酉陽雜俎呉孫和寵鄧夫人甞醉舞如意
誤傷鄧頰血流嬌惋弥苦命太醫合藥言
得白獺髓雜玉與虎魄屑當滅此痕和以
百金購得白獺乃合膏虎魄太多及差
痕不滅左頰有赤點如痣
【訓み下し】096-2
『酉陽雜俎』:吳の孫和 鄧夫人を寵(いつく)しむ。嘗て醉って如意(まごのて)を舞(ふりまわ)し,誤って鄧の頰を傷つけ,血流る。嬌(なまめか)しく惋(なげ)きて彌々(いよいよ)苦しむ。太醫に藥を合わすを命ずれば,「白き獺の髓を得て,玉と虎魄の屑とを雜(ま)ぜば,當に此の痕(きずあと)を滅(け)すべし」と言う。和 百金を以て購(あがな)いて白獺を得て,乃ち膏を合わす。虎魄太(はなが)だ多く,差(い)ゆるに及んで痕滅(き)えず,左の頰に赤き點(きず)有ること痣(あざ)の如し。
【注釋】096-2
○酉陽雜俎:書名。唐朝段成式撰。前集二十卷,續集十卷。所記多為詭異不經之談,仙佛人鬼以至山川異物,無不畢具,頗為後世文人所援引。 ○呉:「吳」の異体字。 ○孫和:(224年—253年),字子孝,是中國三國時期吳國第一位皇帝孫權的第三子,也是吳國最後一位皇帝孫皓的父親。他曾被立為太子,但後來因為二宮之爭被罷黜,最後更被賜死。 ○寵:偏愛、溺愛。 ○鄧夫人:三國時期東吳南陽王孫和的愛妃。孫和為孫權之子,鄧氏因其容貌受寵,常被孫和抱於膝上。孫和在月下舞動水晶如意時誤傷鄧夫人面頰,太醫以水獺骨髓、玉屑與琥珀屑配制祛痕藥膏。因琥珀過量致其頰留赤色斑點。宮中嬪妃爭相效仿,以丹脂點頰形成面靨妝,逐漸演變為六朝時期標志性妝容。該典故被『情史類略』等文獻記載,印證了鄧夫人在古代妝飾文化中的影響。 ○甞:「嘗」の異体字。 ○舞:耍動、揮動。 ○如意:搔背的器具。以骨角、竹木削作人手指爪形,有長柄,可如人心意,搔背部的癢,故稱為「如意」。後世演變成一種象徵吉祥的陳設品,以金、玉等精緻質料刻製,頂端多作靈芝形或雲形,長柄微曲,可供賞玩。/器物名。梵語“阿那律”的意譯。古之爪杖。用骨、角、竹、木、玉、石、銅、鐵等製成,長三尺許,前端作手指形。脊背有癢,手所不到,用以搔抓,可如人意,因而得名。或作指劃和防身用。又,和尚宣講佛經時,也持如意,記經文於上,以備遺忘。 ○嬌:柔美可愛的姿態。美女。柔弱、柔美。 ○惋:痛惜、驚嘆。/嬌惋:『酉陽雜俎』作「嬌婉」。柔媚(以和順奉承取悅於人)。 ○弥:「彌」の異体字。 ○合藥:調配藥物。 ○白獺髓:白獺的骨髓。可作珍貴的藥物。 ○雜:混合、摻入。 ○玉:寶石的一種,一般指的是閃玉或輝玉。閃玉為含鎂的透閃石或含鐵的陽起石,輝玉為含鈉的輝石。 ○虎魄:琥珀。古代松柏等樹脂的化石。為淡黃色、褐色或赤褐色的半透明固體,光澤美麗,質脆,燃燒時有香氣。可製琥珀酸和各種漆,也可做飾物。也作「丹珀」、「丹魄」、「虎魄」。 ○屑:碎末、粉碴。 ○滅:消失、消逝、絕盡。 ○痕:傷疤。 ○百金:形容錢多。比喻價值昂貴。大金。 ○購得:買到。 ○膏:濃稠的糊狀物。如:「藥膏」。 ○點:小的痕跡。 ○痣:皮膚上所自發產生的局部性斑點或突起,可能是色素細胞或血管性、表皮性或其他皮膚組織的增生。ほくろ。あざ。
○『醫說』卷十・瘡・獺髓補瘡:「吳孫和寵鄧夫人,嘗醉舞如意誤傷鄧頰,血流,嬌惋彌苦。命太醫合藥。言得白獺髓,雜玉與琥珀屑,當滅此痕。和以百金購得白獺,乃合膏。琥珀太多,及差痕不減〔一作「滅」〕,左頰有赤點如誌〔一作「痣」〕(〔出〕『酉陽雜俎』)」。
○『太平廣記』醫一・吳太醫:吳孫和寵鄧夫人。嘗醉舞如意,誤傷鄧頰,血流,嬌惋彌苦。命太醫合藥。言得白獺髓。雜玉與虎魄屑。當滅此痕。和以百金購得白獺,乃合膏。虎魄太多。及差,痕不滅,左頰有赤點如痣。(出『酉陽雜俎』)
○『太平廣記』【譯文】:吳國的孫和寵愛鄧夫人。一次孫和酒醉後揮舞如意,不意刺傷了鄧夫人的面頰,流出了血。鄧夫人嬌聲嘆惜,疼痛不已。孫和令太醫配藥。太醫說用白獺骨髓、雜玉和琥珀粉末調配,可以除掉疤痕。孫和用一百兩黃金買來白獺,於是太醫配製藥膏。因琥珀用得過多,到傷愈時,鄧夫人左頰疤瘡沒有完全去掉,臉上留下一顆像痣一樣的紅點。(出自『酉陽雜俎』。)
○段成式『酉陽雜俎』卷八・黥:近代妝尚靨如射月,曰黃星〔一曰是〕靨。靨鈿之名,蓋自吳孫和鄧夫人也。和寵夫人,嘗醉(人舞)如意,誤傷鄧頰血流,嬌婉彌苦。命太醫合藥,醫言得白獺髓,雜玉與虎珀屑,當滅痕。和以百金購得白獺,乃合膏。虎珀太多,及痕不滅。左頰有赤點如意,視之更益甚妍也。諸婢欲要寵者,皆以丹青點頰而進幸焉。
○(東晉)王嘉『拾遺記』卷八・吴:孫和悅鄧夫人,常置膝上。和於月下舞水精如意,誤傷夫人頰,血流污褲,嬌奼〔嫵媚嬌美。嬌媚,艷麗。〕彌苦。自舐其瘡,命太醫合藥。醫曰:「得白獺髓,雜玉與琥珀屑,當滅此痕。」即購致百金,能得白獺髓者,厚賞之。有富春漁人云:「此物知人欲取,則逃入石穴。伺其祭魚之時,獺有鬭死者,穴中應有枯骨,雖無髓,其骨可合玉舂為粉,噴於瘡上,其痕則滅。」和乃命合此膏,琥珀太多,及差而有赤點如朱,逼而視之,更益其妍。諸嬖人欲要寵,皆以丹脂點頰而後進幸。妖惑相動,遂成淫俗。〔孫和は鄧夫人を膝の上に座らせて楽しんでいた。孫和が月の光の下で水晶製の如意〔孫の手〕を振り回していると、誤って夫人の頬を傷つけてしまい、血が流れて服を汚した。美しい夫人は痛みに苦しんだ。孫和は自らその傷を舐め、太医(皇帝に仕える医者)に薬を調合するよう命じた。太医は「白獺(しろかわうそ)の髄と玉、琥珀の粉を混ぜれば、この痕は消えるでしょう」と言った。孫和は百金を出して白獺の髄を手に入れるために、これを得たものには,十分な報奨金を与えることにした。ある富春の漁師が「この動物は人が取りに来ると知ると、岩の穴に逃げ込みます。魚を祭る時を狙っていると、獺同士の争いで死ぬものがあり、穴の中に枯れた骨があるはずです。髄は無いが、その骨を玉と一緒に粉にして傷に振りかければ、その痕は消えるでしょう」と言った。孫和はこの膏薬を作るよう命じたが、琥珀が多すぎて、傷が治るとやがて赤い点が朱のように現れた。近づいて見てみると、ますます美しくなっていた。寵愛を得たい者は皆、丹脂(口紅の一種)を頬に点けてから寝室に入り、媚態を見せるようになった。その結果、淫乱な風習が広がった。〕
○段公路(段成式の一族)『北戶錄』卷三:見『拾遺』引:孫和悅鄧夫人,常置膝上。和月下舞水精如意,誤傷夫人頰,流血染袴,和自䑛瘡。太醫曰:獺髓雜玉及琥珀屑,當滅痕。購以百金。有富春漁人云:獺,神物也。取則逃之。伺祭魚時,有鬬死穴者枯骨。可合舂,以滅痕。和乃作膏。琥珀太多,痕未滅而類有赤點。細視之,更益其妍。諸嬖要寵者,以丹青點頰,而後進幸。
○李商隱『贈歌妓』:水精如意玉連環,下蔡城危莫破顏〔水晶做的如意(如意的形狀像長柄鉤,鉤頭扁如貝葉),玉做的連環,不要笑,否則下蔡這座城將危亡〕。紅綻櫻桃含白雪,斷腸聲裏唱陽關〔紅潤的櫻桃小嘴內含著白如雪的齒貝,一曲『陽關』卻唱得淒惻動人令人斷腸〕。
識典古籍*******************************************************
酉陽雜俎:吳孫和寵鄧夫人,嘗醉舞如意,誤傷鄧頰,血流,嬌惋彌苦,命太醫合藥,言得白獺髓,雜玉與虎魄屑,當滅此痕。和以百金購得白獺,乃合膏。虎魄太多,及差,痕不滅,左頰有赤點如痣。
【AI譯文】
『酉阳杂俎』记载:东吴孙和宠爱邓夫人,有一次他喝醉了挥舞如意,不小心伤到了邓夫人的脸颊,血流不止,邓夫人娇柔凄楚,痛苦万分。孙和命令太医配药,太医说用白獭的骨髓,混合玉石和琥珀的碎屑,就能消除这个伤痕。孙和用百金买到了白獭,就制成了神膏。琥珀药用得太多,等到病愈,瘢痕也不会消除,(患者)左脸颊有红色的点如同痣一样。
【AI 1】『酉陽雑俎』には次のように記されています。東呉の孫和は鄧夫人を深く愛していた。ある日、彼は酒に酔い、如意を振り回していたところ、誤って鄧夫人の頬を傷つけてしまった。血が止まらず、鄧夫人は痛みに耐えながら、ひどく悲しげであった。孫和は太医に薬を調合するよう命じた。太医は「白獭(白イタチ)の骨髄を玉石と琥珀の粉末と混ぜれば、傷痕を消すことができます」と答えた。孫和は百金を払って白獭を手に入れ、神膏を作った。しかし、琥珀を多く使用したため、傷は治ったものの、瘢痕は完全に消えず、鄧夫人の左頬には赤い斑点が残り、まるで痣のようになってしまった。
【AI 2】『酉陽雑俎』にはこう記されている。東呉の孫和(そんか)は邓夫人を深く寵愛していた。あるとき彼は酔って如意(儀杖の一種)を振り回し、誤って邓夫人の頬を傷つけてしまい、血が止まらなくなった。邓夫人はか弱く悲しげで、痛みに苦しんでいた。孫和は太医(宮廷医師)に命じて薬を調合させた。太医は、「白いカワウソ(白獺)の骨髄に、玉や琥珀の粉末を混ぜれば、この傷は消せます」と進言した。孫和は百金(非常な高額)で白獺を買い取り、「神膏(しんこう)」という軟膏を作らせた。しかし琥珀を薬に使いすぎたため、たとえ病が治っても傷痕は完全には消えず、左の頬に赤い点が残り、まるでほくろのようになってしまった。
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