卷下・七ウラ(740頁)
(9)口舌[コウゼツ]
咽痛舌瘡口乾足熱爲腎經虗火
【訓み下し】
咽(のど)痛み,舌(ぜつ)瘡(そう),口(くち)乾き,足(あし)熱す,腎經の虛火と爲す。
【注釋】
◉『萬病回春』卷5・口舌:「若咽痛舌瘡、口乾足熱;日晡益甚,為腎經虛火」。
○舌本作強腮頰腫痛爲脾經濕熱
【訓み下し】
○舌本 強(こわ)ばることを作(な)し,腮(さい)頰(きよう)腫れ痛み,脾經の濕熱と爲す。
【注釋】
○腮頰:臉頰。ほほ。
◉『萬病回春』卷5・口舌:「若舌本作強、腮頰腫痛,為脾經濕熱」。
○口舌腫痛爲上焦有熱
【訓み下し】
○口(こう)舌(ぜつ)腫れ痛み,上焦に熱有りと爲す。
【注釋】
◉『萬病回春』卷5・口舌:「若痰甚作渴、口舌腫痛,為上焦有熱」。
○口舌生瘡咽喉不利爲脾經血傷火動病因多端腎虗多當臨時制冝凢舌脹甚以砭針舌
尖或舌上或傍出血泄毒以可救急
【訓み下し】
○口舌 瘡(かさ)を生じ,咽(の)喉(ど)利せず,脾經の血の傷(やぶ)れと爲す。火(ひ)動ずれば,病因多端なり。腎虛多くは,時に臨んで宜しく制す當し。凡(およ)そ舌(した)脹(ふく)れ甚だしきに,砭針を以て舌の尖り,或いは舌の上(うえ),或いは傍ら血を出だす,毒を泄らす,以て急を救う可し。
【注釋】
○冝:「宜」の異体字。名詞として訓むべきであろう。「宜を制す當(べ)し」。/制宜:謂區別不同的情況而制定適宜的方式方法。 ○凢:「凡」の異体字。
◉『萬病回春』卷5・口舌:「若思慮過度、口舌生瘡、咽喉不利,為脾經血傷火動;若恚怒過度、寒熱口苦而舌腫痛,為肝經血傷火動。病因多端,當臨時制宜。凡舌腫脹甚,宜先刺舌尖或舌上或邊傍,出血泄毒,以救其急。唯舌下濂泉穴,此屬腎經,雖宜出血,亦當禁針慎之」。
唇腫痛迎香[鼻孔旁五分]淺刺
【訓み下し】
【○】唇(くちびる)腫れ痛むに,迎香[鼻(はな)の孔(あな)の旁ら五分]淺く刺す。
【注釋】
★以下,引用元がかわり治療穴の説明に入るので,文頭に「○」を脱する。
◉『鍼灸聚英』迎香:「主……唇腫痛……」。
○口禁牙關不開面腫唇動如虫行水溝[鼻柱下人中近鼻孔陷者中]淺刺得氣瀉
【訓み下し】
○口禁,牙關開(ひら)かず,面(おもて)腫れ唇(くちびる)動き,虫の行(ゆ)くが如し,水溝[鼻柱(ばしら)の下(した),人中 鼻(び)孔(こう)に近き,陷者中]淺く刺す。氣を得て瀉す。
【注釋】
○口禁:口噤。口緊閉。 ○牙關:上下牙齒咬合的部分。【牙關緊閉】因嚼肌、下頷運動組織發炎,或痙攣等導致開口困難的症狀。
◉『鍼灸聚英』水溝:「主……中風口禁,牙關不開,面腫唇動,狀如蟲行……」。
○張口不合舌緩三隂交[踝上三寸]崑崙[足外踝後跟骨上陷]衝陽[跗上五寸]深刺
【訓み下し】
○口を張り合わず,舌(した)緩まるに,三隂交[踝上三寸]・崑崙[足の外踝(か)の後(あと),跟骨の上(かみ)の陷]・衝陽[跗(ふ)上五寸]深く刺す。
【注釋】
○張口:開口。張開嘴巴。常指進食、說話等。驚愕不能言說狀。驚訝得說不出話的樣子。
◉『鍼灸聚英』三陰交:「主……失欠頰車蹉開,張口不合……」。
◉『鍼灸聚英』雑病歌・鼻口:「舌緩太淵合谷中,衝陽內庭風府同,通前通後共七穴,三陰交穴崑崙攻」。
◉『神應經』鼻口部:「舌緩:太淵 合谷 衝陽 內庭 崑崙 三陰交 風府」。
○失驚吐舌不能入經旬不食羸瘦日甚爲針舌之底抽針之際其人若委頊〔頓〕狀頃刻舌縮如故
【訓み下し】
○失驚,舌(した)を吐き,入(い)ること能わず,旬を經て食せず,羸瘦 日々に甚だし。針を舌(した)の底(ね)に爲し,針を抽(ぬ)くの際(あいだ),其の人 委(い)頊(きよう)の狀(かたち)の若(ごと)し。頃刻(しばらく)して舌縮(しじ)まって故(もと)の如し。
【注釋】
○失驚:吃驚、受驚。 ○旬:十天。【經旬累月】指經過一段長久的時間。 ○羸瘦:衰弱消瘦。 ○委頊:「委頓」の誤り。「萎頓」にも作る。衰弱;病困。疲困、廢壞。/頓:疲倦。如:「困頓〔疲困勞累〕」。 ○しじまる:ちぢんで小さくなる。ちぢまる。【蹙まる/縮まる】 ○頃刻:形容極短的時間。 ○如故:像原來的一樣。『醫學入門』からの引用と思われるが,先行文献の『醫說』では「如平時」に作る。
◉『醫學入門』歷代醫學姓氏・明醫(醫極其明者也):「王貺 字子亨,本士人,乃宋道方之婿,盡傳其術,後以醫得幸,宣和中為朝請大夫。著『全生指迷論』。○有鹽商失驚,吐舌不能入,經旬不食,尫羸日甚,公為針舌之底,抽針之際,其人若委頓〔「頊」字のように見える〕狀,頃刻舌縮如故」。
https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100381939/71?ln=ja
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00008736 74/1154コマ目
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00000898 72/1091コマ目
★張杲『醫說』卷2・鍼灸・鍼舌底治舌出不收〔王況〕
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00001047 88/332コマ目
★『古今醫統大全』卷1・歷世聖賢名醫姓氏・宋・王貺
https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100391953/86?ln=ja
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