2025年5月13日火曜日

『歷代名醫蒙求』011-2

    名醫録周顯德中京都有醫士沈道恭幼

    習儒業自量分薄留心醫術時㑹史令公

    族有患者國醫名手俱不効有人薦言沈

    道恭請醫之道恭畏令公威勢又聞先約

    賜錢三千緍兼有奏恩道恭靣詣薦者訴 

    曰醫不憚固命薄恐爲厚賂之所障未審

    更欲募何人治之薦者曰惟周德濟也道

    恭曰聞周德濟素無醫業惟德濟得好命

    耳幸同召之道恭與診處推究病因特令

    德濟用藥後果如効蓋非在學亦由命之

    所然也

    

 【訓み下し】011-2

    『名醫錄』:周の顯德中,京都に醫士の沈道恭有り。幼くして儒業を習うも,自ら分の薄きを量って,心を醫術に留む。時に會々(たまたま)史令公の族に患う者有り。國醫・名手 俱に効あらず。人有り薦めて沈道恭に言って,之を醫(い)やさんことを請う。道恭 令公の威勢を畏る。又た先に賜を約すること錢三千緡,兼ねて恩を奏すること有るを聞く。道恭 薦むる者に面詣して,訴えて曰わく,「醫(い)やすこと/醫(われ)/ 固(もと)より命薄きを憚らざるも,厚き賂の障ぐる所と爲るを恐る。未だ更に何人(なにびと)を募って之を治せんと欲するを審らかにせず」。薦むる者曰わく,「惟(た)だ周德濟のみ」。道恭曰わく,「聞くならく,周德濟は素より醫の業無し,惟だ德濟 好き命を得るのみ,と。幸(ねが)わくは同(とも)に之を召さんことを」。道恭 診する處を與(とも)にし,病因を推し究む。特(ひと)り德濟をして藥を用いしむ。後に果して効あるに如(いた)る。蓋し學に在るに非ず,亦た命の然る所に由るなり。

    

  【注釋】011-2

 ○名醫録:008-1を参照。なお,022-2にも同じ内容が見える。 ○周:後周。(西元951~960)五代諸朝之一。郭威滅後漢所建,國號周,都開封。恭帝時,被大將趙匡胤逼迫讓位。史稱為「後周」。 ○顯德:五代後周太祖及世宗的年號(西元954~959)。 ○京都:京師。京城、國都。 ○醫士:醫生。 ○沈道恭:五代後周醫生。幼習儒業,留心醫術,顯德(954-959)年間以醫術名聞於京都。  ○儒業:儒家的學說。指儒學,儒家經學。謂讀書應舉之業。元.關漢卿《竇娥冤.楔子》:「幼習儒業,飽有文章。」 ○自量:度量己力。估計自己的才能和力量。 ○分:構成事物的不同的物質或因素:成~。天~(天資)。 ○薄:不厚的。輕微的。微小,少 [small]。 ○留心:注意、小心。關注;關心。 ○㑹:「會・会」の異体字。適、值。恰好,正好。 ○史:史宏肇か。『舊五代史』卷一百七 漢書九 列傳四:「史宏肇,字化元……周太祖平河中班師,推功於眾,以宏肇有翊衞鎮重之功,言之於隱帝,即授兼中書令」。 ○令公:對中書令的尊稱。 ○族:親屬。如:「家族」。 ○國醫:國內最傑出的醫生。指御醫。舊時宮庭的御醫。 ○名手:以技藝高超而著名的人。 ○効:「效」の異体字。功用。徵驗。 ○薦言:用言詞推薦。 ○賜:上級賞給下級的恩惠或財物。 ○緍:「緡」の異体字。成串的錢。022-2作「緡」。 ○靣:「面」の異体字。見、相見。當面。 ○詣:拜訪、進見上級或長輩。到、前往。 ○醫:治療する。自称か。 ○不憚:不怕、不畏懼。 ○命薄:命運不好。高貴な人の治療に失敗して,自分の生命に危険が及ぶこと,と解するか。 ○未審:002-2にこの2字なし。 ○何人:什麼人。どういう人。いかなる人。 ○惟:思考、思量。是、為。有。僅、獨、只有。希望、祈使。發語詞,無義。通「唯」、「維」。則。以、因為。 ○業:社會上的各種工作職務。如:「農業」、「商業」。學習的內容或過程。功績。 ○推究:審問查究。推求研究。推論研究。 ○後果:由於某種原因、行為而產生的最後的結果。 ○如:順從、依照。往、至。 ○効:「效」の異体字。摹仿。致送、奉獻。功用。 

     ○『醫說』卷五・癥瘕・米瘕:「乾德中,江浙間有慎道恭者,肌瘦如勞,唯好食米,闕之則口中清水出,情似憂思,食米頓便如常。衆醫不辯。後遇蜀僧道廣,處方以雞屎及白米各半合,共炒為〔一作「如」〕末,以水一中盞調,頓服。良久,病者吐出如米形,遂差。『病源』謂米瘕,是也」。


識典古籍*******************************************************

《名醫錄》:周顯德中,京都有醫士沈道恭,幼習儒業,自量分薄,留心醫術。

    【AI譯文】

《名医录》记载:周显德年间,京城有个医士叫沈道恭,他小时候学习儒家经典,自己估量自己的天分不足,于是留心医术。

    【AI 1】『名医録』には次のように記されている。周顕徳年間、京城に沈道恭という医師がいた。彼は幼少の頃、儒学を学んでいたが、自らの才能の限界を感じ、医学の道に専念することを決意した。

    【AI 2】『名医録』にはこう記されています。周顕徳年間、京城に沈道恭(しんどうきょう)という医士がいた。彼は幼い頃に儒教の経典を学んでいたが、自らの才能に限界を感じ、医術に心を傾けるようになった。

時會史令公族有患者,國醫名手俱不效。

    【AI譯文】

当时正赶上史令公家族中有患病的人,国内的名医高手都没能治好(病)。

    【AI 1】その頃、史令公の一族に病人が出たが、国内の名医たちが治療を試みても効果はなかった。

    【AI 2】ちょうどその頃、重臣・史令公の一族に重病人が出て、国内の名医たちが治療を試みたものの、誰も治すことができなかった。

有人薦言沈道恭請醫之。

    【AI譯文】

有人推荐说沈道恭能治病,于是就请他来。

    【AI 1】そこで、沈道恭が病を治せるのではないかと推薦され、彼が呼ばれることとなった。

    【AI 2】そこで、誰かが「沈道恭なら治せるかもしれない」と推薦し、彼が呼ばれることとなった。

道恭畏令公威勢,又聞先約賜錢三千緍,兼有奏恩。

    【AI譯文】

沈道恭畏惧令公的威势,又听说之前约定的三千缗赏赐,还有奏请皇上恩赐的事情。

    【AI 1】沈道恭は令公の威勢を恐れ、さらに約束された三千緡の謝礼や、皇帝への奏請があることを聞き、不安を抱いた。

    【AI 2】沈道恭は、令公の威光を恐れていた上に、治療の見返りとして約束された三千缗(銭)もの褒賞や、さらには皇帝からの恩賜を受けるという話まで耳にしていたため、不安を感じていた。

道恭面詣薦者,訴曰:“醫不憚固命薄,恐爲厚賂之,所障未審,更欲募何人治之?”

    【AI譯文】

道恭亲自面见推荐的人,诉说:‘医生不怕我的命薄,只怕是被丰厚的贿赂所蒙蔽,不能清楚地诊断病情,现在更想招募什么人来为我治病?’

    【AI 1】彼は推薦者にこう語った。「医者が恐れるのは命運が尽きることではなく、厚い贈り物によって判断を曇らせ、病状を正しく診断できなくなることだ。今、本当に私に頼るべきなのか?」

    【AI 2】道恭は推薦してきた人物に直接こう訴えた。「医者は命の短さを恐れはしない。ただ恐れるのは、高すぎる報酬に心が曇り、病状を正しく見抜けなくなることです。今はむしろ、私の病気を治してくれる人を探したいくらいです。」

    ★原文の句讀,また【AI譯文】の「为我治病」という訳には,問題があると思う。「道恭面詣薦者,訴曰:醫不憚固命薄,恐為厚賂之所障。未審更欲募何人治之?」をAIが直接日本語に訳した例:道恭は推薦者のもとへ直接赴き、訴えた。「医者は命が薄いからといって恐れることはない。ただ、厚い賄賂によって治療が妨げられるのではないかと懸念している。まだ障害がはっきりしないが、さらに誰を募って治療を任せるつもりなのか?」

薦者曰:“惟周德濟也。”

    【AI譯文】

推荐的人说:‘只有周德济(合适)。’

    【AI 1】推薦者は答えた。「適任なのはただ一人、周徳済です。」

    【AI 2】すると推薦者は言った。「それならば、周徳済(しゅうとくさい)という人物が最適です。」

道恭曰:“聞周德濟素無醫業,惟德濟得好命耳,幸同召之。”

    【AI譯文】

道恭说:‘听说周德济向来没有从医的经历,只是他有好运气罢了,希望(皇上)一同召见他。’

    【AI 1】沈道恭は言った。「周徳済は医術の経験がないと聞く。ただ運が良いだけではないのか?それなら皇帝とともに彼を召してほしい。」

    【AI 2】沈道恭はこう返した。「聞くところによれば、周徳済は医術の経験がまったくない。ただ運が良いだけの男ではないかと思います。それなら皇帝の前で一緒に診察させていただきたい。」

道恭與診處,推究病因,特令德濟用藥。

    【AI譯文】

沈道恭与他一起诊断,推究病因,特意让周德济来用药。

    【AI 1】こうして、沈道恭は周徳済と共に診断を行い、病因を突き止め、治療を周徳済に任せた。

    【AI 2】その後、沈道恭と周徳済は共に診察を行い、病因を詳しく究明した。そして薬の処方はあえて周徳済に任せた。

後果如效,蓋非在學,亦由命之所然也。

    【AI譯文】

后来果然像他所预测的那样,大概这不是因为学业,也是命中注定的。

    【AI 1】その結果、彼の予測通りの展開となった。これは医術の賜物ではなく、まさに天命であったと言えるだろう。

    【AI 2】果たして治療は沈道恭の予測通りに功を奏した。これは単なる学問の力だけでなく、運命の力でもあったのだろう。

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