2021年9月2日木曜日

解讀『醫家千字文註』072

 072 拔刃腦開投鎗癥銷(蕭韻・平) 28 二十二ウラ

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拔刃腦開、投鎗癥銷。

(太平廣記曰、江淮州郡、火令最嚴、犯者無赦、盖多竹屋、或不慎之、動則千百間,立成煨燼、髙駢鎮淮揚之歳、有術士之家延火燒數千戸、主者録之、即付於法、臨刄謂監刑者曰、某之愆尤、一死何以塞責、然某有薄技、可以傳授一人、俾其救濟後人、死無所恨矣、時駢延待方術之士、恒如飢渇、監刑者即緩之、馳白於駢、駢召入親問之、曰、某無他術、唯善醫大風、駢曰、何以覈之、對曰、但於福田院、選一最劇者可以試之、遂如言、乃置患者於隙室中、飲以乳香酒數升、則懵然無知、以利刃開其腦縫、挑出虫可盈掬長僅二寸、然以膏藥封其瘡、別與藥服之、而更莭其飲食動息之候、旬餘瘡盡愈、纔一月眉鬢已生、肌肉光浮、如不患者、駢禮術士為上客、 又曰、後漢末有人得心腹瘕病、晝夜切痛、臨終敕其子曰、吾氣絶後、可割視之、其子不忍違言、剖之得一銅槍、容數合許、後華佗聞其病而解之、因出巾箱中藥以投鎗、鎗即成酒焉、)


  【訓み下し】

拔刃腦開、投鎗癥銷。(刃【刀】を拔いて腦開き、鎗に投げて癥(しこり)銷(と)く。)

『太平廣記』に曰わく、「江の淮州郡、火の令(とりしまり)最も嚴し。犯す者は赦すこと無し。蓋し竹の屋(いえ)多ければなり。或るいは之を慎まざれば、動(やや)もすれば則ち千百間,立ちどころに煨燼と成る。高駢 淮揚を鎮(まも)る歳、術士の家有り、火を延べて數千戸を燒く。主たる者 之を録(とら)え、即ち法に付す。刄に臨んで刑に監(のぞ)む者に謂いて曰わく、『某(それがし)の愆尤(あやまち)、一たび死して何をか以て責(せめ)を塞がん。然れども某に薄(つたな)き技有り。以て一人に傳授す可し。其れをして後人を救濟せしむれば、死すとも恨む所無し』と。時に駢 方術の士を延待(もてな)すこと、恒に飢え渴くが如し。刑に監(のぞ)む者即(ただ)ちに之を緩(おく)らせ、馳せて駢に白(もう)す。駢召し入れて、親(みずか)ら之を問う。曰わく、『某 他の術無し。唯だ善く大風(癩病)を醫(いや)すのみ』と。駢曰わく、「何を以てか之を覈(しら)べん』と。對(こた)えて曰わく、『但だ福田院に於いて、一(ひとり)の最も劇しき者を選んで、以て之を試みる可し』と。遂に言の如くす。乃ち患者を隙【密?】室の中に置き、飲ましむるに乳香酒數升を以てす。則ち懵然(ぼーっ)として知る無し。利刃【刀?】を以て其の腦の縫いめを開き、虫の盈掬(両手ですく)う可きこと長さ僅かに二寸を挑(は)ね出だす。然して膏藥を以て其の瘡(きず)を封じ、別に藥を與えて之を服(の)ましめ、而して更に其の飲食・動息(起居)の候(とき)を節せしむ。旬(とおか)餘りにして瘡盡(ことごと)く愈え、纔(わず)か一月(ひとつき)にして眉と鬢(もみあげ) 已に生え、肌肉光浮【淨?】し、患(わずら)わざる者の如し。駢 術士に禮して上客(賓客)と為す」。

又た曰わく、「後漢末に人有り、心腹の瘕(しこり)病(やまい)を得て、晝(ひる)も夜も切りきり痛む。終(いのちお)わるに臨んで、其の子に敕(いいつ)けて曰わく、『吾が氣(いき)絶えし後、之(われ)を割きて視る可し』と。其の子 言(ことば)に違(たが)うに忍びず、之を剖(さ)き、一(いっぽん)の銅の槍(やり)を得たり。數合許(ばか)りを容る。後に華佗 其の病を聞きて之を解す。因って巾(ずきん)箱の中の藥を出だし、以て鎗に投ぐ。鎗即(たちま)ち酒と成る」。


 ○刃:『太平廣記』によれば「刀」か。 ○投:扔、擲。 ○鎗:武器名。長柄一端裝有尖銳的金屬頭,可用於刺擊。通「槍」。 ○癥:一種腹中結硬塊的病症。《玉篇.疒部》:「癥,腹結病也」。 ○銷:鎔化金屬。

 ○太平廣記曰:『太平廣記』醫二・高駢:「江淮州郡,火令最嚴,犯者無赦。蓋多竹屋,或不慎之,動則千百間立成煨燼。高駢鎮維揚之歲,有術士之家延火,燒數千戶。主者錄之,即付於法。臨刃,謂監刑者曰。某之愆尤,一死何以塞責。然某有薄技,可以傳授一人,俾其救濟後人,死無所恨矣。時駢延待方術之士,恒如飢渴。監刑者即緩之。馳白於駢。駢召入,親問之。曰:「某無他術,唯善醫大風。駢曰。可以覈之。對曰。但於福田院選一最劇者,可以試之。遂如言。乃置患者於密(密原作隙,據明鈔本改。)室中,飲以乳香酒數升,則懵然無知,以利刀開其腦縫。挑出蟲可盈掬,長僅二寸。然以膏藥封其瘡,別與藥服之,而更節其飲食動息之候。旬餘。瘡盡愈。纔一月,眉鬚已生,肌肉光淨,如不患者。駢禮術士為上客。出《玉堂閒話》」。

 ○江:長江的簡稱。 ○淮州郡:南朝梁置。北齊廢。故治在今河南正陽縣東南。 ○火令:火憲〔預防火災的政令〕。 ○盖:「蓋」の異体字。 ○竹屋:用竹子作材料建造的房屋。亦泛指簡陋的小屋。 ○煨燼:灰燼。 ○髙駢:(821年-887年),字千里。幽州(今北京市)人。祖籍渤海蓚縣(今河北省景縣),先世為山東名門「渤海高氏」。唐朝後期名將、詩人,南平郡王高崇文之孫。 ○鎮:壓制、壓服。鎮守,駐守 [garrison;guard]。 ○淮揚之歳:於乾符六年(879年)冬進升高駢為檢校司徒、揚州大都督府長史、淮南節度副大使知節度事,仍充都統、鹽鐵使,以鎮壓起義軍和主管江淮財賦。 ○術士:法術之士。稱占卜星相和道士一類的人。 ○延:擴展、蔓衍。 ○主者:主管人〔責任者〕。 ○録:逮捕 [arrest; seize]。 ○付於法:謂交付法司論罪。 ○監刑:猶監斬〔監督執行死刑〕。【監斬官】監視處決的官吏。 ○某:我,自稱之詞。 ○愆尤:過失。罪咎。 ○塞責:盡責;補過。抵償過失、抵罪。 ○薄技:粗淺不精的技藝。微小的技能。 ○其:他、他們。用於第三人稱。 ○後人:後世的人。 ○延待:延接,接待。 ○飢渇:腹餓口渴。比喻期望殷切,如飢似渴。 ○緩:延遲。遅らせる。 ○白:告訴。告ぐ。 ○親:本身直接參與處理。 ○他:另外的、別的。 ○大風:病名。麻瘋之類的惡疾。leprosy.『諸病源候論』卷二・風諸候の惡風鬚眉墮落候・諸癩候などは、原因の一つに蟲を求め、「蟲出可治」などという。 ○覈:檢驗、查核。 ○對:回答地位高的人所提的問題或接續他們的說話。 ○福田院:宋代京師所設收養老幼殘疾貧民的救濟院。據『舊唐書』及『唐會要』之記載,於宋代之前,唐代即有‘悲田院’之設立,亦為收容貧困者之用,宋代沿襲其例,然改為福田院。 ○隙室:明鈔本『太平廣記』作「密室」。 ○乳香:橄欖科乳香樹屬,阿拉伯乳香之簡稱,其樹脂也稱為「乳香」,可供藥用。/本名薰陸,為橄欖科常綠喬木的凝固樹脂。因其滴下成乳頭狀,故亦稱乳頭香。為薰香原料,又供藥用。 ○懵然無知:糊裡糊塗,不明事理的樣子。/懵然:糊塗無知的樣子。不明貌。 ○利刃:『太平廣記』作「利刀」。 ○挑:用長形或尖形器具撥動。 ○盈掬:盈匊。一滿把〔一手〕。滿捧。兩手合捧曰匊。 ○膏藥:中醫學上把藥物浸於麻油內,適當時間後再於鍋中煎熬、去渣至濃稠狀。加入黃丹拌勻,離火後等藥物凝固,而放置涼水中去火毒,即成膏藥。使用時先加熱使其軟化,而鋪於布或薄油紙上,再貼上患部。一般膏藥依藥方不同而有行氣、活血或消腫定痛、護肉等作用。亦有將鮮藥搗爛後,攤在紙上而成。 ○瘡:創傷、外傷。 ○莭:「節」の異体字。限制、控制、約束。 ○動息:活動與休息。引申為人的動止起居。 ○候:時間、時令、時節。 ○旬:十天。十日為一旬。 ○纔:僅、只。 ○一月:一個月之間。 ○鬢:近耳旁兩頰上的頭髮。 ○光浮:『太平廣記』作「光淨」。 ○禮:尊敬 [respect]、厚待 [courteous reception]。礼遇する。 ○上客:尊客、貴客。 

 ○又曰:『太平廣記』醫一・華佗:「又後漢末,有人得心腹瘕病,晝夜切痛。臨終,敕其子曰。吾氣絕後,可剖視之。其子不忍違言,剖之,得一銅鎗,容數合許。後華佗聞其病而解之。因出巾箱中藥,以投鎗,鎗即成酒焉。出《志恠》」。

 ○瘕:中醫上指一種腹中結有硬塊的病症。 ○臨終:將死。 ○敕:告誡、命令。 ○氣絶:呼吸停止,死亡。 ○槍:武器名。長棍一端嵌以尖銳的金屬頭,可用以刺擊。/兩頭尖的竹木片,供編籬笆用〔生け垣を編むのに用いる両端の尖った竹木片〕。 ○容:含納。收留。槍は中空で収納スペースがある? ○合:盛放物品的器皿。通「盒」。量詞。表示容量的單位(舊制)。 ○巾箱:古時放置頭巾的小箱子,後亦用以存放書卷、文件等物品。 


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