卷中・二十二ウラ(718頁)
(19)脇痛
左脇痛者肝經受邪也
【訓み下し】
左の脇(わき)痛む者は,肝經 邪を受(う)〔く〕るなり。
【注釋】
◉『萬病回春』卷5・脇痛:「左脇痛者,肝經受邪也」。
○右脇痛者肝邪入肺也
【訓み下し】
○右の脇痛む者は,肝邪 肺に入(い)るなり。
【注釋】
◉『萬病回春』卷5・脇痛:「右脇痛者,肝邪入肺也」。
○左右脇俱痛者肝火盛而木氣實
【訓み下し】
○左右の脇 俱に痛む者は,肝火 盛んにして木氣 實す。
【注釋】
◉『萬病回春』卷5・脇痛:「左右脇俱痛者,肝火盛而木氣實也」。
○兩脇走注痛而有聲者痰飲也
【訓み下し】
○兩脇(わき)走注 痛んで聲(こえ)有る者は,痰飲なり。
【注釋】
◉『萬病回春』卷5・脇痛:「兩脇走注痛而有聲者,是痰飲也」。
○走注:病名。風邪游於皮膚骨髓,往來疼痛無定處之證。行痹的別稱,俗稱鬼箭風。『太平聖惠方』卷二十一:「夫風走注者,是風毒之氣,游於皮膚骨髓,往來疼痛無常處是也。此由體虛,受風邪之氣,風邪乘虛所致,故無定處,是謂走注也」。
◉『病名彙解指南』走注:「注病の一種なり。邪氣 血に隨て行き,或は皮膚に淫奕して,去來擊痛し,遊走して常に處にあることなし。故に名づく」。〔淫奕:行進貌。〕
○左脇下有塊作痛不移者死血也
【訓み下し】
○左の脇の下(した) 塊(かい)有り,痛みを作(な)し移らず〔ざる〕者は,死血なり。
【注釋】
◉『萬病回春』卷5・脇痛:「左脇下有塊,作痛不移者,是死血也」。
○右脇下有塊作痛飽悶食積也
【訓み下し】
○右の脇の下(した) 塊(かい)有り,痛みを作(な)し飽悶するものは,食積なり。
【注釋】
★ものは:原文の添え仮名は「ヒノハ」。『萬病回春』原文に「者」とあることから,「モノハ」と解した。
◉『萬病回春』卷5・脇痛:「右脇下有塊,作痛飽悶者,是食積也」。
○肝火盛實有死血肝急丘墟[足外踝下如前陷中]中都[內踝上七寸䯒骨中]深刺
【訓み下し】
○肝火盛んに實し,死血 有って,肝急,丘墟[足の外踝(とくるぶし)の下(した),前に如(ゆ)く陷中]・中都[內踝(うちくるぶし)の上(かみ)七寸,䯒骨(はぎほね)の中(うち)]深く刺す。
【注釋】
★中都:『鍼灸聚英』治例・雜病・脇痛によれば,「中瀆」の誤り。
◉『鍼灸聚英』治例・雜病・脇痛:「肝火盛、木氣實、有死血、痰注、肝急。鍼丘墟、中瀆」。
◉『鍼灸聚英』足厥陰肝經・中都:「(一名中郄) 內踝上七寸䯒骨中,與少陰相直。……主腸澼,㿉疝,小腹痛,不能行立,脛寒,婦人崩中,產後惡露不絕」。
◉『鍼灸聚英』足少陽膽經・中瀆:「髀外膝上五寸,分肉間陷中。……主寒氣客於分肉間,攻痛上下,筋痹不仁」。
○脇下痛不得息腕骨[手外側腕前起骨下陷者中]陽谷[手外側腕中銳骨下陷中]淺刺
【訓み下し】
○脇の下痛み,息すること〔を〕得ず,腕骨[手の外の側(かたわら),腕前に起こる骨の下(した),陷者中]・陽谷[手の外の側(かたわら),腕中,銳(とがり)骨下の陷中]淺く刺す。
【注釋】
◉『鍼灸聚英』腕骨:「主熱病汗不出,脇下痛,不得息……」。
◉『鍼灸聚英』陽谷:「主癲疾狂走,熱病汗不出,脇痛……臂外側痛不舉……」。
◉『鍼灸聚英』雜病歌・胸背脇:「脇痛陽谷腕骨宜」。
○胸脇痛支滿章門[季脇肋端]深支溝[出前]淺刺
【訓み下し】
○胸脇(きょうきょう)痛み支滿,章門[季脇肋端(はし)]深く,支溝[前に出づ]淺く刺す。
【注釋】
◉『鍼灸聚英』雜病歌・胸背脇:「假如脇滿章門奇,脇痛陽谷腕骨宜。支溝膈俞及申脈」。
◉『鍼灸聚英』章門:「主腸鳴盈盈然,食不化,脇痛,不得臥,煩熱口乾,不嗜食,胸脇痛支滿,喘息,心痛而嘔……」。
◉『鍼灸聚英』支溝:「主熱病汗不出,肩臂酸重,脇腋痛,四肢不舉……」。
○脇下痛不得息申脉[外踝下五分之陷中白肉之間]腕骨[手外側腕前起骨下陷中]陽谷[手外側腕中鋭骨下陷中]淺刺
【訓み下し】
○脇の下痛んで息すること〔を〕得ず,申脈[外踝(とくるぶし)の下(した)五分の陷中,白肉の間]・腕骨[手の外の側(かたわら),腕(わん)の前起こる骨の下(した)陷中]・陽谷[手の外の側(かたわら),腕の中(うち),鋭(とが)り骨の下(した)陷中]淺く刺す。
◉『鍼灸聚英』雜病歌・胸背脇:「脇痛陽谷腕骨宜。支溝膈俞及申脈」。
◉『鍼灸聚英』腕骨:「主熱病汗不出,脇下痛,不得息……」。
◉『鍼灸聚英』申脈:「外踝下五分陷中,容爪甲白肉際。……主風眩,腰腳痛,䯒酸不能久立,如在舟中,勞極,冷氣逆氣,腰髖冷痹,腳膝屈伸難,婦人血氣痛,潔古曰:癇病晝發,灸陽蹺」。
◉『鍼灸聚英』陽谷:「主癲疾狂走,熱病汗不出,脇痛……」。
○脇痛結胸風市[膝上外廉兩筋之中]期門[直乳二肋之端]深刺
【訓み下し】
○脇(きよう)痛結胸,風市[膝の上(かみ)外廉(そとかど),兩筋の中]・期門[直(じき)乳二肋の端(はし)]深く刺す。
【注釋】
◉『鍼灸聚英』期門:「主胸中煩熱……胸脇痛支滿,男子婦人血結胸滿,……仲景曰:……又曰:太陽與少陽並病,頭項強痛,或眩冒,時如結胸……又曰:……胸脇下滿,如結胸狀,譫語者,此為熱入血室,當刺期門……」。
◉『鍼灸聚英』治例・傷寒・結胸:「刺期門。刺肺俞(嚴仁菴)。婦人因血結胸,熱入血室,刺期門……」。
◉『鍼灸聚英』治例・傷寒・熱入血室:「七八日熱除而脈遲,胸脇滿,如結胸狀,譫語。此熱入血室,刺期門」。
◉『鍼灸聚英』古人有不行鍼知鍼理:「一婦人患熱入血室。醫者不識,用補血藥,數日成結胸證。許學士曰:〈小柴胡湯已遲,不可行也,可刺期門。予不能針,請善針者針之〉。如言而愈」。
★風市の関連主治,未詳。
卷中・二十二オモテ(719頁)
○胸腹小腸痛京門[監骨下腰中季脇本夾脊]懸鐘[足外踝上三寸動脉之中]深刺
【訓み下し】
○胸腹(むねはら)小腸痛み,京門[監骨の下腰の中(うち),季脇の本(もと),脊(せ)を夾(さしはさ)む]・懸鐘[足の外踝(とくるぶし)の上(かみ)三寸,動脈の中(うち)]深く刺す。
【注釋】
◉『鍼灸聚英』京門:「監骨下,腰中季脇本俠脊。……主腸鳴,小腸痛,肩背寒,痓(痙),肩胛內廉痛,腰痛不得俛仰久立」。
◉『鍼灸聚英』懸鐘:「主心腹脹滿。胃中熱。不嗜食。腳氣。膝䯒痛。筋骨攣痛。足不收。逆氣。虛勞寒損。憂恚。心中咳逆。泄注。喉痹。頸項強。腸痔瘀血。陰急。鼻衄。腦疽。大小便澀。鼻中干。煩滿狂易。中風手足不遂」。
◉『醫學入門』懸鐘:「主心腹脹滿,胃熱不食,膝脛痛,筋攣足不收,五淋,濕痹流腫,筋急瘛瘲,小兒腹滿不食,四肢不舉,風勞身重」。
◉『醫學入門』治病要穴:懸鐘:「主胃熱,腹脹,脇痛,腳氣,腳脛濕痹,渾身瘙癢,五足指疼」。
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