脈弦滑者,化之;若胸滿熱多,大便燥實,大柴胡湯下之」。『雜病源流犀燭』瘧疾源流:「痰瘧者,痰結胸中,與凡瘧所挾之痰更甚,故寒熱乍已,胸中滿悶不退,或頭疼肉跳,吐食嘔沫,甚則昏迷卒倒,皆是痰涎結聚之故,宜二陳湯、導痰湯」。
◉『鍼灸聚英』瘧疾:「痰瘧寒熱後谿穴,兼治合谷隨即歇」。
◉『神應經』瘧疾部:「痰瘧寒熱:後谿 合谷」。
◉『鍼灸聚英』後谿:「手少〔明刊本も同じ〕指外側本節後陷中,捏拳取之」。
◉『醫學入門』後谿:「小指外側本節橫紋尖盡處,握掌取之」。
◉『神應經』後谿:「在手小指外側本節後陷中」。
○寒瘧不食內庭[足大指次指外間陷中]厲兌[足大指次指之端有去爪甲之角]公孫[足大指本節後一寸內踝前]
【訓み下し】
○寒瘧 食せず,內庭[足の大指の次指の外の間(あいだ)陷中]・厲兌[足の大指の次の指の端(はし),爪の甲の角を去るに有り]・公孫[足の大指の本節(もとふし)の後(あと)一寸,內踝(うちくるぶし)の前]。
【注釋】
○寒瘧:病名。瘧疾之一。『素問』瘧論:「夫寒者,陰氣也;風者,陽氣也。先傷於寒,而後傷於風,故先寒而後熱也。病以時作,名曰寒瘧」。與風瘧在症候的區別是:「風瘧,瘧發則汗出惡風,……」(『素問』刺瘧)。
◉『病名彙解』寒瘧
https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100232367/128?ln=ja
◉『鍼灸聚英』瘧疾:「寒瘧不食治公孫,內庭厲兌共三穴」。
◉『神應經』瘧疾部:「寒瘧不食:公孫 內庭 厲兌」。
○熱多寒少間使[掌後三寸兩筋之間陷中]商陽[手大指次指內側有去爪甲角]淺刺
【訓み下し】
○熱多く寒少なきに,間使[掌(たなごころ)の後(あと)三寸,兩筋の間の陷中]・商陽[手の大指次指の內(うち)の側(かたわら),爪の甲を去る角に有り]淺く刺す。
【注釋】
◉『鍼灸聚英』瘧疾:「熱多寒少間使中,再兼三里有神功」。
◉『神應經』瘧疾部:「熱多寒少:間使 三里」。
○五藏五府瘧合谷公孫[穴處出前]曲池[肘外輔屈肘兩骨中紋頭盡處以手拱胸取之]淺刺
【訓み下し】
○五藏五府の瘧(おこり)に,合谷・公孫[穴處 前に出づ]・曲池[肘(うで)外(ほか)の輔(ほね),肘を屈(かが)めて兩骨の中(なか),紋頭盡處,手を以て胸を拱(こま)ぬき之を取る]淺く刺す。
【注釋】
○五藏瘧:五臟瘧是一種病證名。因瘧邪深伏所致肺心肝脾腎五臟瘧疾。見『雜病源流犀燭』瘧疾源流。詳見各條。/五蔵の瘧については,『素問』刺瘧篇(36)を参照。
○五府瘧:『素問』刺瘧篇には,胃瘧のみ言及がある。他の腑については,「足太陽之瘧」「足少陽之瘧」「足陽明之瘧」などがそれにあたるか(刺瘧篇に手経の瘧についての言及なし)。
◉『醫學入門』曲池:「肘外輔、屈肘兩骨中紋頭盡處,以手拱胸取之」。
◉『鍼灸聚英』曲池:「肘外輔骨,屈肘兩骨之中,以手拱胸取之」。
◉『神應經』曲池:「在肘外輔骨,屈肘橫紋頭陷中,拱胸取之」。
◉『鍼灸聚英』治例・雜病・瘧:「有風暑、山嵐瘴氣、食老瘧、瘧母、寒濕痹、五藏瘧、五府瘧。鍼合谷、曲池、公孫。灸不拘男女,於大椎中第一節處。先鍼後灸三七壯,立效。或灸第三節亦可」。
卷中・十二オモテ(699頁)
○痰瘧振寒瘧母承滿[不容下一寸去中各三寸]梁門[承滿下一寸去中行各三寸]淺刺
【訓み下し】
○痰瘧,振寒,瘧母には,承滿[不容の下(しも)一寸,中(なか)を去る各三寸]・梁門[承滿の下(しも)一寸,中行を去ること各三寸]淺く刺す。
【注釋】
○瘧母:病證名。瘧疾日久不愈,頑痰挾瘀結於脇下所形成的痞塊。又稱瘧積、母瘧、勞瘧。『金匱要略』瘧病脈證幷治:「病瘧以月一日發,當以十五日愈,設不差,當月盡解。如其不差,當云何?師曰:此結為症瘕,名曰瘧母。急治之,宜鱉甲煎丸」。『張氏醫通』卷三:「瘧母者,頑痰挾血食而結為症瘕」。
◉『病名彙解』瘧母
https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100232367/290?ln=ja
★出典未詳。
◉『鍼灸重宝記』針灸諸病の治例・痎瘧 おこり:「久しき瘧(おこり)には,承滿・梁門のあたりに瘧母と云(いふ)て,塊りあるぞ,是(これ)を針にて刺(さし)くだきて効(しるし)あり」。
○瘧寒熱天府[腋下三寸臂臑內廉動脉陷中以鼻取之]
【訓み下し】
○瘧(おこり)寒熱には,天府[腋の下(した)三寸,臂臑(ちからこぶ)の內廉(うちかど),動脈の陷中,鼻を以て之を取る]。
【注釋】
◉『鍼灸聚英』天府:「腋下三寸,臂臑內廉動脈陷中,以鼻取之。……瘧寒熱……」。
○截瘧妙手者鳩尾[蔽骨之端在臆前蔽骨下五分]淺刺神効然禁針之穴下手者可有心得口傳
【訓み下し】
○瘧を截(き)るに,妙手(じょうず)は鳩尾[蔽骨の端(はし),臆前に在り,蔽骨の下(した)五分]淺く刺す。神効ある,然れども禁針の穴,下手(へた)は心得(こころえ)有る可し。口傳。
【注釋】
★「鳩尾が瘧を主治する」とする医書,未詳。口伝たる所以か。あるいは,『鍼道秘訣集』卅二・瘧母(かたかい)之針などと関連するか。
https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100252701/49?ln=ja
◉『鍼灸聚英』鳩尾:「蔽骨之端,在臆前蔽骨下五分。人無蔽骨者,從岐骨際下行一寸。……大妙手方可鍼。不然,鍼取氣多,令人夭」。
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