2021年9月4日土曜日

解讀『醫家千字文註』074

 074 阿是用灸試驗勿嘲(肴韻・平) 29 二十三ウラ

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阿是用灸、試驗勿嘲。

(千金方曰、呉蜀多行灸法、有阿是之法、言人有病痛、即令捏其上、若裏當其處、不問孔穴、即得便快、成痛處即云阿是、皆驗、 新修本草曰、或田舍試驗之法、殊域異識之術、如藕皮散血、起自庖人、牽牛逐水、近出野老、麵店蒜虀、乃下蛇之藥、路邊地菘、為金瘡所祕、)


  【訓み下し】

阿是用灸、試驗勿嘲。(阿是は灸を用い、試驗 嘲(あざけ)る勿かれ。)

『千金方』に曰わく、「呉蜀多く灸法を行なう。阿是の法有り。言うこころは、人に病痛有らば、即ち其の上を捏(ひね)らしめ、若し裏(うち) 其の處に當たらば、孔穴を問わず、即ち便ち快(ここちよ)さを得、痛む處を成す。即ち阿是と云う。皆な驗(ききめ)あり」。 

『新修本草』に曰わく、「或るいは田舍(農家)の試驗(ためし)の法、殊域異識の術、藕(はす)の皮の血を散らすが如きは、庖人(料理人)自(よ)り起こり、牽牛の水を逐いはらうがごときは、近く野老(むらのおきな)に出づ。麵店(そばや)の蒜(にんにく)の虀(調味料)は、乃ち蛇を下すの藥、路邊(みちばた)の地菘は、金瘡(外科医)の祕(かく)す所と為る」。


  【注釋】

 ○阿是:中醫針灸上指以壓痛點最明顯的部位為「阿是穴」。也稱為「天應穴」。○試驗:實際察看某種事物,進而明瞭它的功用。經驗。效驗。 ○嘲:譏笑。

 ○千金方曰:『備急千金要方』巻二十九・灸例第六:「故呉蜀多行灸法,有阿是之法,言人有病痛,即令捏其上,若裏當其處,不問孔穴,即得便快成痛處即云阿是,灸刺皆驗,故曰阿是穴也」。『新雕孫真人千金方』の当該箇所には見えない。

 ○呉:三國之一。三國時期孫權所建。故址據有江、浙、湘、鄂、閩、粵、安南等地。 ○蜀:大陸地區四川省的簡稱。秦時隸屬巴、蜀二郡屬地,故簡稱為「蜀」。 ○即令:即使、縱使〔仮に~だとしても〕。ここでは、この意には取らない。 ○捏:用手指將軟東西搓捻成某種形狀。手でこねてある形に作り上げる。/「掐」の誤字であれば、爪で按(おさ)える・はさむ。 ○裏:內部。「果」の誤字であれば、「果たして」。まことに。案の定。 ○孔穴:腧穴。人身的穴道。人體的穴位。見晉.皇甫謐《針灸甲乙經》,徵引《明堂孔穴針灸治要》。後《千金要方》又載:「凡孔穴在身,皆是臟腑榮衛血脈流通,表裡往來,各有所主」。 ○即得便快、成痛處:「成」が「或」の誤字であれば、「即(も)し便ち快(こころよ)く、或るいは痛む處を得れば」。岡本一抱『鍼灸阿是要穴』は、「得便」を「得使」に作り、「即ち快(こころよ)く成さ使(し)むる痛處を得て」と訓む。/便:順、順利、方便。靈敏、輕巧、敏捷。即、就。 ○阿是:いわれについては、醫者於是在該處周圍摸索,病者呼喊「啊……是這裡,是這裡了」など諸説あり。 ○驗:預期的效果,或與預言相合的事實[produce the expected result;prove effective]。

★千金要方刊行会『備急千金要方』(昭和五十一年、毎日新聞社、下巻五一〇頁)の現代語訳:「このため呉、蜀では多くの灸法が行われ、阿是の法がある。それは人が病んで痛むところがあれば、その上に艾をひねるのである。内部の病原にうまくあたれば、孔穴の有無に拘らず、その痛む箇所がただちに気分よくなるというものである。このため阿是(阿は親しみ深い人につける冠詞。この場合"そのものずばり"といった意味を含む)といわれ、針灸いずれにも効験あらたかである。だから阿是穴といわれるのである」。

「捏」を「艾をひねる」と解している。

 ○新修本草曰:『新修本草』卷一・陶隱居序:「范汪方百餘卷,及葛洪《肘後》,其中有細碎單行徑用者,或田舍試驗之法,〔『証類』有「或」〕殊域異識之術。如藕皮散血,起自庖人;牽牛逐水,近出野老。餅店蒜齏,乃是下蛇之藥;路邊地菘,而為金瘡所秘」。

 ○田舍:農田和房舍。泛指農家或農村。 ○殊域:遠方;異地。 ○藕皮:『證類本草』卷二十三・藕實「陶隱居云、……宋帝時,太官作血䘓[原注:音勘],庖人削藕皮誤落血中,遂皆散不凝,醫乃用藕療血多効也」。 ○庖人:料理人。 ○牽牛:『證類本草』卷十一・牽牛子(けんごし):「療脚滿水腫。……陶隱居云,……此藥始出田野人」。 ○逐水:運用具有峻烈瀉水作用的藥物組方,以攻逐水飲的治法。屬下法。/逐:追い払う。排斥する。 ○野老:居於田野的老人。村野老人。 ○麵店:買賣麵食的地方。 ○蒜:植物名。百合科蔥屬,多年生草本。「大蒜」之簡稱。【大蒜】タイサン。ニンニク。植物名。百合科蔥屬,多年生宿根草本。鱗莖球形至扁球形,外皮膜質,常由多個瓣狀小鱗莖組成,多生於暖地原野間。葉扁平,長線形,有微稜,色多淺綠,氣微臭。繖形花序密具珠芽,間有數花,花被六片,常粉紅色。莖葉皆可食。具有健胃、整腸、趨寄蟲等功效。 ○虀:用來調味的辛辣食物或菜末。同「齏」。細切的鹹菜、醬菜。 ○蛇:ここでは寄生虫の意か。 ○邊:兩旁。 ○地菘:蟾蜍蘭の別名。多年生草本。亦名天蔓菁、天門精、地菘、玉門精、麥句姜。果實名鶴虱,根名杜牛膝。主治の一つは「疔瘡腫毒。用地菘葉和酒糟一起,搗爛敷患處」。 ○金瘡:刀劍等金屬器械所造成的傷口。切り傷。ここでは「金瘡医(外科医)」のことであろう。 ○祕:「秘」の異体字。不可知、不讓人知或不公開的。

 ★『本草綱目』卷三十三・果部・蓮藕・藕・發明。ハス。

 ★『本草綱目』卷十八上・草部・牽牛子。アサガオ。

 ★『本草綱目』卷二十六・菜部・蒜。


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