2024年3月12日火曜日

鍼灸溯洄集 46 卷中(13)痰飲

   卷中・十五ウラ(706頁)

  (13)痰飲

  【注釋】

 ○痰飲:中醫病症名。四飲之一。指體內過量水液不得輸化、停留或滲注於某一部位而發生的疾病。一般認為「稠濁者為痰,清稀者為飲」。漢 張仲景『金匱要略』痰飲欬嗽病脈證並治:「其人素盛今瘦,水走腸間,瀝瀝有聲,謂之痰飲」。/但此書記述之痰飲有廣義和狹義的理解。廣義則概括多種飲病,包括痰飲、懸飲、溢飲、支飲等。此數種中之痰飲,則屬狹義之範疇。痰飲由體內水濕不化所釀生。

 ◉『病名彙解』痰飲:「『要訣』に云,痰に六あり。懸・溢・支・痰・留・伏也。痰飲はただ六飲の一のみ。人 此を病(やん)でただ痰飲と云ものは,蓋しとどまること已に久しければ,痰とならざるはなければなり。○『入門』に云……○『方考』に云……」。

  https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100232367/146?ln=ja


痰者属濕乃津液所化也其症有數種難明

  【訓み下し】

痰は,濕に屬す。乃ち津液の化する所なり。其の症 數種有り。明らめ難し。

  【注釋】

 ◉『萬病回春』卷2・痰飲:「痰者屬濕,乃津液所化也」。


○食積痰者多食飲食欝久而成痰

  【訓み下し】

○食積(しやく)痰は,多く食し,飲食(いんしい)欝久して痰を成す。

  【注釋】

 ◉『萬病回春』卷2・痰飲:「食積痰者,多飡飲食,欝久成痰也」。 ○飡:「餐」の異体字。吃、食。


  卷中・十六オモテ(707頁)

○胷膈有痰氣脹痛在咽喉間有如綿絮有如梅核吐之不出嚥之不下

  【訓み下し】

○胸膈に痰氣有り,脹痛 咽喉の間(あいだ)に在り,綿絮の如く有り,梅核の如く有り,之を吐けども出でず,之を嚥(の)めども下らず。

  【注釋】

 ○胷:「胸」の異体字。

 ◉『萬病回春』卷2・痰飲:「痰氣者,胸膈有痰氣脹痛也(痰在咽喉間,有如綿絮,有如梅核,吐之不出,嚥之不下,或升或降,塞碍不通,亦痰氣也,後成膈噎病。)」。 ○碍:「礙」の異体字。


○痰飲者痰在胷膈間痛而有聲也

  【訓み下し】

○痰飲は,痰 胸膈の間(あいだ)に在り,痛んで聲(こえ)有り。

  【注釋】

 ◉『萬病回春』卷2・痰飲:「痰飲者,痰在胸膈間,痛而有聲也」。


○痰涎者渾身胷背脇痛不可忍也

  【訓み下し】

○痰涎は,渾身胸(むね)背(せなか)脇(わき)痛み,忍ぶ可からず。

  【注釋】

 ○『萬病回春』卷2・痰飲:「痰涎症者,渾身胸背脇痛不可忍也。(牽引釣痛、手足冷痹,是痰涎在胸膈也。)」。


○痰濕流注者渾身有腫塊也

  【訓み下し】

○痰濕流注は,渾身に腫塊有り。

  【注釋】

 ◉『萬病回春』卷2・痰飲:「痰濕流注者,渾身有腫塊也。(凡人骨體串痛,或作寒熱,都是濕痰流注經絡也。)」。


○痰核者渾身上下結不散也

  【訓み下し】

○痰核は,渾身上下結(むすぼ)うれて散せず。

  【注釋】

 ○結:添え仮名「ムスボフレテ」。むすぼふる。むすぼほる。むすぼおる。固まって形になる。

 ◉『萬病回春』卷2・痰飲:「痰核者,渾身上下結核不散也。(或發腫塊者,是痰塊也。大凡治痰塊、流注結核,俱與濕痰流注同治法。)」。

 ◉『指南』病名彙考・痰核:「痰火に因て生ずる結核をいふ。痰核は滑軟〔ナダラ?カニヤワラカ〕,氣核は堅硬〔カタシ〕也」。

  https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100314627/84?ln=ja

 ◉『病名彙解』痰核:「頸項〔クビノマワリ〕の間,或は臂(ひじ)或は遍身に核(さね)のやうなる物を生じ,これを推(おせ)ば動くなり。○『入門』に云……」。

  https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100232367/147?ln=ja


○脇下有痰作寒熱咳嗽氣急作痛者痰結也

  【訓み下し】

○脇の下に痰有り,寒熱を作(な)し,咳嗽氣急,痛みを作(な)すは,痰結なり。

  【注釋】

 ◉『萬病回春』卷2・痰飲:「脇下有痰,作寒熱咳嗽、氣急作痛者,亦痰結也」。


○痰涎前谷[手小指外側本節前陷中]復溜[足內踝上二寸筋骨陷中]隂谷[膝下內輔骨後按之應手屈膝乃得之]淺刺

  【訓み下し】

○痰涎(たんぜん)には,前谷[手の小指の外の側(かたわら),本節(もとふし)の前の陷中]・復溜(ふくる)[足の內踝(うちくるぶし)の上(かみ)二寸,筋骨(きんこつ)の陷中]・隂谷[膝の下(した)內の輔骨(かまちほね)の後ろ,之を按(お)し手に應ず,膝を屈(かが)めて乃ち之を得(う)]淺く刺す。

  【注釋】

 ★出典は『鍼灸聚英』であろうが,『鍼灸聚英』は「然谷」を「前谷」に誤るか?

 ◉『鍼灸聚英』雜病歌・痰喘咳嗽:「痰涎陰谷與前谷,復溜三穴不可忽」。

 ◉『神應經』痰喘咳嗽部:「痰涎:陰谷 谷 復溜」。 〔みな腎経〕

 ◉『鍼灸資生經』第4・痰涎(痰飲・吐沫・餘見唾):「然谷、復留(見脊)治涎出。陰谷(見膝痛)治涎下」。

 ◉『鍼灸聚英』然谷:「主咽內腫不能內唾。時不能出唾。心恐懼。如人將捕。涎出喘呼少氣。足跗腫。不得履地。寒疝。小腹脹。上搶胸脇。咳唾血。喉痹……」。

 ◉『鍼灸聚英』前谷:「主熱病汗不出。痎瘧。癲疾。耳鳴。頸項腫。喉痹。頰腫引耳後。鼻塞不利。咳嗽吐衄。臂痛不得舉。婦人產後無乳」。


○結積留飲灸鬲俞[七推下相去脊中各二寸]通谷[幽門下一寸夾上脘相去五分]

  【訓み下し】

○結積(しやく)留飲,鬲の俞[七推の下(しも),脊中(せぼね)を相い去ること各二寸]・通谷[幽門の下(した)一寸,上脘を夾(さしはさ)み相い去ること五分]灸す。

  【注釋】

 ★原文には「鬲俞」の下に「一」点があるが,「通谷」の下に移動させて訓む。

 ◉『鍼灸聚英』雜病歌・痰喘咳嗽:「結積留飲病不瘳,膈俞五壯通谷灸」。

 ◉『神應經』痰喘咳嗽部:「膈俞(五壯) 通谷(灸)」。

 ◉『病名彙解』留飲:「六飲の一つなり。○『入門』に云,水 心下に停(とどまつ)て背冷ること手掌の大さのごとく,或は短氣にして渇し,四支歷節〔フシヲヘテ〕疼痛し,脇痛で缺盆に引(ひきつり),咳嗽うたた甚しと云り」。 ○うたた:ある状態が、どんどん進行してはなはだしくなるさま。いよいよ。ますます。


有痰氣隂虗灸中府[乳上三肋間動脉應手陷中去中行六寸]肺俞[三椎下相去脊中各二寸]華蓋[璇璣之下一寸之陷中]

  【訓み下し】

痰氣隂虛 有って,中府[乳上三肋の間,動脈 手に應ず,陷中,中行を去る六寸]・肺俞[三椎の下(しも),脊中を相い去る各二寸]・華蓋[璇璣の下(した)一寸の陷中]を灸す。

  【注釋】

 ★原文には「中府」の下に「ヲ一」点があるが,「華蓋」の下に移動させて訓む。『鍼灸聚英』の省略の仕方に問題があるように思える。

 ◉『鍼灸聚英』治例・雜病・喘:「有痰、氣虛、陰虛。灸中府、雲門、天府、華蓋、肺俞」。


  卷中・十六ウラ(708頁)

○肩脇痛口乾心痛與背相引不可欬爲痰癖不容[巨闕旁各三寸]肝俞[九推下相去脊中各二寸]灸刺

  【訓み下し】

○肩脇痛み,口乾き,心(むね)痛み背(せなか)と相い引き欬す可からず,痰癖と爲る。不容[巨闕の旁(かたわら)各三寸]・肝俞[九推の下(しも),脊中を相い去ること各二寸]灸刺す。

  【注釋】

 ○痰癖:病名。即痰邪癖聚於胸脇之間所致病證。『諸病源候論』癖病諸候:「痰癖者,由飲水未散,在於胸府之間,因遇寒熱之氣相搏,沉滯而成痰也。痰又停聚,流移於脇肋之間,有時而痛,即謂之痰癖」。與此病相類者,另有飲癖,均屬痼疾。

 ◉『鍼灸聚英』不容:「主腹滿痃癖,唾血,肩脇痛,口乾,心痛與背相引,不可欬,欬則引肩痛,嗽喘疝瘕,不嗜食,腹虛鳴,嘔吐痰癖」。

 ◉『鍼灸聚英』肝俞:「主多怒,黃疸,鼻酸,熱病後目暗淚出,目眩,氣短欬血,目上視,欬逆,口乾,寒疝,筋寒,熱痙,筋急相引,轉筋入腹將死。千金云:欬引兩脇急痛不得息,轉側難,橛肋下與脊相引而反折……」。


○上氣喘逆食飲不下承滿[不容下一寸去中行各三寸]風門[二推下相去脊中各二寸]淺刺

  【訓み下し】

○上氣喘逆,食飲下(くだ)らず,承滿[不容の下(しも)一寸,中行を去ること各三寸]・風門[二推の下(しも)脊中を相い去ること各二寸]淺く刺す。

  【注釋】

 ◉『鍼灸聚英』承滿:「主腸鳴腹脹,上氣喘逆,食飲不下,肩息唾血」。

 ◉『鍼灸聚英』風門:「主發背癰疽,身熱,上氣短氣,欬逆胸背痛,風勞嘔吐,傷寒頭項強,目瞑,胸中熱」。


○痰喘息令患人並立兩足以稈自左大指端至右大拇指周廻而裁端以其稗中指一寸切捨分髮端自鼻起垂項稈盡處灸穴男左女右脊骨之際取之予常試得効神也三里[曲池下二寸]

  【訓み下し】

○痰喘息,患人(にん)をして並び立たさしめ,兩足 稈(しべ)を以て,左の大指端(はし)自(よ)り,右の大拇指(おやゆび)に至って,周廻して端を裁(き)って,其の稈(しべ)を以て,中指(ちゆうし)一寸切り捨て,髮の端を分け,鼻自り起こし,項(うなじ)に垂れ,稈(しべ)盡くる處,灸穴。男は左,女は右の脊骨(せぼね)の際に之を取る。予(よ)常に試みるに効を得(う)る,神なり。三里[曲池の下(した)二寸]。

  【注釋】

 ◉『神應經』八穴灸法・足部二穴:「瘡發於足部,則並立兩足令相著,自左大拇趾端至右大拇趾端周廻(自左足大拇趾頭起端,從足際右旋,經左右足踵,右足趾端還至起端處。)以其稈當結喉下,項後雙垂,如頭部法【頭部二穴:……以其稈當結喉下至項後雙垂之,以患人手橫握其端而切去之(以其稈中央當結喉下,兩端左右會於項後,雙垂之。以患人手橫握其兩端之末而斷之,如『針經』一夫之法),其稈斷當處脊中骨上點之。瘡出左者,去中骨半寸灸左;出右者,灸右;出左右者,並灸左右。】」。

 ★手三里:出典未詳。

 ◉『鍼灸重宝記』針灸諸病の治例・痰飲 かすはき:「……三里」。/咳嗽(がいそう) しはぶき せき たぐる:「多く眠るには三里」。

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