2025年5月26日月曜日

『歷代名醫蒙求』018-1

 鵲識骨髓  緩知膏肓  鵲は骨髓を識り  緩は膏肓を知る (扁鵲・和緩)

    史記扁鵲渤海郡鄭人也姓秦氏名越人

    少時爲人舍長舍客長桑君過扁鵲獨

    竒之常謹遇之長桑君乃悉取其禁方書

    盡與扁鵲扁鵲過齊齊桓侯客之入朝

    見曰君有疾在腠理不治將深桓侯曰寡

    人無疾扁鵲出桓侯謂左右曰醫之好利

    也欲以不疾者爲功後五日扁鵲𠋩見曰 

    君有疾在血脈不治恐深桓侯曰寡人無

    疾扁鵲出桓侯不悅後五日扁鵲𠋩見望

    見桓侯而退走桓侯使人問其故扁鵲曰

    疾之居腠理也湯熨之所及也在血脈鍼

    石之所及也其在腸胃酒醪之所及也其

    在骨髓雖司命無柰之何今在骨髓臣是

    以無請也後五日桓侯體病使人召扁鵲

    扁鵲已逃去桓侯遂死

    

  【訓み下し】018-1

    『史記』扁鵲は渤海郡鄭の人なり。姓は秦氏,名は越人。少(わか)き時 人の舍長と爲る。舍の客 長桑君過(よぎ)る。扁鵲 獨り之を奇とし,常に謹んで之を遇す。長桑君 乃ち悉く其の禁方の書を取って,盡く扁鵲に與う。扁鵲 齊に過(よぎ)る。齊の桓侯 之を客とす。朝に入って見(まみ)えて曰わく,「君に疾(やまい)有り腠理に在り。治せずんば,將に深まらんとす」。桓侯曰わく,「寡人に疾無し」。扁鵲 出づ。桓侯 左右に謂って曰わく,「醫の利を好むや,疾(や)まざる者を以て功を爲さんと欲す」。後の五日,扁鵲 復た見(まみ)ゆ。曰わく,「君に疾有り,血脈に在り。治せずんば,恐らくは深まらん」。桓侯曰わく,「寡人に疾(やまい)無し」。扁鵲 出づ。桓侯 悅ばず。後の五日,扁鵲 復た見(まみ)え,桓侯を望み見て退ぎ走りさる。桓侯 人をして其の故を問わしむ。扁鵲曰わく,「疾(やまい)の腠理に居るは,湯熨の及ぶ所なり。血脈に在るは,鍼石の及ぶ所なり。其の腸胃に在るは,酒醪の及ぶ所なり。其の骨髓に在るは,司命と雖も,之を柰何(いかん)ともする無し。今ま骨髓に在り。臣 是こを以て請う無きなり。後の五日,桓侯 體 病む。人をして扁鵲を召さしむも,扁鵲 已に逃げ去り,桓侯 遂に死す。


  【注釋】018-1

 ○史記:003を参照。 ○扁鵲:【史記正義】黃帝八十一難序云:「秦越人與軒轅時扁鵲相類,仍號之為扁鵲。又家於盧國,因命之曰盧醫也。」 ○渤海郡:漢置。今直隸河間縣以東至滄縣。北至京兆安次縣。南至山東無棣縣。皆其地。治浮陽。在今滄縣。後漢移治南皮。故城在今直隸南皮縣東北八里。 ○鄭人也:【史記集解】徐廣曰:「『鄭』當為『鄚』。鄚,縣名,今屬河閒。」 【史記索隱】案:勃海無鄭縣,當作鄚縣,音莫,今屬河閒。 ○爲人舍長:【索隱】為舍長。劉氏云:「守客館之帥。」【正義】長音丁丈反。 ○長桑君:【索隱】隱者,蓋神人。 ○過:【正義】過音戈。 ○齊桓侯客之:【集解】傅玄曰:「是時齊無桓侯。」駰謂是齊侯田和之子桓公午也。【索隱】案:傅玄曰「是時齊無桓侯」。裴駰云「謂是齊侯田和之子桓公午也」。蓋與趙簡子頗亦相當。 ○腠理:【正義】上音湊,謂皮膚。 ○寡人:寡德的人。古代國君自稱的謙詞。古代君主的謙稱。 ○左右:稱跟從的侍者為「左右」。近臣;侍從。 ○𠋩:「復」の異体字。 ○司命:神名。掌管生命的神。 ○柰之何:【柰何】同“奈何”。如何,怎樣。

     ○『史記』扁鵲倉公列傳:扁鵲者,勃海郡鄭人也,姓秦氏,名越人。少時為人舍長。舍客長桑君 過,扁鵲獨奇之,常謹遇之。 長桑君……乃悉取其禁方書盡與扁鵲。……扁鵲過齊,齊桓侯客之。入朝見,曰:「君有疾在腠理,不治將深。」桓侯曰:「寡人無疾。」扁鵲出,桓侯謂左右曰:「醫之好利也,欲以不疾者為功。」後五日,扁鵲復見,曰:「君有疾在血脈,不治恐深。」桓侯曰:「寡人無疾。」扁鵲出,桓侯不悅。後五日,扁鵲復見,曰:「君有疾在腸胃閒,不治將深。」桓侯不應。扁鵲出,桓侯不悅。後五日,扁鵲復見,望見桓侯而退走。桓侯使人問其故。扁鵲曰:「疾之居腠理也,湯熨之所及也;在血脈,鍼石之所及也;其在腸胃,酒醪之所及也;其在骨髓,雖司命無柰之何。今在骨髓,臣是以無請也。」後五日,桓侯體病,使人召扁鵲,扁鵲已逃去。桓侯遂死。

    

識典古籍*******************************************************

《史記》:扁鵲,渤海郡鄭人也,姓秦氏,名越人。少時爲人舍長。舍客長桑君過,扁鵲獨奇之,常謹遇之。

    【AI譯文】

《史记》记载:扁鹊是渤海郡郑地的人,姓秦,名叫越人。他年轻的时候做过客馆主事。有一个名叫长桑君的客人住在客馆,只有扁鹊认为他是一个奇人,对他一直非常恭敬。

    【AI 1】『史記』には次のように記されている。扁鵲は渤海郡鄭の出身で、姓は秦、名は越人。若い頃、旅館の管理をしていた。ある日、長桑君という客が宿泊し、扁鵲だけが彼の異才に気づき、深く敬意を払った。

    【AI 2】以下は『史記・扁鵲倉公列伝』に記された、名医**扁鵲(へんじゃく)**に関する逸話の現代日本語訳です。扁鵲は渤海郡鄭地の出身で、**姓は秦、名は越人(えつじん)**という。若い頃は宿屋の管理をしていた。ある日、長桑君(ちょうそうくん)という名の客が宿泊し、扁鵲だけがその人物をただ者ではないと感じ、常に非常に丁寧にもてなした。

長桑君乃悉取其禁方書盡與扁鵲。

    【AI譯文】

长桑君于是把自己所有的秘方书籍都拿出来送给了扁鹊。

    【AI 1】長桑君はこれを喜び、自らの秘伝の医書をすべて扁鵲に授けた。

    【AI 2】長桑君はその礼に応じ、自分の持つすべての秘伝の医術書を扁鵲に授けた。

扁鵲過齊,齊桓侯客之,入朝見,曰:“君有疾在腠理,不治將深。”

    【AI譯文】

扁鹊到齐国去,齐桓侯把他当作客人招待。扁鹊入朝拜见齐桓侯,说:‘您的疾病在皮肤和肌肉之间的纹理里,如果不医治将会加重。’

    【AI 1】扁鵲はその後、斉国へ赴き、斉桓侯に客人としてもてなされた。ある日、扁鵲は斉桓侯にこう申し上げた。「君の病は皮膚と筋肉の紋理にあり、今治療しなければ悪化するでしょう。」

    【AI 2】その後、扁鵲は斉の国へ赴き、**斉桓侯(せいかんこう)**から賓客として遇された。あるとき扁鵲が朝廷に参上し、斉桓侯にこう告げた。「あなたの病は、皮膚と筋肉の間にあります。今のうちに治療しなければ、さらに深刻になります。」

桓侯曰:“寡人無疾。”

    【AI譯文】

齐桓侯说:“我没病。”

    【AI 1】しかし斉桓侯は答えた。「私は病気ではない。」

    【AI 2】斉桓侯はそれを聞いて言った。「私は病など患っておらぬ。」

扁鵲出,桓侯謂左右曰:“醫之好利也,欲以不疾者爲功。”

    【AI譯文】

扁鹊出宫后,齐桓侯对身边人说:“医者贪财好利,他这是想把没病的人当成自己的功劳。”

    【AI 1】扁鵲が宮廷を辞した後、斉桓侯は側近に、「医者は利益を求めるものだ。病を作り上げて治すことで名を上げようとしている。」と言った。

    【AI 2】扁鵲が去ったあと、桓侯は側近たちに言った。「医者というものは金儲けに目がない。健康な者を病人に仕立てて、自分の手柄にしようとしているのだ。」

後五日,扁鵲復見,曰:“君有疾在血脈,不治恐深。”

    【AI譯文】

五天后,扁鹊又去见齐桓侯,说:“您的病在血液和经脉之中,如果不及时治疗,病就会发展得更加严重。”

    【AI 1】五日後、扁鵲は再び斉桓侯を訪れ、「病は血脈に進行しています。治療しなければ、より深刻になります。」と進言したが、

    【AI 2】五日後、扁鵲は再び桓侯に面会して言った。「今や病は血脈に入りました。早く治療しなければ、病はさらに悪化します。」

桓侯曰:“寡人無疾。”

    【AI譯文】

齐桓侯说:“我没病。”

    【AI 1】「私は病気ではない。」

    【AI 2】斉桓侯は言った:「私は病気ではない。」

扁鵲出,桓侯不悅。

    【AI譯文】

扁鹊出宫后,齐桓侯更不高兴了。

    【AI 1】扁鵲が宮廷を辞した後、斉桓侯はますます不機嫌になった。

    【AI 2】扁鵲が宮殿を出たあと、斉桓侯はますます不機嫌になった。

後五日,扁鵲復見,望見桓侯而退走,桓侯使人問其故。

    【AI譯文】

五天后,扁鹊再次拜见,远远望见桓侯就转身跑掉了,桓侯派人问他原因。

    【AI 1】さらに五日後、扁鵲は遠くから斉桓侯の姿を見るや否や、何も言わずに逃げ去った。驚いた斉桓侯は使者を送り、理由を問いただした。

    【AI 2】さらに五日後、またもや扁鵲が朝廷に来たが、今度は遠くから桓侯の姿を見るなり、何も言わず逃げ去った。不審に思った桓侯は人を遣って理由を尋ねさせたところ、

扁鵲曰:“疾之居腠理也,湯熨之所及也;在血脈,鍼石之所及也;其在腸胃,酒醪之所及也;其在骨髓,雖司命無柰之何。

    【AI譯文】

扁鹊说:“病在皮肤和肌肉之间,用汤药和药膏可以治好;病在血液和经脉之中,用针灸和砭石可以治好;病在肠胃之中,用药酒可以治好;病在骨髓之中,就算是掌管性命的神仙也没有办法了。

    【AI 1】扁鵲はこう言った。「病が皮膚と筋肉にあるときは、湯薬や膏薬で治せます。血脈にある場合は、鍼灸や砭石が有効です。腸胃に及ぶと、薬酒が適しています。しかし、病が骨髄にまで達したときは、天命を司る神でも手の施しようがありません。

    【AI 2】扁鵲はこう答えた。「病が皮膚と筋肉の間にある時は、湯薬や外用薬で治すことができます。血脈に入れば、鍼灸や石針で治すことができます。胃腸に達すれば、薬酒で治せます。しかし、病が骨髄にまで入り込んだなら、もはや神でも手の施しようがありません。

今在骨髓,臣是以無請也。”

    【AI譯文】

现在国君的病已经深入骨髓,所以我没有和他讲话就跑了。”

    【AI 1】今や君の病は骨髄にまで侵されている。だから、何も言わずに立ち去ったのです。」

    【AI 2】今、国君の病はすでに骨髄に達しており、だから私はもう何も言わず立ち去ったのです。」

後五日,桓侯體病,使人召扁鵲,扁鵲已逃去,桓侯遂死。

    【AI譯文】

过了五天,蔡桓侯身体患病,派人去召请扁鹊,扁鹊已经逃走了,蔡桓侯于是就死了。

    【AI 1】さらに五日が過ぎると、斉桓侯はついに病に倒れ、慌てて扁鵲を呼ぼうとした。しかし、その時すでに扁鵲は遠く逃げ去っており、斉桓侯はそのまま命を落とした。

    【AI 2】そしてさらに五日が過ぎ、斉桓侯はついに発病した。急いで扁鵲を呼び戻そうとしたが、すでに扁鵲は国を去っていた。そのまま、斉桓侯は死んでしまった。


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