卷中・十七ウラ(710頁)
(15)喘急
【注釋】
○喘急:臨床用語。喘急或稱「喘促」。是形容氣喘時呼吸急促之狀。
喘者爲惡候因火所欝而痰在肺胃也。
【訓み下し】
喘は惡候と爲す。火(ひ) 欝する所にして痰に因る。肺胃に在り。
【注釋】
○欝:「鬱」の異体字。
○和刻本『萬病回春』卷2・喘急:「喘者為惡候,因火所鬱而痰在肺胃也〔和刻本の訓:火に因って鬱せ所(られ),痰 肺胃に在り〕」。別の訓としては,「火の鬱する所に因る,而して痰は肺胃に在り」が考えられるか。『溯洄集』の訓には問題があろう。
○肺胃:明万暦30年重刊本作「脾胃」。
○痰喘者喘動便有痰聲
【訓み下し】
○痰喘は,喘動便ち痰聲有り。
【注釋】
◉『萬病回春』卷2・喘急:「痰喘者,喘動便有痰聲也」。
卷中・十八オモテ(711頁)
○火喘者乍進乍退得食則减止食則喘也
【訓み下し】
○火喘は,乍(たちま)ち進み乍ち退き,食を得(う)る則(とき)は減(げん)し,食を止(や)む則は喘(すだ)く。
【注釋】
○火喘:病證名。因痰火上行,症見氣粗而盛的氣喘。見〔明代方谷〕『醫林繩墨』喘。又名火炎上喘、火炎肺胃喘、炎熱喘急。 ○减:「減」の異体字。 ○乍A乍B:AとBの対立する動作や状況が次々に交替して行なわれたり現われたりすることを示す。 ○すだく:あえぐ。呼吸が苦しくなる。
◉『萬病回春』卷2・喘急:「火喘者,乍進乍退,得食則減,止食則喘也」。
◉『丹溪心法』喘十五:「戴〔元禮〕云:有痰喘,有氣急喘,有胃虛喘,有火炎上喘。痰喘者,凡喘便有痰聲;氣急喘者,呼吸急促而無痰聲;有胃氣虛喘者,抬肩擷項,喘而不休;火炎上喘者,乍進乍退,得食則減,食已則喘」。
○氣短而喘者呼吸短促而無痰聲也
【訓み下し】
○氣短にして喘(すだ)く者は,呼吸短促にして痰聲無し。
【注釋】
◉『萬病回春』卷2・喘急:「氣短而喘者,呼吸短促而無痰聲也」。
○上喘者曲澤[肘內廉下陷中屈肘得之]神門[掌後銳骨端之陷中]淺解谿[足大指次指直上跗上陷者中]崑崙[足外踝後跟骨上陷中]太陵[掌後骨下兩筋間陷者中]深刺
【訓み下し】
○上(かみ)喘する者は,曲澤[肘(うで)の內廉(うちかど)下の陷中,肘(うで)を屈(かが)めて之を得(う)]・神門[掌後(じょうご)銳骨(ぜいこつ)の端(はし)の陷中]淺く,解谿[足の大指の次の指直上,跗(こう)の上,陷者中]・崑崙[足の外踝の後(あと),跟(きびす)骨上の陷中]・太陵[掌後骨の下(した),兩筋の間の陷者中]深く刺す。
【注釋】
○太陵:「大陵」におなじ。
◉『鍼灸聚英』雜病歌・痰喘咳嗽:「上喘曲澤大陵中,神門魚際三間攻。商陽解谿崑崙穴,亶中肺俞十穴同」。
○喘咳隔食灸鬲俞[七推下相去脊中各二寸]
【訓み下し】
○喘咳隔食,鬲の俞[七推の下(しも),脊中を相い去ること各二寸]に灸。
【注釋】
○隔食:病證名。指飲食難以下膈入於胃腸。與噎膈、隔同義。陳念祖謂:「膈者,阻隔不通,不能納穀之謂也。又謂之隔食,病在胸膈之間也」。
◉『鍼灸聚英』雜病歌・痰喘咳嗽:「喘嗽隔食治膈俞」。
○喘滿氣喘商陽[手大指次指内側去爪甲角]三間[食指本節後內側陷者中]淺刺
【訓み下し】
○喘滿氣喘,商陽[手の大指の次の指內側(うちかたわら),爪の甲の角を去る]・三間[食指の本節(もとふし)の後(あと),內の側(かたわら),陷者中]淺く刺す。
【注釋】
◉『鍼灸聚英』雜病歌・痰喘咳嗽:「喘滿三間商陽宜」。
◉『鍼灸聚英』三間:「主……氣喘……」。
○上衝胸喘息不能行不得安臥上廉[三里下三寸舉足取之]期門[直乳二肋端不容旁一寸五分]中脘[臍上四寸]深刺
【訓み下し】
○胸に上(のぼ)り衝(つ)き,喘息,行(ゆ)くこと能わず,安臥すること得ず,上廉[三里の下(しも)三寸,足を舉げて之を取る]・期門[直乳二肋の端,不容の旁(かたわら)一寸五分]・中脘[臍の上四寸]深く刺す。
【注釋】
◉『鍼灸聚英』巨虛上廉:「主……氣上衝胸,喘息不能行……」。
◉『鍼灸聚英』期門:「主……大喘不得安臥……」。
◉『鍼灸聚英』中脘:「主五膈,喘息不止……」。
○肺脹氣滿脇下痛大淵[掌後陷中]大都[足大指本節後內側陷中]。肺俞[三推下相去脊中各二寸]淺刺
【訓み下し】
○肺脹,氣滿ち,脇の下痛み,大淵[掌後陷中]・大都[足の大指の本節(もとふし)の後ろ內の側(かたわら)の陷中]。肺の俞[三推の下(しも),脊中を相い去ること各二寸]淺く刺す。
【注釋】
◉『鍼灸聚英』雜病歌・痰喘咳嗽:「肺脹氣搶脇下痛,陰都太淵肺俞除」。
◉『鍼灸聚英』大都:「主熱病汗不出,不得臥,身重骨疼,傷寒手足逆冷,腹滿善嘔,煩熱悶亂,吐逆,目眩,腰痛不可俯仰,繞踝風,胃心痛,腹脹胸滿,心蛔痛,小兒客忤」。
◉『鍼灸聚英』陰都:「陰都(一名食宮) 通谷下一寸,夾胃脘兩邊相去五分。……主心滿逆氣,腸鳴,肺脹氣搶,脇下熱痛,目赤痛從內眥始」。
★「大都」は「陰都」の誤りであろう。
卷中・十八ウラ(712頁)
○喘息欬逆煩滿魄戶[三推下相去脊骨各三寸五分]淺刺
【訓み下し】
○喘息欬逆,煩滿,魄戶[三推の下(しも),脊骨を相い去ること各三寸五分]淺く刺す。
【注釋】
◉『鍼灸聚英』魄戶:「主……喘息咳逆,嘔吐煩滿」。
○胸脇痛支滿喘息章門[大橫外直季脇肋端臍上二寸]幽門[巨闕旁各五分]不容[巨闕旁相去中行各三寸]深刺
【訓み下し】
○胸(むね)脇(わき)痛み,支(ささ)え滿ち,喘息,章門[大橫の外(ほか)直ちに季脇肋の端(はし),臍の上(かみ)二寸]・幽門[巨闕の旁(かたわら)各五分]・不容[巨闕の旁(かたわら),中行を相い去ること各三寸]深く刺す。
【注釋】
○胸脇支滿:指胸及脇肋部支撐脹滿。
◉『鍼灸聚英』章門:「主……胸脇痛支滿,喘息」。
◉『鍼灸聚英』不容:「主腹滿痃癖,唾血,肩脇痛,口乾,心痛與背相引,不可咳,咳則引肩痛,嗽喘疝瘕,不嗜食,腹虛鳴,嘔吐痰癖」。
◉『鍼灸聚英』幽門:「主小腹脹滿,嘔吐涎沫,喜唾,煩悶胸痛,胸中滿,不嗜食,逆氣咳,健忘,泄利膿血,目赤痛從內眥始,女子心腹逆氣」。
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