2021年8月11日水曜日

解讀『醫家千字文註』048

 048 鮎口小青狸氣馨匀(真韻・平) 21 十五ウラ

https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100253551/viewer/21

鮎口小青、狸氣馨勻。

(鮎奴兼反、和名阿由、今案奈摩津是也、 郭知玄云、青黄色無鱗、大口尾薄、孫愐云、無鱗而滑、 本草曰、鮧魚即鯷也、又曰、鮧魚、一名鮎魚、一名鯷魚、有三種、口腹俱大者名鱯、背青而口小者名鮎、口小背黄腹白者名鮠、一名河㹠、又云、大首方口、背青黒、多涎也、 狸和名多多毛、今按祢古是也、帝範曰、捕鼠之狸、不可令之摶獸、 本草曰、狸一名猫也、南方有一種香狸、人以作鱠、甚香、微有麝氣、)


  【訓み下し】

鮎口小青、狸氣馨勻。(鮎(なまず)の口は小さく青し、狸(じやこうねこ)の氣(におい)は馨(かんば)しく勻(あまね)し。)

鮎、奴兼の反。和名は阿由(あゆ)。今ま案ずるに奈摩津(なまづ)、是れなり。 郭知玄云う、「青黄色にして鱗無し、大口にして尾薄し」と。孫愐云う、「鱗無くして滑」と。 

『本草』に曰わく、「鮧魚は、即ち鯷なり」と。又た曰わく、「鮧魚、一名は鮎魚、一名は鯷魚。三種有り。口腹俱に大なる者は鱯と名づく。背青くして口小なる者は鮎と名づく。口小にして背黄ばみ腹白き者は鮠と名づく、一名は河㹠」と。又た「大なる首、方なる口、背は青黒く、涎多し」と云う。 

    狸、和名は多多毛(たたげ)。今ま按ずるに祢古(ねこ)、是れなり。『帝範』に曰わく、「鼠を捕うる狸、之をして獸を摶【搏(う)】たしむ可からず」。 

『本草』に曰わく、「狸、一名猫なり。南方に一種の香狸有り。人以て鱠(なます)を作る。甚だ香(かんば)し。微(わず)かに麝氣有り」。


  【注釋】

 ○鮎:同「鯰」。【鮎魚】頭大嘴寬,尾圓而短,皮有黏質,無鱗,背部蒼黑色,腹白色,上下頜有四根須。晝伏泥中,夜出活動。肉可食,鰾入藥。[sheatfish;wels catfish] ○狸:同「貍」。哺乳動物,形狀與貓相似,毛皮可制衣物。亦稱「貍子」、「貍貓」、「山貓」、「豹貓」。ここでは「香狸(貍)」のこと。下文を参照。 ○氣:味道。鼻子聞到的味。如:「氣味」、「香氣」、「臭氣」。 ○馨:散播到遠方的香氣。 ○勻:同「匀」。均。抽出一部給別人或做別用:勻兌(讓一部分給別人)。勻攤。『廣韻』「徧也」。

 ○鮎奴兼反、和名阿由:『本草和名』卷下・蟲魚類:「鮧魚、一名鯷魚、一名鮎魚(仁𧩑音、奴兼反、已上二名、出陶景注)……和名阿由」。/仁𧩑(=諝)『本草音義』。辟閭(複姓)仁諝,武則天の聖曆(698~700年)中の司禮博士。『老子』に注す。 ○奈摩津:ナマズ目ナマズ科の淡水魚。流れの緩やかな川や湖沼の泥底にすみ、全長約50センチ。頭部は縦扁するが尾部は側扁し、うろこはない。口ひげは4本ある。体色は暗褐色ないし緑褐色で、雲形斑紋のあることが多い。夜行性。東アジアに分布。 ○郭知玄:唐初人,文字學家,嘗為長孫訥言的《切韻註》作過增補。「郭知元《切韻》」,當指郭知玄增註本的《切韻》。 ○鱗:魚類或爬蟲類等身體表面所密覆的角質或骨質的薄片組織,具有保護身體的作用。 ○孫愐:中國音韻學家。籍貫、字號均不詳。玄宗(李隆基)天寶時為陳州(今河南省淮陽縣)司馬。精音韻之學。嘗刊正隋陸法言之《切韻》,並增字加註,於天寶十年(751年)編成《唐韻》五卷,已佚。現《唐韻》卷首有孫愐《唐韻·序》。/《唐韻》是當時影響最大的一部《切韻》增訂本。 

 ○本草曰:『證類本草』卷二十・鮧:「陶隱居云:此是鯷(音題)也、……唐本注云:鮧魚,一名鮎魚,一名鯷魚。……臣禹錫等謹按蜀本『圖經』云:有三種。口腹俱大者名鱯(音護),背青而口小者名鮎,口小背黃腹白者名鮠,一名河㹠。……『圖經』曰:鮧(音夷又音題)魚,舊不著所出州土,今江浙多有之。大首方:口,背青黑,無鱗,多涎。其類有三。陶隱居云:即鯷(音題)也、即鮎(乃兼切)魚也。又有鱯(音護)魚,相似而大。鮠(五回切)魚亦相似,色黃而美。三種形性皆相類,而小不同也」。

  ★『本草綱目』卷四十四・鱗部・鮧魚:「釋名:鯷魚(音題)。……鮎魚。/集解:……保升曰︰口腹俱大者,名鱯;背青口小者,名鮎;口小背黃腹白者,名鮠」。


 ○和名:わが国で古くから用いられている事物の呼称。日本名。 ○多多毛:『本草和名』下・獸禽:「狸骨、虎狸猫……和名、多々介」。『日葡辞書』:「Tatague.たぬきのけ」。 ○祢古: 食肉目ネコ科の哺乳類。体はしなやかで、足裏に肉球があり、爪を鞘に収めることができる。口のまわりや目の上に長いひげがあり、感覚器として重要。舌はとげ状の突起で覆われ、ざらつく。夜行性で、目に反射板状の構造をもち、光って見える。瞳孔は暗所で円形に開き、明所で細く狭くなる。単独で暮らす。家猫はネズミ駆除のためリビアヤマネコやヨーロッパヤマネコなどから馴化(じゅんか)されたもの。起源はエジプト王朝時代にさかのぼり、さまざまな品種がある。日本ネコは中国から渡来したといわれ、毛色により烏猫・虎猫・三毛猫・斑(ぶち)猫などという。 ○帝範曰:唐・太宗撰『帝範』卷二・審官第四:「然則凾牛之鼎、不可處以烹雞、捕鼠之狸、不可使以摶獸(注:言非其敵也、吴起謂魏文侯曰:云云、不擇其人而用之、是如伏雞之摶狸、乳狗之犯虎、雖有闘心隨之死矣、狸摶獸、犬犯虎、何異哉、言小不可大用)」。『古事類苑』動物部五・『壒嚢抄』五「タゝゲノ筆ナンド云、タゝ毛トハタヌキノ毛歟、狸ノ字ヲタゝゲトヨム、又子コマ共ヨム、只子コト同事也、狸(タゝゲ)ヲ猯(タヌキ)ニ用ハ僻事也、サレバ帝範の審官篇云、【㴚+灬】牛之𣇄不可處以烹雞、捕鼠狸不可使之搏獣ト云リ」(返り点省略。リンクを参照)。 

https://shinku.nichibun.ac.jp/kojiruien/pdf/dobu_1/dobu_1_0383.pdf

 ○摶:捏聚搓揉成團。憑藉。集聚、結合。『古事類苑』に従い「搏」字として解す。【搏】:用手撲打。拍擊。 

 ○本草曰:『證類本草』卷十七狸骨:「唐本注云:狸……一名猫也。……『圖經』曰:……南方有一種香狸,人以作膾,生若北地狐,生法其氣甚香,微有麝氣」。

 ○香狸:亦作「香貍」。靈貓。因肛門下部有分泌腺,能發香味,故又稱香狸。唐 段成式 《酉陽雜俎‧毛篇》:「香狸,取其水道連囊,以酒燒乾之,其氣如真麝」。ジャコウネコ。 ○鱠:細切的魚肉。細切肉。同「膾」。 ○麝氣:麝香的香氣。

 ★『本草綱目』卷五十一上・獸部・貍:「集解:……南方一種香貍,其肉甚香,微有麝氣」。


0 件のコメント:

コメントを投稿