2025年5月17日土曜日

『歷代名醫蒙求』013-2

     宋書宋少主元徽出樂遊苑門逢一婦人

    有娠元徽善診脉爲診之曰此腹是女也

    問徐文伯文伯曰腹有兩子一男一女男

    在左邊青黒色形小於女元徽性急便欲

    使剖文伯惻然曰若加斤斧恐其變異請

    針之立落瀉足太陽補手陽明胎便應針

    而落兩兒相續出果如文伯之言

    

    【訓み下し】013-2

    『宋書』:宋の少主元徽,樂遊苑門を出で,一婦人の娠有るに逢う。元徽 診脉を善くす。爲に之を診て曰わく,「此の腹是れ女なり」。徐文伯に問う。文伯曰わく,「腹に兩子有り,一男一女,男は左邊に在り,青黑き色,形は女より小さし」。元徽 性急にして,便ち剖(さ)かしめんと欲す。文伯 惻然として曰わく,「若し斤斧を加うれば,其の變異を恐る。請う之に針して立ちどころに落さんことを」。足の太陽を瀉し,手の陽明を補す。胎便ち針に應じて落つ。兩兒相い續き出づること,果して文伯の言の如し。

    

  【注釋】013-2

 ○宋書:012を参照。正史の『宋書』には見えないようである。 ○少主:年輕的君主。 ○元徽:南北朝時代,南朝宋の後廃帝劉昱の治世に行われた年号。473年~477年。ここでは劉昱のこと。劉昱(463年~477年),字德融,小字慧震,宋明帝長子,南朝宋第八位皇帝。廃帝(廃位されたため,諡号や廟号を持たない皇帝)で,その残虐な性格を物語る逸話が多い。 ○樂遊苑:在江蘇江寧縣東北。〔宋書禮志〕晉立北郊在覆舟山南。太祖以其地爲樂遊苑。 ○診脉:中醫按觸人體不同部位的脈搏,體察脈象變化,以診察疾病的方法。為切診之一種。又稱切脈、診脈、按脈、持脈。 ○爲:替、給。…のために。對、向。 ○徐文伯:南北朝時北齊醫家。字德秀。祖籍東莞姑幕(今山東諸城),寄籍丹陽(今江蘇南京)。父有醫名,少承家傳,醫道日精。撰有《徐文伯藥方》三卷,及《徐文伯療婦人瘕》一卷,均佚。子徐雄,傳其學。 ○於:比,置於形容詞之後,表示比較。《禮記.檀弓下》:「苛政猛於虎也。」 ○性急:性情急躁。 ○剖:破開。如:「剖腹」、「解剖」。 ○惻然:悲傷的樣子。哀憐貌。 ○斤斧:斧頭。/斤:一種砍樹用的器具。《孟子.梁惠王上》:「斧斤以時入山林,材木不可勝用也。」【斧斤】斤,刀。「斧斤」指刀斧。 ○變異:發生意外的變化。 ○落:脫落、凋墜。墮落〔把胎兒打掉〕。堕胎。 ○瀉:瀉法是泛指能疏泄病邪使亢進的功能恢復正常的方法。 ○足太陽:黄龍祥の「經脈穴」說によれば,京骨穴。 ○補:補法是泛指能鼓舞人體正氣,使低下的功能恢復旺盛的方法。 ○手陽明:黄龍祥の「經脈穴」說によれば,合谷穴。 

     ○『南史』卷三十二 列傳第二十二/張邵/徐文伯:「宋後廢帝出樂遊苑門,逢一婦人有娠,帝亦善診,診之曰:「此腹是女也。」問文伯,曰:「腹有兩子,一男一女,男左邊,青黑,形小於女。」帝性急,便欲使剖。文伯惻然曰:「若刀斧恐其變異,請針之立落。」便寫足太陰,補手陽明,胎便應針而落。兩兒相續出,如其言。」

     ○『太平御覽』方術部三・醫二:又,宋後廢帝出樂游苑門,逢一婦人有娠,帝亦善診脈,為診之,曰:「此腹是女也。」問文伯,文伯曰:「腹有兩子,一男一女。男左邊青黑,形小於女。」帝性急,便欲使剖。文伯惻然,曰:「若加刀斧,恐其變異,請針之,立落。」便瀉足太陰,補手陽明,胎便應針而落,兩兒相續出,如其言。

    

識典古籍*******************************************************

    《宋書》:宋少主元徽出樂遊苑門,逢一婦人有娠。元徽善診脉,爲診之曰:“此腹是女也。”

    【AI譯文】

《宋书》记载:宋少帝元徽年间,皇帝出乐游苑门,遇到一个怀孕的妇女。元徽擅长诊脉,(他)为(她)诊脉后说:“这个腹中的胎儿是女孩。”

    【AI 1】『宋書』には次のように記されている。宋少帝元徽の治世、皇帝が楽遊苑の門を出た際、ある妊婦と出会った。元徽は診脈に長けており、彼女の脈を診た後、「腹中の胎児は女の子だ。」と告げた。

    【AI 2】『宋書』にはこう記されています。宋の少帝・元徽(げんき)年間のこと。ある日、皇帝が楽游苑の門から出た際、妊婦に出会った。元徽は脈診に長けており、その女性の脈を診た後にこう言った。「この胎内の子は女の子だ。」

問徐文伯,文伯曰:“腹有兩子,一男一女,男在左邊,青黑色,形小於女。”

    【AI譯文】〔★主語を元徽(=皇帝)一人ではなく,複数(他们)に解した理由は何か?皇帝と元徽の二人と理解したのか?〕

(他们)询问徐文伯,徐文伯说:‘腹中有两个孩子,一男一女,男孩在左边,青黑色,形体比女孩小。’

    【AI 1】しかし、その後、徐文伯に確認すると、「胎内には二人の子がいる。一人は男児で、もう一人は女児だ。男児は左側にいて、青黒い色をしており、体は女児よりも小さい。」と説明した。

    【AI 2】その場にいた人々はさらに徐文伯(じょぶんぱく)にも診察を求めた。すると徐文伯はこう言った。「この女性の腹の中には二人の子がいます。一人は男児、一人は女児です。男の子は左側にいて、青黒く、女児よりも体が小さい。」

元徽性急,便欲使剖,文伯惻然曰:“若加斤斧,恐其變異,請針之,立落。”

    【AI譯文】

元徽性子急躁,就想让人(把瘤子)割开,徐文伯悲伤地说:“如果用刀斧(割开),恐怕它(瘤子)会发生异常变化,请让我用针(来治疗),(瘤子)马上就能掉落。”

    【AI 1】元徽は焦燥し、腫瘍を切開させようとしたが、徐文伯は悲しげにこう言った。「もし刀斧で切開すれば、病状が悪化するかもしれません。どうか私に鍼を打たせてください。すぐに腫瘍は消えるでしょう。」

    【AI 2】元徽は性格がせっかちだったため、「すぐに腹を割いて取り出させよう」と言い出した。それを聞いた徐文伯は悲しげに言った。「刀斧(メス)で切れば、おそらく胎児に異変が起こるでしょう。どうか私に針を使わせてください。すぐに胎が自然に下りてくるはずです。」

瀉足太陽補手陽明,胎便應針而落,兩兒相續出,果如文伯之言。

    【AI譯文】

于是针刺泻足太阳经的穴位,补手阳明经的穴位,胎盘果然就顺利娩出了,两个胎儿相继出生,果然和徐文伯所说的一样。

    【AI 1】彼は足の太陽経のツボを瀉し、手の陽明経のツボを補った。その結果、胎盤は順調に排出され、二人の子が次々に生まれた。まさに徐文伯の診断通りであった。

    【AI 2】そうして徐文伯は、**足の太陽経(足太陽膀胱経)**の経穴に刺して「瀉(しゃ)」を行い、**手の陽明経(手陽明大腸経)**の経穴には「補(ほ)」を施した。その結果、胎盤が順調に下り、二人の赤ん坊が無事に生まれた。その性別や位置も、まさに徐文伯の言った通りであった。

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