2025年8月25日月曜日

『歷代名醫蒙求』052-1

 鉸匠鈐蛇 術士挑蟲  鉸匠は蛇を鈐し 術士は蟲を挑(よ)る (釘鉸匠・術士)

    玉堂閑話近朝中書舍人于遘甞中蠱毒 

    醫治無門遂長告漸欲逺適尋醫一日策

    杖坐于中門之外忽有釘鉸匠見之問曰

    何苦而羸𦬼如是于即爲陳之匠曰某亦

    曾中此遇良工爲某鈐出一蛇而愈某亦

    傳得其術遘欣然且祈之彼曰此細事耳

    來早請勿食某當至矣翊日果至請遘向 

    明張口執鈐俟之一夾而中其蛇已及二

    寸許赤色麁如釵服矣遽命火焚之遘遂 

    愈匠不受遺但云某有誓救人唯引數觴

    而別

    

    【訓み下し】052-1

    『玉堂閑話』:近朝の中書舍人 于遘 嘗て蠱毒に中(あ)たり,醫治に門無し。遂に長(ながきいとま)を告げ,漸く遠くに適(ゆ)き醫を尋ねんと欲す。一日,杖に策(たよ)って中門の外に坐す。忽ち釘鉸匠有って之を見る。問いて曰わく,「何をか苦しんで羸苶すること是(か)くの如きか」。于 即ち爲に之を陳ぶ。匠曰わく,「某(それがし)も亦た曾て此れに中たる。良工に遇って,某の爲に一蛇を鈐(お)さえ出だして愈えり。某も亦た其の術を傳え得たり」。遘 欣然として,且(まさ)に之を祈(もと)めんとす。彼曰わく,「此れ細事のみ。來たること早くし,食らうこと勿からんことを請う。某 當に至るべし」。翌日果して至る。遘に明(ひ)に向かって口を張り,鈐を執って/執鈐して/之を俟つを請う。一たび夾(はさ)んで中たる。其の蛇已に二寸許(ばか)りに及ぶ。赤き色,麤(ふと)きこと釵服【股】の如し。遽かに命じて火もて之を焚かしむ。遘 遂に愈えり。匠 [贈]遺を受けず,但だ「某 誓い有って人を救う」と云うのみ。唯だ數觴を引くのみにして別る。

    

  【注釋】052-1

 ○玉堂閑話:044を参照。 ○近朝:指距今不遠的時代。 ○中書舍人:職官名。中書省的屬官。西晉初設置,歷代名稱和職務不盡相同,南朝時掌起草詔令,參與機密,決斷政務;隋時主管詔令;唐時掌管詔令、侍從、宣旨和接納上奏文表等事;宋時主管中文書,起草有關詔令。/中書:中書省的簡稱。中書省:古代掌理國內機要大事的官署。魏、晉始設,歷代沿置,唐武后時曾改為鳳閣,明洪武十三年廢。各代名稱不一,職掌、組織亦略不同。簡稱為「中書」。 ○甞:「嘗」の異体字。 ○蠱毒:蠱蟲之毒。害人的毒餌。指毒藥。 ○無門:沒有門戶;沒有門路。 ○長告:舊時官吏告請長假。常用為辭職的婉辭。 ○逺:「遠」の異体字。 ○適:往、至。 ○一日:表示過去的某一天。 ○策杖:扶杖。拄杖。也稱杖策。/策:枴扙。扶、拄。 ○中門:內、外門之間的門。正中的大門。 ○釘鉸:指洗鏡、補鍋、鋦碗等。 ○羸𦬼:同「羸薾」。瘦弱疲憊。/羸:瘦弱。疲憊。/𦬼:「苶・薾」の異体字。疲倦、疲累。 ○鈐:管束、鎮壓。 ○欣然:喜悅貌。 ○祈:請、求。 ○細事:小事。瑣碎的小事。 ○翊日:明日、次日。/翊:「翌」の異体字。 ○向明:向陽。 ○張口:張開嘴巴。開口。表示說話、要求、飲食、唱歌等。 ○鈐:鎖、關鍵。烘茶葉的器具。管束、鎮壓。 ○夾:從相對的兩方使力,使中間的物體受鉗而不動。 ○麁:「麤・粗」の異体字。 ○釵:舊時婦女頭上所戴的首飾。形似叉,以金玉製成。 ○服:『太平廣記』作「股」。【釵股】謂釵歧出如股。常用以形容花葉的枝杈。國畫中畫墨竹之枝,稱直枝為「釵股」。畫竹法中稱竹之直枝。 ○焚:燒。 ○遺:『太平廣記』作「贈遺」。【贈遺】贈送,贈給。贈與。亦指贈送的財物。 ○引:承受。 ○觴:酒杯、酒器。【引觴】持杯。 

     ○『太平廣記』醫二・于遘:近朝中書舍人于遘。嘗中蠱毒。醫治無門。遂長告,漸欲遠適尋醫。一日,策杖坐于中門之外。忽有釘鉸匠見之。問曰。何苦而羸苶如是。于即為陳之。匠曰。某亦曾中此,遇良工。為某鈐出一蛇而愈。某亦傳得其術。遘欣然,且祈之。彼曰。此細事耳,來早請勿食,某當至矣。翊日果至。請遘於舍簷下,向明張口。執鈐俟之。及欲夾之,差跌而失。則又約以來日。經宿復至。定意伺之,一夾而中。其蛇已及二寸許,赤色,麤如釵股矣。遽命火焚之。遘遂愈。復累除官,至紫微而卒。其匠亦不受贈遺。但云。某有誓救人。唯引數觴而別。出『玉堂閒話』

     ○『太平廣記』【譯文】:近年朝中有個叫于遘的中書舍人,曾經中了盅毒,沒有誰能醫治他。他於是請了長假,有點想要去遠方尋找醫生。一天,于遘柱杖坐在二門外邊,忽然被一個釘鉸匠看見。釘鉸匠問他說:“你怎麼瘦弱疲倦成這樣啊?”于遘就向他陳述了自己的病。釘鉸匠說:“我也曾中過盅毒。後來我遇到一位良醫,為我鉗出一條蛇,病就好了。我也學會了這種技術。”于遘很高興,祈求釘鉸匠給他治病。釘鉸匠說:“這是細緻的活。明天早上請不要吃飯,我來給你治病。”第二天,釘鉸匠果然來了。他讓于遘到屋簷下,面向亮處張開嘴,他拿著鉗子等待著。到了要夾時,他差點跌倒,沒有夾成。就又約第二天再來。過了一夜釘鉸匠又來了,他決心伺機夾住這條蛇。這次,一夾就夾住了。那蛇已經長到兩寸多長了,紅色,有釵股般粗細。於遘趕忙命人用火把它燒了。於遘的病就好了。他又多次拜官授職,一直做到紫微侍郎才死去。那位釘鉸匠也不接受禮品,只說:“我發過誓要救人。”他在於家只飲了幾杯酒就離去了。出自『玉堂閒話』。

     ○『玉堂閒話』卷二:近朝中書舍人于遘,嘗中蠱毒,醫治無門,遂長告,漸欲遠適尋醫。一日,策杖坐於中門之外,忽有釘鉸匠見之,問曰:「何苦而羸茶如是?」于即為陳之。匠曰:「某亦曾中此,遇良工,為某鈐出一蛇而愈。某亦傳得其術。」遘欣然,且祈之。彼曰:「此細事耳。來早請勿食,某當至矣。」翊日,果至,請遘於舍簷下,向明張口,執鈐俟之。及欲夾之,差跌而失,則又約以來日。經宿復至,定意伺之,一夾而中。其蛇已及二寸許,赤色,粗如釵股矣,遽命火焚之。遘遂愈,亦累除官,至紫微而卒。其匠亦不受贈遺,但云:「某有誓救人。」唯引數觴而別。(『太平廣記』卷二一九)

    

識典古籍*******************************************************

玉堂閑話:近朝中書舍人于遘,嘗中蠱毒,醫治無門,遂長告,漸欲遠適尋醫。

    【AI譯文】

出自『玉堂闲话』:铰匠能钳住蛇,术士能挑出虫,近朝的中书舍人于遘,曾经中了蛊毒,没有办法医治,于是请了长假,渐渐想要到远方去寻找医生。

    【AI 1】『玉堂閑話』には次のように記されています。鋏職人(きょうしょくにん)は蛇を挟み捕らえ、術士は虫を取り除くことができる。近朝の中書舎人・于遘(うこう)はかつて蛊毒(こどく)にかかり、治療法が見つからず、長い休暇を取り、遠方の医師を探そうとしていた。

    【AI 2】出典:『玉堂閑話(ぎょくどうかんわ)』蛇を挟んで捕らえることができる鋏(はさみ)職人や、体内の虫を取り出す術を持つ術士がいる。近年の中書舎人(高級文官)である于遘(うこう)は、かつて「蛊毒(こどく)」にかかり、どんな治療も効かず、仕方なく長期の休暇を取り、遠方に医者を求めて行こうと考えていた。

一日,策杖坐于中門之外,忽有釘鉸匠見之,問曰:何苦而羸 如是?

    【AI譯文】

一天,(他)拄着拐杖坐在中门的外面,忽然有个钉铰匠看到他,问道:‘为什么这么瘦弱痛苦呢?’

    【AI 1】ある日、杖をついて中門の外に座っていたところ、一人の鋏職人が彼を見かけ、「どうしてこんなにやつれ、苦しんでいるのですか?」と尋ねた。

    【AI 2】ある日、杖をついて中門の外に座っていたところ、偶然通りかかった鋏職人が彼を見て、「なぜそんなにやつれて苦しそうなのですか?」と尋ねてきた。

于即爲陳之。

    【AI譯文】

于是于就向他陈述这件事。

    【AI 1】于遘は自らの病について話し、

    【AI 2】そこで于遘は、自分が毒にかかっている事情を話した。

匠曰:某亦曾中此,遇良工爲某鈐出一蛇而愈,某亦傳得其術。

    【AI譯文】

工匠说:‘我也曾中过这种毒,遇到一位好医生为我吸出一条蛇就痊愈了,我也学到了他的医术。’

    【AI 1】職人は「私も以前、この毒にかかったが、優れた医師により蛇を吸い出され、回復した。その医術を学び、今では私も治療できる」と語った。

    【AI 2】その職人はこう言った:「私も以前、同じ毒にかかったことがあります。ある名医が私の体から蛇を吸い出してくれて治ったのです。そして私はその医術を学びました。」

遘欣然,且祈之,彼曰:此細事耳,來早請勿食,某當至矣。

    【AI譯文】

于遘很高兴,并且祈求他,那人说:‘这是小事罢了,明天早上不要吃东西,我会到的。’

    【AI 1】于遘は喜び、治療を願い出ると、職人は「それはたやすいことだ。明日の朝、食事をせずに待っていてください」と約束した。

    【AI 2】于遘はたいへん喜び、ぜひお願いしたいと頼んだ。職人は、「これは大したことではありません。明日の朝は何も食べずに待っていてください。私が来ます。」と言った。

翊曰:果至,請遘向明張口執鈐俟之,一夾而中,其蛇,巳及二寸許,赤色 如 服矣。

    【AI譯文】

陶翊说:“如果蛇真的来了,就请你在黎明时张开嘴拿着钤等候,一口就能夹住蛇,已经有二寸多长,颜色像衣服一样红。”

    【AI 1】翌朝、陶翊(とうよく)は「もし蛇が出てきたなら、夜明けに口を開け、鋏を構えて待ちなさい。一瞬でその蛇を挟み取ることができるだろう。それは二寸ほどの長さで、服のように赤い色をしている」と指示した。

    【AI 2】陶翊(とうよく)はこう語っている:「本当に蛇が現れたとき、彼は夜明けに口を開けて鉗(かん=大きな挟み)を構え、ひと挟みで蛇を捉えた。蛇はすでに二寸(約6cm)ほどの長さで、衣のように赤い色をしていた。」

★翻字において,「翊日(翌日)」を「翊曰」に誤ったため,陶淵明の甥とされる「陶翊」が生成されたのであろう。

遽命火焚之,遘遂愈。

    【AI譯文】

(他)急忙让人用火烧蛇(的尸体),杜遘的病不久就痊愈了。

    【AI 1】すると、本当に蛇が現れ、その場で鋏を使って捕らえることができた。急いで火で蛇の死骸を焼き払うと、于遘の病はほどなくして回復した。

    【AI 2】急いで火で蛇を焼いて処分すると、于遘の病はほどなくして全快した。

匠不受遺,但云:某有誓救人,唯引數觴而别。

    【AI譯文】

工匠不接受赠送的财物,只是说:‘我有救人的誓言,只喝了几杯酒就告别了。’

    【AI 1】職人は報酬を受け取らず、「私は人を救う誓いを立てている。ただ酒を数杯飲んだだけで、静かに去ることにしよう」と言い残し、立ち去った。

    【AI 2】その職人は金品の謝礼を受け取らず、「私は人を救うという誓いを立てております。ただ酒を数杯いただければ十分です。」と言い、それだけで立ち去っていった。

0 件のコメント:

コメントを投稿