2024年3月14日木曜日

鍼灸溯洄集 47 卷中(14)欬嗽

   卷中・十六ウラ(708頁)

  (14)欬嗽

  【注釋】

 ○咳嗽(cough)爲病名。是指以咳嗽、咯痰爲主要表現的疾病。出自『黃帝內經素問』五臟生成篇。咳嗽爲肺系疾患的一種常見病症。/宋以前,咳、嗽同義。『素問病機氣宜保命集』:「咳謂無痰而有聲,肺氣傷而不清也;嗽是無聲而有痰,脾溼動而爲痰也。咳嗽謂有痰而有聲,蓋因傷於肺氣動於脾溼,咳而爲嗽也」。「咳」指肺氣上逆作聲,有聲無痰;「嗽」指咯吐痰液,有痰無聲;有聲有痰爲「咳嗽」。一般多爲痰聲並見,難以截然分開,故以咳嗽並稱。/咳嗽既是具有獨立性的證候,又是肺系多種疾病的一個症狀,因久咳致喘,表現肺氣虛寒或寒飲伏肺等證者,參閱喘證、痰飲。

 ◉『病名彙解』咳嗽:「せきしはぶきなり。○『入門』に,咳は氣動するに因て聲をなす。嗽は乃血化して痰となる。肺氣動ときは咳す。脾濕動ときは嗽す。……○『醫統』に云……」。/しわぶき:しわ‐ぶき〔しは‐〕【咳き】せきをすること。また、せき。

  https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100232367/127?ln=ja


  卷中・十七オモテ(709頁)

冷風嗽者遇風冷即發痰多喘嗽

  【訓み下し】

冷風嗽は,風冷に遇(あ)って即ち發(お)こる。痰多く喘嗽し,

  【注釋】

 ◉『萬病回春』卷2・咳嗽:「冷風嗽者,遇風冷即發,痰多喘嗽是也」。


○痰嗽者嗽動便有痰聲痰出嗽止

  【訓み下し】

○痰嗽は,嗽 動ず。便ち痰聲有り,痰出づれば嗽止む。

  【注釋】

 ◉『萬病回春』卷2・咳嗽:「痰嗽者,嗽動便有痰聲,痰出嗽止是也(嗽而痰多者,是脾虛也。)」。


○肺脹者嗽則喘滿氣急也

  【訓み下し】

○肺脹は,嗽する則(とき)は,喘滿氣急なり。

  【注釋】

 ◉『萬病回春』卷2・咳嗽:「肺脹嗽者,嗽則喘滿氣急也(喘急不得眠者難治。)」。


○咳嗽胷膈結痛者痰結也

  【訓み下し】

○咳嗽(しわぶ)き胸膈結痛するは,痰結なり。

  【注釋】

 ◉『萬病回春』卷2・咳嗽:「咳嗽胸膈結痛者,是痰結也」。


○早晨嗽者胃中有食積也

  【訓み下し】

○早晨(あさ)嗽(しわぶき)するは,胃中 食積(しょくしゃく)有り。

  【注釋】

 ○食積:病名。中醫指吃食物過多而引起的消化不良的病。

 ◉『萬病回春』卷2・咳嗽:「早晨嗽者,胃中有食積也」。


○上半日嗽多者胃中伏火也

  【訓み下し】

○上(かみ)半日(にち),嗽(そう)多きは,胃中伏火なり。

  【注釋】

 ◉『萬病回春』卷2・咳嗽:「上半日嗽多者,胃中有伏火也」。


○千金曰寒嗽太冲[足大指本節後二寸]淺刺心欬神門[掌後銳骨端陷中]淺刺脾咳太白[足大指內側內踝前核骨下之陷中]浅刺肺咳太淵[掌後陷中]淺刺腎咳太谿[足內踝後跟骨上動脉陷中]淺膽咳陽陵泉[膝下一寸䯒外廉陷中]深刺

  【訓み下し】

○『千金』に曰わく,「寒嗽,太冲(たいしょう)[足の大指の本節(もとふし)の後ろ二寸]淺く刺す。心欬,神門[掌後銳(とがり)骨端(はし)の陷中]淺く刺す。脾咳に太白[足の大指の內の側(かたわら),內踝(うちくるぶし)前の核骨の下の陷中],淺く刺す。肺咳,太淵[掌後(じょうご)の陷中]淺く刺す。腎咳,太谿[足の內踝(うちくるぶし)の後ろ,跟(きびす)骨の上,動脈の陷中]淺く。膽咳,陽陵泉[膝の下一寸䯒(はぎ)の外廉(そとかど)陷中]」。深く刺す。

  【注釋】

 ○冲:「衝」の異体字。 ○

 ◉『鍼灸聚英』玉機微義・咳嗽:「『千金方』曰:寒欬。肢〔「肝」の誤字であろう〕欬,刺足太冲。心欬,刺手神門。脾欬,刺足太白。肺欬,刺手太淵。腎欬,刺足太谿。膽欬,刺足陽陵泉」。

 ★本書の撰者は,「肢」が「肝」字の誤りであることに気づかず,そのため不審な「肢欬」を省いたか。


○上氣欬逆短氣風勞灸肩井[肩上陷中以三指按之中指下陷中]淺刺灸百壯

  【訓み下し】

○上氣欬逆,短氣風勞,肩井[肩の上,陷(くぼみ)中,三の指を以て之を按(お)し,中(なか)指の下(しも),陷中]に灸す。淺く刺す。百壯に(ママ)灸す。

  【注釋】

 ◉『鍼灸聚英』玉機微義・咳嗽:「上氣欬逆,短氣,風勞病,灸肩井三百壯」。


○上氣欬逆短氣胸滿多唾冷痰灸肺俞[三推下相去脊中各二寸]五十壯

  【訓み下し】

○上氣欬(かい)逆,短氣胸(むね)滿ち,唾(つば)多く冷痰に,肺俞[三推の下(しも),脊中を相い去ること各二寸]に灸す,五十壯。

  【注釋】

 ◉『鍼灸聚英』玉機微義・咳嗽:「上氣欬逆,短氣胸滿,多唾,唾惡冷痰,灸肺俞五十壯」。


  卷中・十七ウラ(710頁)

○風寒火勞痰肺脹濕然谷[足內踝前起大骨下陷中]曲澤[肘內廉下陷中屈肘得之]前谷[手小指外側本節前陷中]肝俞[九推下相去脊中各二寸]期門[直乳二肋端不容旁一寸五分]灸刺

  【訓み下し】

○風寒火勞痰肺脹濕に,然谷[足の內踝(うちくるぶし)の前,起こる大骨の下,陷中]・曲澤[肘(うで)の內廉の下(しも)の陷中,肘を屈(かが)めて之を得(う)]・前谷[手の小指の外の側(かたわら),本節(もとふし)の前の陷中]・肝の俞[九推の下(しも),脊中を相い去ること各二寸]・期門[直乳(じきにゅう)二肋の端(はし),不容の旁(かたわら)一寸五分]灸刺す。

  【注釋】

 ◉『鍼灸聚英』治例・雜病・欬嗽:「風、寒、火、勞、痰、肺脹、濕。/灸天突、肺俞、肩井、少商、然谷、肝俞、期門、行間、廉泉、扶突。/鍼曲澤(出血立已)、前谷」。


○咳嗽上氣吐嘔沫列缺[去腕側上一寸五分]經渠[寸口陷中]淺刺

  【訓み下し】

○咳嗽上氣,嘔沫を吐し,列缺[腕の側(かたわら)の上(うえ)を去る一寸五分]・經渠[寸口陷中]淺く刺す。

  【注釋】

 ◉『鍼灸聚英』列缺:「去腕側上一寸五分。……主……嘔沫,咳嗽……」。

 ◉『鍼灸聚英』經渠:「主……咳逆上氣……心痛嘔吐」。


○面赤熱嗽支溝[腕後臂外三寸兩骨之間陷中]三里[曲池之下二寸]淺刺

  【訓み下し】

○面(おもて)赤く熱嗽に,支溝[腕後臂(うで)の外(ほか)三寸,兩骨の間の陷中]・三里[曲池の下二寸]淺く刺す。

  【注釋】

 ◉『鍼灸聚英』治例・雜病・欬嗽:「面赤熱欬,支溝。多唾,三里」。

 ★『鍼灸聚英』によれば,「熱嗽」は「熱欬」の誤りか。

 ★『鍼灸聚英』によれば,「三里」は,咳嗽(風、寒、火、勞、痰、肺脹、濕)で,「多唾」のときに用いる。

 ★小林健二氏によれば,『鍼灸聚英』の「三里」は,「通里」の誤りが疑われる。『鍼灸資生經』第7・傷寒:「通里治熱病……面赤而熱(『銅』)」。また,『鍼灸甲乙經』卷9・邪在肺五臟六腑受病發欬逆上氣第3に「欬面赤熱,支溝主之」とあり,『外臺祕要方』卷39・三焦人の支溝もおなじ。


○面浮腫拘急喘滿崑崙[足外踝後跟骨上之陷中]解谿[足大指次指直上跗上陷者中]深刺

  【訓み下し】

○面(おもて)浮腫(うそは)れ拘急,喘滿に,崑崙[足の外踝(とくるぶし)の後(あと),跟(きびす)骨上之陷中]・解谿[足の大指の次の指,直ちに上(かみ),跗(こう)の上(うえ)の陷者中]深く刺す。

  【注釋】

 ○うそはれ:「うそ」は接頭辞で,「うすし(薄し)」の変化したもの。すこし。わずかに。 ○跗:『玉篇』足部:「跗,足上也」。 ○こう:甲。手や足のおもての面。足の甲。

 ◉『鍼灸聚英』解谿:「主風面浮腫……」。

 ◉『鍼灸聚英』崑崙:「主……頭痛肩背拘急,咳喘滿……」。

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