卷下・五ウラ(736頁)
(6)眼目[ガンモク]
目之失明者四氣七情之所害也眼目爲五藏之
精華一身之至要肝爲烏睛心爲二眥脾爲上下
胞肺爲白睛腎爲眸子其症七十有二治之須䆒
其所因大眥赤紅肉起者心經實熱也小眥赤紅
絲血脹者心經虗熱也烏眼紅白翳障者肝病也
白珠紅筋翳膜者肺病也上下眼胞如桃者脾病
卷下・オモテ(737頁)
也迎風出淚坐起生花者腎病也
【訓み下し】
目(め)の明を失うは,四氣(しき)七情(しちじよう)の害する所なり。眼目 五藏の精華,一身の至要と爲す。肝は烏睛と爲る。心は二眥と爲る。脾は上下の胞(まぶた)と爲る。肺は白睛と爲る。腎は眸子(ひとみ)と爲る。其の症 七十有(ゆう)二。之を治(ぢ)するに其の所因を究む須(べ)し。大眥赤紅(しゃくこう),肉起こるは,心經の實熱なり。小眥の赤紅,絲血の脹(ふく)れるは,心經 虛熱なり。烏眼(くろまなこ) 紅白翳障は,肝の病なり。白珠 紅筋(あかすじ)翳膜は,肺の病なり。上下の眼(ま)胞(ぶた) 桃の如きは,脾の病なり。風に迎(む)かって淚(なんだ)出で,坐起 花を生じば,腎の病なり。
【注釋】
○失明:眼睛喪失了視力。 ○四氣:春、夏、秋、冬四時的氣候。指春、夏、秋、冬四時的溫、熱、冷、寒之氣。漢儒附會天人相應之說,以喜怒樂哀應四時為四氣。 ○七情:指喜、怒、憂、思、悲、恐、驚等七種情志活動。為人的精神意識對外界事物的反應。作為病因是指這些活動過於強烈、持久或失調,引起臟腑氣血功能失調而致病。『素問』舉痛論:「怒則氣上,喜則氣緩,悲則氣消,恐則氣下,……驚則氣亂,……思則氣結」。又包括某些內臟病變而繼發的病態情志活動。『靈樞』本神:「肝氣虛則恐,實則怒」。 ○精華:精華,指五臟之氣中最精粹部分。『素問』疏五過論:「愚醫治之,不知補瀉,不知病情,精華日脫,邪氣乃並〔技術低劣的醫生,在診治這種疾病時,既不能恰當地運用補瀉治法,又不了解病情,致使精氣日漸耗散,邪氣得以積並〕」。 ○至要:極重要的部分。 ○烏睛:黑睛又名黑珠、黑仁、烏睛、烏珠等。位於眼珠正前方,為無色透明而近圓形的膜,周邊與白睛相連,具有衞護瞳神的作用,也是保護神光發越的組織之一。/烏:黑色的。/睛:眼珠。眼睛。 ○眥:眼眶。人體部位名。指大小眼角。也即上下眼瞼連結的部位。又稱大眼角為內眥、大眥;稱小眼角為外眥、銳眥。 ○胞:指眼瞼。『脈訣』:「眼胞忽陷定知亡」。 ○白睛:解剖名稱。出『諸病源候論』卷二十八。又名白眼、白仁、白珠、白輪、眼白。包括今之球結膜與鞏膜。前端與黑睛緊連,共組成眼珠外層。彼此病變常牽累。白睛內應於肺,為五輪中之氣輪,肺與大腸相表裡,故白睛疾患常與肺或大腸有關。 ○眸子:即瞳子、瞳仁。『靈樞』刺節真邪:「刺此者,必於日中,刺其聽宮,中其眸子,聲聞於耳,此其輸也」。(按:「中其眸子」形容針刺感應可從聽宮穴擴散到眼睛,不是真刺眼球。) ○須:本書では,「宜」とともに再読されず,単に「べし」と訓まれる。 ○䆒:「究」の異体字。 ○所因:指所來的地方。 ○大眥:即指內眥。內眥又名目內眥、大眥、眼大頭、眼大嘴、眼大睫、(眼)大角。即內眼角(上下眼瞼在鼻側連結部)。是足太陽膀胱經的起點,有睛明穴。 ○實熱:指邪氣盛實之發熱。陽熱之邪侵襲人體,由表入裏所致的病證。 ○小眥:即目外眥。外眥亦名銳眥、小眥、眼梢頭、眼小嘴、眼小睫、眼小角、目銳眥、小眥。 ○絲血脹者:添え仮名は「シケツメフクレルハ」。ここでは目尻のことを述べているので,「メ」は「ノ」の誤字と判断して【訓み下し】た。/絲:纖細如絲的東西。指極微的量。/なお和刻本『万病回春』は「赤紅」とつづけず,「大眥赤く,紅肉堆(うずたか)く起こる者は……,小眥赤く,紅絲血脹する者は」と訓んでいる。 ○虗熱:陰陽氣血虛虧引起的發熱。泛指陰、陽、氣、血不足而引起的發熱,分別稱爲陰虛發熱、氣虛發熱、血虛發熱、陽虛發熱。 ○翳障:障蔽。【障翳】遮蔽。障扇。/翳:一種瞳孔為白膜所蒙蔽,以致無法看清東西的眼疾。/障:遮蔽、遮擋。類似屏風的帷幕或物品。 ○膜:動、植物體內像薄皮的組織。 ○眼胞:眼皮。 ○坐起:安坐與起立,指行為舉止。起身而坐。 ○迎風:面對著風。風に逆らう。 ○出淚:添え仮名は「ナンダイテ」。下文の添え仮名は「ナミタイデ」。「なんだ」は「なみだ」の音変化。 ○生花:眼昏花。/花:模糊不清。如:「眼睛都花了」。宋 徐鉉『亞元舍人猥貽佳作因為長歌兼寄陳君庶』:「酒酣耳熱眼生花,暫似京華歡會處」。
◉『萬病回春』卷5・眼目:「目之失明者,四氣七情之所害也。大抵眼目為五臟之精花,一身之至要也,故五臟分五輪,八卦名八廓。五輪者,肝屬木,曰風輪,在眼為烏睛;心屬火,曰火輪,在眼為二眥;脾屬土,曰肉輪,在眼為上下胞;肺屬金,曰氣輪,在眼為白睛;腎屬水,曰水輪,在眼為瞳子。……其症七十有二。治之須究其所因。……眼者,五臟六腑之精華也。大眥赤、紅肉堆起者,心經實熱也;小眥赤、紅絲血脹者,心經虛熱也;烏睛紅白翳障者,肝病也;白珠紅筋翳膜者,肺病也;上下眼胞如桃者,脾病也;迎風出淚、坐起生花者,腎病也」。
卷下・六オモテ(737頁)
○肝氣實熱血目赤絲竹空[眉後陷中]百會[項中央旋毛中]上星[入前髮際一寸陷中]淺刺
【訓み下し】
○肝氣實し,熱血,目赤きに,絲竹空[眉後の陷中]・百會[項(いただき)【頂】の中央(まんなか),旋毛(つじげ)の中(うち)]・上星[前の髮の際(はえぎわ)に入る一寸の陷中]淺く刺す。
【注釋】
◉『鍼灸聚英』雑病・眼目:「肝氣實、風熱、痰熱、血瘀熱、血實氣壅。絲竹空、上星、百會、攢竹宣洩」。
◉『鍼灸聚英』絲竹空:「主目眩頭痛,目赤,視物䀮䀮不明……」。
◉『鍼灸聚英』上星:「主……目眩,目睛痛,不能遠視……」。
◉『神應經』耳目部:「目赤:目窗 大陵 合谷 液門 上星 攢竹 絲竹空」。
○目內眥痛淚出不明風池[耳後髮際陷中]合谷[手大指次指歧骨間陷中]深刺
【訓み下し】
○目の內眥(まがしら)痛み,淚(なんだ)出で,明らかならず,風池[耳の後ろ髮の際の陷中]・合谷[手の大指の次の指,歧骨(ちまたほね)の間の陷中]深く刺す。
【注釋】
◉『鍼灸聚英』風池:「主……目淚出……目內眥赤痛……目不明」。
◉『鍼灸聚英』合谷:「主……目視不明,生白翳……」。
◉『鍼灸聚英』雑病・眼目:「痛者,風池、合谷」。
○頭痛如破目疼如脫目瞤目風出淚偏風視物不明頭維[入髮際神庭傍四寸五分]後谿[手小指外側本節後陷中握拳取之]淺刺
【訓み下し】
○頭痛 破(わ)るが如く,目疼(いた)み脫(ぬ)けるが如く,目瞤(うるお)い,目風 淚(なみだ)出で,偏風,物を視て明らかならず,頭維[髮際に入る神庭の傍ら四寸五分]・後谿(こうけい)[手の小指外の側(かたわら),本節(もとふし)の後ろの陷中,拳(こぶし)を握り之を取る]淺く刺す。
【注釋】
○目瞤:症狀名。胞輪振跳(twitching eyelid;blepharospasm)。俗稱眼皮跳,眼眉跳。清・黃庭鏡『目經大成』卷二:「此症謂目瞼不待人之開合,而自牽拽振跳也」。/まぶたの痙攣。一説には,眼珠跳動。著者は「潤」字と混同しているようだ。 ○目風:『素問』風論:「風氣循風府而上,則爲腦風。風入係頭,則爲目風,眼寒」。『類經』注:「風自腦戶入係於頭,則合於足之太陽。太陽之脈起於目內眥,風邪入之,故為目風,則或痛或癢,或眼寒而畏風羞澀也」。泛指因風邪所致之目疾。目掣動謂之目風。/參見目𤸪:目𤸪爲症狀名。出『黃帝內經靈樞』熱病。𤸪,引縱也。謂宜近而引之遠,宜遠而引之近,皆爲牽掣也。此處指目牽動感。 ○偏風:病證名。又稱「偏枯」,即半身不遂。ただ,「目瞤,目風淚出」と「視物不明」の間にあり,不審。頭維の主治としては,『鍼灸甲乙經』『備急千金要方』などには「偏風」は見えない。『鍼灸資生經』第6・目不明に,「頭維治偏痛,目視物不明」とある。『神應經』頭面部に「頭偏痛:頭維」とある。これらによれば,「偏風」は「偏痛」の誤りか。なお「偏痛」の用例としては,『素問』『靈樞』に「上氣短氣偏痛」「胸偏痛」「脈偏痛」がある。
◉『鍼灸聚英』頭維:「主頭痛如破,目痛如脫,目瞤,目風淚出,偏風,視物不明」。
◉『鍼灸聚英』後谿:「主……目赤生翳……」。
◉『鍼灸聚英』雑病歌・耳目:「目風赤爛陽谷燒,赤翳攢竹後谿高。……目翳膜者治合谷,臨泣角孫液門巔,後谿中渚睛明穴。……眼淚出治臨泣穴,百會液門與後谿,通前通後共八穴」。
○雀目逺視不明出淚內眥赤痛䀮䀮無見眥癢白翳弩肉侵睛睛明[內眥頭外一分陷中]攅竹[眉頭陷中]曲差[神庭旁一寸半入髮際]淺刺且久留玉枕[腦戶旁一寸半]風門[二推下相去脊中各二寸]淺刺
【訓み下し】
○雀目(とりめ),遠く視て明らかならず,淚(なみだ)出で,內眥(まがしら)赤く痛み,䀮䀮として見ること無く,眥(まじり)癢(かゆ)く,白翳弩肉 睛(せい)を侵し,睛明[內眥(ないし)の頭(かしら)の外(そと)一分の陷中]・攢竹[眉頭(びとう)の陷中]・曲差[神庭の旁ら一寸半,髮際に入る]淺く刺す。且つ久しく留(とど)む。玉枕(ぎよくしん)[腦戶の旁ら一寸半]・風門[二推の下(した),脊中を相い去ること各二寸]淺く刺す。
【注釋】
★逺:「遠」の異体字。以下,あれば「遠」で入力する予定。
○雀目:病證名。系指夜間視物不清的一類病證。又有雞蒙眼、雞盲等別稱。亦即今之夜盲。 ○䀮䀮:『玉篇•目部』:「䀮,目不明」。『素問・藏氣法時論』:「虚則目䀮䀮無所見,耳無所聞」。 ○弩肉:胬肉。一種眼病,中醫指眼球結膜增生而突起的肉狀物,即翼狀胬肉。 ○玉枕:添え仮名には「ギョクシンニ」とある。返り点のつけ忘れで,「久しく玉枕に留む」と訓む可能性があるが,『鍼灸聚英』睛明穴に「雀目者,可久留鍼」とあるので,「久留」は前文のつづきと判断し,「ニ」は衍文として処理した。
◉『鍼灸聚英』睛明:「雀目者,可久留鍼。然後速出鍼。……主目遠視不明,惡風淚出,憎寒頭痛,目眩,內眥赤痛,䀮䀮無見,眥癢,浮膚白翳,大眥攀睛弩肉侵睛,雀目,瞳子生障,小兒疳眼。/按東垣曰:刺太陽、陽明出血,則目愈明。蓋此經多血少氣,故目翳與赤痛從內眥起者,刺睛明、攢竹,以宣泄太陽之熱,然睛明刺一分半,攢竹刺一分三分,為適淺深之宜。今醫家刺攢竹,臥針直抵睛明,不補不瀉,而又久留鍼,非古人意也」。
◉『鍼灸聚英』曲差:「主目不明……」。
◉『鍼灸聚英』玉枕:「絡卻後一寸五分,又云七分。俠腦戶旁一寸三分,起肉枕骨上,入髮際二寸。……主目痛如脫。不能遠視」。
◉『鍼灸聚英』風門:「主……目瞑……」。
○目風赤爛陽谷[手外側腕中銳骨下陷中]太陵[掌後骨下兩筋間陷]深刺
【訓み下し】
○目風,赤く爛(ただ)れ,陽谷[手の外の側(かたわら),腕(わん)の中(なか),銳骨(ぜいこつ)の下の陷中]・太陵[掌後の骨の下(した),兩筋の間の陷]深く刺す。
【注釋】
◉『鍼灸聚英』雑病歌・耳目:「凡人目赤目窗鍼,大陵合谷液門臨,上星絲竹空攢竹,七〔和刻本は「十」に誤る〕穴治之病絕根,目風赤爛陽谷燒」。
○目生翳膜液門[手小指次指間陷中握拳取之]中渚[腋門下一寸次指本節後間之陷中]後谿合谷[穴處出上]淺刺角孫[耳郭中間上髮際之下開口有穴]臨泣[足小指次指本節後間陷]深刺
【訓み下し】
○目に翳膜を生じ,液門[手の小指の次の指の間の陷中。拳を握り之を取る]・中渚[腋門の下一寸,次の指の本節(もとふし)の後ろの間の陷中]・後谿・合谷[穴處 上に出づ]淺く刺す。角孫[耳郭(にかく)の中間(まんなか)の上,髮際の下(しも),口を開(ひら)けば穴(あな)有り]・臨泣[足の小指の次の指本節(もとふし)の間の陷]深く刺す。
【注釋】
★臨泣穴の主治からすると,足の臨泣ではなく,頭の臨泣。位置の説明は誤りであろう。
○目生翳膜:眼睛裡長了遮擋視線膜,應該類似於咱們現在所說的白內障。/翳:有遮蔽的意思。/膜:就是動物體能一層薄皮。
◉『鍼灸聚英』雑病歌・耳目:「目翳膜者治合谷,臨泣角孫液門巔,後谿中渚睛明穴」。
◉『鍼灸聚英』中渚:「手小指次指本節後間陷中,在腋門下一寸」。
◉『鍼灸聚英』足少陽膽經・(頭)臨泣:「主目眩,目生白翳,目淚,……反視……目外眥痛……」。
◉『鍼灸聚英』足少陽膽經・(足)臨泣:「主胸中滿,缺盆中及腋下馬刀瘍瘻,善齧頰,天牖中腫,淫濼,䯒酸,目眩,枕骨合顱痛,灑淅振寒,心痛,周痹痛無常處,厥逆氣喘,不能行,痎瘧日發,婦人月事不利,季脇支滿,乳癰」。
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