2025年9月2日火曜日

『歷代名醫蒙求』059-2

     名醫録温州有上髙匠温興因造屋上梁

    失脚墜地地上有鏟頭豎柱傍脚被傷血 

    如湧出村中無藥却有門徒僧道光於空 

    屋門扇上聚得一撮塳塵掩定即血不出

    痛止兩日便厴堅興問道光塳塵如何治

    得金瘡曰古人用門桯塵者此也

    

  【訓み下し】059-2

    『名醫錄』:溫州に上高匠の溫興有り〔『醫說』作「溫州に匠人有り」。〕。屋を造るに梁を上ぐるに因って,脚を失(あやま)って地に墜(お)つ。地上に鏟の頭有り,柱の傍に豎(た)つ。脚 傷を被り,血 湧き出づるが如し。村中に藥無し。却(まさ)に門徒僧の道光有り。空屋の門扇の上に於いて,一撮(つま)みの塳塵を聚め得て,掩い定むれば,即ち血出でず,痛み止まる。兩日にして便ち厴(かさぶた)〔𥀬〕堅く興こる。道光に問う,「塳塵は如何にして金瘡を治し得るか」。曰わく,「古人の門桯の塵を用いる者は,此れなり」。

    

  【注釋】059-2

 ○名醫録:008を参照。 ○温州:漢永嘉郡。唐置温州。尋曰永嘉郡。後復曰温州。宋曰温州永嘉郡。升爲瑞安府。元置温州路。明曰温州府。清因之。民國廢。故治卽今浙江永嘉縣。⦿唐置北温州。尋廢。故治在今山西孝義縣西九十里。/温:「溫」の異体字。 ○髙:「高」の異体字。 ○匠:泛稱各種技術工人。 ○温興:「温州有上髙匠温興」,『醫說』作「溫州有匠人」。 ○屋:房舍。房間。 ○上梁:建造新屋時,架上主梁。依民間習俗,上梁時,須備香燭禮品,祝告祖先、神祇,以求家宅平安。 ○失脚:舉步不慎而跌倒。走路不小心而跌倒。/脚:「腳」の異体字。 ○墜地:物體落地。 ○鏟:一種帶把的金屬器具,可削平或撮取東西。やりがんな。ちょうな。 ○豎:使物體直立。清・王念孫『廣雅疏證』卷四上・釋詁:「豎,立也。」 ○却:「卻」の異体字。正、恰好。/『醫說』になし。 ○門徒:弟子、徒弟。守門吏。江南舊俗,大戶人家有約定的僧尼道士做禮懺,平時互相往還,這些僧道被稱為某施主的“門徒”。/『醫說』になし。 ○空屋:無人居住的屋子。 ○門扇:指門。門扉。房屋、城墻、車舟等出入口能開關的障蔽裝置。 ○一撮:容量單位,古以六粟為一圭,十圭為一撮,見『孫子算經』;或以四圭為一撮,見『漢書‧律曆志上』“量多少者不失圭撮”顏師古注引應劭說。按,今市制一撮等於一市升的千分之一。用兩三個手指所能撮取者。形容微少。 ○塳:塵土。 ○塵:飛揚的細小灰土。如:「塵埃」。 ○掩:遮蔽。 ○厴:蟹臍,蟹腹下的薄殼 [operculum]。46でも同じ字が用いられている。前後の意味から,「𥀬」(瘡痂)字と解しておく。 ○金瘡:金屬利器對人體所造成的創傷。刀劍等金屬器械所造成的傷口。 ○門桯:門檻。/桯:堂屋前的柱子。通「楹」。橫木。碓等工具的杆子或短木。

     ○『醫說』卷七・湯火金瘡・治金瘡・又:「溫州有匠人,造屋失腳墜地。地上有鏟頭豎柱傍,腳痃被傷,血如湧出。村中無藥。有僧道光於門扇上撮得塳塵掩定,血止痛定,兩日便靨堅。問道光,塳塵如何治得金瘡?曰:古人用門桯塵者,此也」。


    

識典古籍*******************************************************

名醫錄:溫州有上高匠溫興,因造屋上梁,失脚墜地,地上有鏟頭豎柱,傍脚被傷,血如湧出。

    【AI譯文】

『名医录』记载:温州有个工匠叫温兴,有一次在建造房屋的时候,上梁时失足坠地,地上有一把铲头竖在那里,铲头的尖部把他的小腿扎伤了,鲜血汩汩流出。

    【AI 1】『名医録』には以下のように記されています。温州に温興という工匠がいた。ある時、彼が家屋の建設作業をしていた際、梁を上げる作業中に足を踏み外し、地面へ転落してしまった。その地面には立てかけられていた鋤(すき)の刃先があり、それが彼のすねを突き刺した。すると、鮮血がどくどくと流れ出たのである。

    【AI 2】『名医録』には次のように記されています:温州に温興(おんこう)という名の職人がいた。あるとき、家屋の建築作業中に梁を上げている最中、足を滑らせて地面に落ちてしまった。ちょうどそこには鍬(くわ)の刃先が立てかけられており、その鋭い先端が彼のすね(脛)に突き刺さって、大量の血がどくどくと流れ出した。

村中無藥,卻有門徒僧道光,於空屋門扇上聚得一撮塳塵,掩定,即血不出,痛止兩曰,便厴堅。

    【AI譯文】

村子里没有药,但是有个名叫道光的门徒僧,在空屋子的门扇上收集到一小撮尘土,涂在伤口上,血马上就不流了,疼痛也止住了,两天后,伤口就愈合了。

    【AI 1】村には薬がなかった。しかし、「道光」という名の僧の弟子が、空き家の扉についたわずかな埃を集め、それを傷口に塗ったところ、すぐに出血が止まり、痛みも消えた。そして二日後には傷口が完全に治癒した。

    【AI 2】村には薬がなかったが、道光という名の弟子僧がいた。彼は空き家の戸板の上にたまった少量のほこりを集め、それを傷口に塗った。すると血はすぐに止まり、痛みも収まり、二日後には傷が癒えた。

興問道光:塳塵如何治得金瘡?

    【AI譯文】

温兴问道光:‘塳尘如何治得金疮?’

    【AI 1】温興は道光に尋ねた。「門戸の埃でどうして金創(刀傷)を治せるのか?」

    【AI 2】温興(おんこう)が道光に尋ねた:「戸板のほこりでどうして刀傷(きんしょう)が治せるのか?」

曰:古人用門程塵者,此也。  ★程:原文は「桯」。はしら。

    【AI譯文】

他说:‘古人用门篷上的尘土来治病,就是这种东西。’

    【AI 1】すると道光は答えた。「古代の人々は、門や天幕に積もった埃を使って病を治療していた。それと同じものなのだ。」

    【AI 2】道光はこう答えた:「古人は門の庇(ひさし)や戸の上のほこりを使って病を治したもので、それがこの塵(ちり)なのです。」

2025年9月1日月曜日

『歷代名醫蒙求』059-1 

 孫使醋泥 僧用塳塵  孫は醋の泥を使い 僧は塳の塵を用ゆ (孫光憲・僧道光)

    北夢瑣言火燒瘡無出醋泥甚驗孫光憲

    甞家人作煎餅一婢抱孩子擁爐不覺落

    大炭之上遽以醋泥傅之至曉不痛亦無

    瘢痕是知俗說亦不厭多聞

    

    【訓み下し】059-1

    『北夢瑣言』:火燒の瘡(きず)は醋の泥より出づるは無く,甚だ驗あり。孫光憲 嘗て家人に煎餅を作らしむ。一婢 孩子を抱(かか)えて爐(いろり)を擁す。覺えず大炭の上に落とす。遽かに醋の泥を以て之に傅(つ)く。曉に至っても痛まず,亦た瘢痕無し。是れ知る,俗說も亦た多聞を厭(いと)わざるを。

    

    【注釋】059-1

 ○北夢瑣言:019を参照。 ○火燒:火熱。一種烤餅。一種以麵粉加水做成在火上烤熟,餅上沒有芝麻的餅。 ○瘡:皮膚或黏膜上的潰瘍。創傷、外傷。 ○醋:以米、麥、高粱等釀成,用來調味的酸味液體。 ○泥:搗碎、壓碎調勻像泥狀的東西。/現在,「醋泥」を名に持つ商品がいくつか売られているが,多くは健康食品のようである。 ○孫光憲:(?~968年),字孟文,自號“葆光子”,陵州貴平(今四川省仁壽縣)人。五代時期荊南大臣、文學家。 ○甞:「嘗」の異体字。曾經。 ○家人:家中的人;一家人。僕役。舊時對僕人的稱呼。 ○煎餅:用麵粉與水調成稠糊狀,在平底鍋中攤成薄餅,煎而食之,稱為「煎餅」。/在鏊子上攤勻烙熟的餅。 多用調成糊狀的高粱、小麥麵或小米麵作原料。 ○婢:古代罪犯妻女沒入官家為奴,稱為「婢」。舊稱供使喚的丫頭。如:「婢女」。 ○抱:用手臂摟起。 ○孩子:小孩,兒童。亦指兒子;子女。 ○擁:圍著。環抱 [surround]。護衛 [guard]。 ○爐:供燃燒用的設備、器具。 ○不覺:沒有察覺、感覺不到。不料,意想不到。 ○遽:急忙、迫促。遂、就。 ○傅:擦抹、塗抹。 ○瘢痕:疤痕。創口或瘡口留下的痕跡。 ○俗說:民間流傳的說法。 ○不厭:不嫌;不加以排斥。不憎惡、不厭棄。不厭煩。 ○多聞:見聞廣博,增廣聞見。

    

識典古籍*******************************************************

北夢瑣言:火燒瘡無出醋泥甚驗。孫光憲嘗家人作煎餅,一婢抱孩子擁爐,不覺落大炭之上,遽以醋泥傅之,至曉不痛,亦無瘢痕。

    【AI譯文】

『北梦琐言』记载:被火烧伤的疮伤没有比醋泥更好的治疗方法了,这非常灵验。孙光宪曾经让家人做煎饼,一个婢女抱着孩子靠近炉灶,孩子不小心掉到了一块很大的炭火上面,(婢女)急忙用醋和泥涂抹(孩子的烫伤处),到天亮(孩子)都不觉得痛,也没有留下疤痕。

    【AI 1】『北夢瑣言』には以下のように記されています。火傷の治療法として、酢と泥を使った方法より優れたものはない。これは非常に効果的である。孫光憲が家族に煎餅を作らせた際、一人の侍女が子供を抱えて炉の近くにいた。その子供が誤って大きな炭火の上に落ちてしまった。侍女は慌てて酢と泥を混ぜたものを火傷した箇所に塗った。すると、夜が明けるころには痛みを感じることもなく、傷跡も残らなかった。

    【AI 2】『北夢瑣言』には次のように記されています:火傷による創傷には、酢と泥を混ぜた「酢泥(さくでい)」より効果的な治療法はなく、非常によく効くものである。孫光憲(そんこうけん)はかつて家人に煎餅を作らせていたとき、ある婢女(はしため)が子どもを抱いて炉のそばに近づいた。すると子どもが誤って大きな炭火の上に落ちてしまった。婢女はすぐに酢と泥を混ぜてその火傷に塗りつけたところ、夜が明けるまで子どもは痛がることもなく、火傷の痕も残らなかった。

是知俗說亦不厭多聞。

    【AI譯文】

由此可知,民间的说法也不应厌烦多听。

    【AI 1】このことからも、民間の言い伝えを軽んじるべきではないことが分かる。

    【AI 2】これにより、民間の言い伝えも軽んじることなく、耳を傾けるべきだということがわかる。

『歷代名醫蒙求』058-2

     名醫録汾州酒戸武妻王氏得病有聲若 

    蝦蟇常欲手按之不測聲聲相接郡醫皆

    弗能辨聞晉陽山人趙巒届彼命之𧧂巒 

    曰此因所驚吞服其氣入於臟腑成疾故

    作當聲斯病之應象也王氏曰因邊水行

    次有大蝦蟇躍髙數尺驀作聲氏忽然 

    驚叫便覺右脇卒痛自後漸作聲巒乃與

    六神丹服之來日取下青涎類蝦蟇之衣 

    遂差趙巒本太原晉陽人愚甞問王氏之 

    病巒言𧧂得右関脉伏結水積病其如作

    聲者非感其聲之氣焉能亦聲也故止作

    積病用六神丹𣳘之而差也     

    

    【訓み下し】058-2

    『名醫錄』:汾州の酒戶,武の妻王氏 病を得,〔『醫說』に「右脇に」あり〕聲有ること蝦蟇の若(ごと)し。常に手もて之を按(お)さえんと欲す。測らず〔『醫說』「不(しか)せずんば,則ち」〕聲聲相い接(つ)ぐ。郡〔『醫說』作「群」〕醫皆な辨ずること能わず。聞くならく晉陽の山人趙巒 彼に届(いた)り,之に命じて診しむ。〔『醫說』作「晉陽の山人趙巒 診を善くすと聞く。」〕巒曰わく,「此れ驚く所に因って,其の氣を吞服し,臟腑に入って疾(やまい)と成る。故に當聲を作(な)す〔『醫說』「故に常に聲を作(な)す」〕。斯れ病の象に應ずるなり」。王氏曰わく,「邊水の行次に因って,大いなる蝦蟇有り,躍(はねあが)ること高數尺,驀として聲を作(な)す。氏(これ) 忽然として驚き叫び,便ち右脇に卒(にわ)かなる〔卒:『醫說』「牽きつれる」〕痛みを覺ゆ。自後漸く聲を作(な)す〔『醫說』に「尚お蝦蟇に似たり」あり〕」。巒乃ち六神丹を與えて之を服(の)ましむ。來たる日,取って青き涎を下せば,蝦蟇の衣に類す。遂に差(い)ゆ。趙巒,本(もと)太原晉陽の人なり。愚嘗て王氏の病を問う。巒言う,「〔『醫說』「王氏の脉を」〕診て右の關脉に伏結を得たり。水積の病なり。其の聲を作(な)すが如き者は,其の聲の氣に感ずるに非ずんば,焉くんぞ能く亦た聲あらんや。故に積病を作すを止むるに,〔『醫說』「治するに」〕六神丹を用いて之を泄らして差(い)ゆるなり」。

    

  【注釋】058-2

 ○名醫録:008を参照。 ○汾州:後魏太和間置。治蒲子城。在今山西隰縣東北。後廢。北周復置。隋曰西汾州。又改隰州。⦿後魏孝昌中置。治西河。今山西汾陽縣治。北齊改曰南朔州。北周改曰介州。隋改曰西河郡。唐置浩州。改曰汾州。又改爲西河郡。尋復爲汾州。宋曰汾州西河郡。金元皆曰汾州。明升爲汾州府。⦿東魏置南汾州。北周改曰汾州。北齊復曰南汾州。周曰西汾州。隋廢。唐置耿州。改曰汾州。尋曰南汾州。又改爲慈州。故治卽今山西吉縣。 ○酒戸:賣酒或供人飲酒的地方。唐宋時經官方許可的私營酒坊。這種酒坊,必須向官方買麯,然後自釀自銷。/戸:「戶」の異体字。 ○氏:古代稱呼已婚婦女,常於父姓或夫姓與父姓之後繫氏。如:「張氏」、「王氏」。 ○蝦蟇:動物名。兩生綱無尾目蛙屬。體型類似蟾蜍而較小,色呈暗褐,背有黑點,善跳躍,鳴叫時作呷呷聲,常居於沼澤邊。也作「蛤蟆」。/蟇:「蟆」の異体字。 ○不測:不能預料。難以意料;不可知。料想不到的事情。多指禍患。意外或不能預料的禍害。不可計數;不可測量。/『醫說』作「不則」。 ○相接:連續;連接。相連。 ○郡:『醫說』作「群」。眾多。 ○晉陽:古唐國。相傳帝堯始都此。周初滅唐。成王封其弟叔虞于此。後改國曰晉。〔左傳定公十三年〕「趙鞅入于晉陽以叛。」其後簡子使尹鐸爲晉陽。及智伯攻趙襄子。走晉陽。卒滅智伯。漢置縣。故城卽今山西太原縣治。高齊移汾水東。於此置龍山縣。隋廢龍山縣。移晉陽縣理焉。唐高祖自晉陽起義遂定天下。宋時縣廢。⦿南朝梁置。隋廢。故治在今安徽東流縣東北。 ○山人:隱居在山中的士人。指仙家、道士之流。仙家、道士。 ○届:「屆」の異体字。至、到。 ○𧧂:「診」の異体字。 ○作當聲:『醫說』作「常作聲」。 ○行次:工作、職務。出行夜宿。謂旅途暫居的處所。 ○躍:跳動。 ○髙:「高」の異体字。 ○驀:忽然。 ○作聲:出聲。發出聲響。 ○氏:自分のことを「氏」というか不審だが,「わたくし」の意なのであろう。通「是」。此,這 [this]。 ○忽然:表示情況的發生,迅速得出乎意料。突然。 ○驚叫:吃驚地喊叫。 ○卒痛:『醫說』作「牽痛」。 ○自後:從此以後。厥後。 ○六神丹:宋『太平惠民和劑局方』六神丹:【功效與作用】 治小兒疳氣羸瘦,臟腑怯弱,泄利虛滑,乳食減少,引飲無度,心腹脹滿。/『太平惠民和劑局方』卷十・六神丹:【功效與作用】 理氣溫中,殺蟲止瀉。治小兒疳氣羸瘦,臟腑怯弱,泄利虛滑,乳食減少,引飲無度,心腹脹滿。/『局方』卷十・六神丹:【功效與作用】 小兒疳氣羸瘦,臟腑怯弱,泄瀉虛滑,乳食減少,引飲無度,心腹脹滿。/『普濟方』卷三七五引『衛生家寶』・六神丹:【功效與作用】 安神養魄,去風邪,定嗽喘,利膈。主小兒急慢驚風,涎潮氣壅。/『普濟方』卷一六九・六神丹:【功效與作用】 男子婦人,遠年近日,飲酒過度,結成痞塊,噫醋吞酸,肚腹膨脹疼痛,諸般積病。/『萬氏家抄方』卷三・六神丹:【功效與作用】 氣滯腹急,大便閉澀。 ○來日:明日, 次日。 ○取:得到。 ○差:病癒。通「瘥」。 ○太原:〔書禹貢〕「旣修太原。至於岳陽。」卽今山西舊太原汾州二府之地。亦作大鹵、大夏、夏墟。⦿〔詩小雅〕「薄伐玁狁。至於太原。」卽太原戎所居。周宣王料民之地。毛鄭皆不詳其地。朱子以爲卽今太原陽曲。顧炎武日知録謂周人之遇玁狁。必在涇陽原州之間。清一統志承其説。斷爲在今甘肅固原北界。 ○愚:自稱的謙詞。『(神秘)名醫錄』の撰者,北宋の黨永年のことか。 ○甞:「嘗」の異体字。 ○𧧂:『醫說』作「診王氏脉」。 ○関脉:寸口脈三部之一。寸、關、尺,脈學術語。「寸口」脈分成三部的名稱,橈骨莖突處為關,關之前(腕端)為寸,關之後(肘端)為尺。寸、關、尺三部的脈動,分別稱為「寸脈」,「關脈」、「尺脈」。關於三部脈候臟腑的問題,歷代論說頗多,但基本精神是一致的,即以臨床常用的劃分方法為代表:左手寸脈候心,關脈候肝,尺脈候腎;右手寸脈侯肺,關脈候脾胃,尺脈候命門。總的來說是「上寸脈以候上(軀體上部),下尺脈以侯下(軀體下部)」的原則。/関:「關」の異体字。 ○伏:伏脈,脈學名詞。指一種脈象。脈來伏隱,重按推筋著骨始得。見於邪閉、厥證、痛極等病證。『難經』十八難:「伏者,脈行筋下也。」 ○結:結脈(slow and irregular pulse),脈來遲緩而有不規則間歇的脈象。是脈律失常中最常見的一種脈象。其特徵是脈律不規則(止無定數),即在一次完整的脈搏之後,出現停搏或提前出現一次小的搏動,而後出現一個完全或不完全性代償間歇期。結脈主陰盛氣結、痰凝血瘀等證。陰盛則陽氣不達,故脈來緩慢而時有間歇。痰凝血瘀,使脈氣不相接續,亦可呈現結脈。 ○水積:病證名。多飲湯水而致積病。為九積之一。『儒門事親』卷三:「水積,足脛脹滿,郁李、商陸之類,甚者甘遂、芫花。」『雜病源流犀燭』積聚症瘕痃癖痞源流:「水積,多飲湯水成積,胸脅引痛,瀝洛有聲也。」 ○𣳘:「泄」の異体字。

     ○『醫說』卷七・奇疾・王氏異疾:「汾州王氏得病,右脇有聲如蝦蟇,常欲手按之。不則聲聲相接。羣醫弗能辯。聞晉陽山人趙巒善診。巒曰:此因驚氣入于臟腑,不治而成疾,故常作聲。王氏曰:因邊水行次,有大蝦蟇,躍高數尺,驀作一聲,氏忽驚呌,便覺右脇牽痛,自後作聲,尚似蝦蟇也。巒乃與六神丹服之,來日取下青涎,類蝦蟇之衣,遂差。巒言:診王氏脉,右關脉伏結,積病也。故止作積病,治用六神丹泄之而愈(『名醫錄』)」。

    

識典古籍*******************************************************

名醫錄:汾州酒户武妻王氏得病,有聲若蝦蟆,常欲手按之,不測聲聲相接,郡醫皆弗能辨。

    【AI譯文】

『名医录』记载:汾州酒户武某的妻子王氏生了病,(她的肚子里)有像蛤蟆一样的声音,常常想要用手去按(肚子),(那声音)接连不断,州郡里的医生都不能辨别(这是什么病症)。

    【AI 1】『名医録』には以下のように記されています。汾州の酒造家・武某の妻である王氏が病を患い、お腹の中からまるでカエルの鳴き声のような音が聞こえるようになった。彼女は頻繁に手でお腹を押さえたくなるほどで、その音は途切れることなく続いた。州や郡の医者たちも、この病の正体を見極めることができなかった。

    【AI 2】『名医録』には以下のように記されています:汾州の酒造業者・武某の妻である王氏が病を患った。彼女の腹部からは、まるでカエルのような音がして、しきりに手で押さえたくなるような感覚があり、その音は絶え間なく続いていた。州や郡の医者たちは誰もその病の正体を見極めることができなかった。

聞晉陽山人趙巒届彼,命彌之。

    【AI譯文】

听说晋阳山人赵峦到了那里,就让他治病。

    【AI 1】その頃、晋陽の隠者・趙峦がそこへ訪れていたため、彼に診療を依頼した。

    【AI 2】そのとき、晋陽の山人・趙峦(ちょうらん)がその地にやって来たと聞いて、王氏は彼に治療を依頼した。

巒曰:此因所驚吞服,其氣入于臟腑成疾,故作當聲,斯病之應象也。

    【AI譯文】

峦说:这是因为受到惊吓而吞服(东西),那股气息进入到脏腑之中从而生成疾病,所以发出这样的声音,这是疾病的相应征候啊。

    【AI 1】趙峦はこう言った。「これは驚いて何かを飲み込んでしまい、その気が内臓へ入り込むことで病へと変化し、結果としてこうした音が発生するのです。これは病の典型的な症状の一つでしょう。」

    【AI 2】趙峦はこう言った:「これは驚きによって何かを飲み込み、それによって気が内臓に入り込んで病となったもので、この音はその病の現れです。」

王氏曰:因邊水行次,有大蝦蟆躍高數尺,驀作聲。

    【AI譯文】

王氏说:“沿着水边行进,有一只大蛤蟆跳起来好几尺高,突然发出叫声。

    【AI 1】すると王氏は話した。「私は水辺を歩いていた際、大きなカエルが数尺も跳ね上がり、突然鳴き声を上げたのです。

    【AI 2】王氏が語ったところによると、「水辺を歩いていたとき、大きなカエルが数尺も跳ね上がって、突然鳴き声を上げました。

氏忽然驚叫,便覺右脅卒痛,自後漸作聲。

    【AI譯文】

王氏忽然惊叫,就感觉右胁部突然疼痛,从这之后渐渐发出声音。

    【AI 1】その瞬間、私は驚いて叫び声をあげました。同時に右脇に激痛を感じ、それ以来、この音が鳴り始めたのです。」

    【AI 2】それに驚いた私は思わず叫び声をあげ、すると右の脇腹に突然痛みを感じ、その後しだいにこの音がし始めました。」

巒乃與六神丹服之,來日,取下青涎,類蝦蟆之衣,遂差。

    【AI譯文】

赵峦就给她服用了六神丹,第二天,她排出了青色的涎液,像蛤蟆的外皮一样,于是病就好了。

    【AI 1】そこで趙峦は彼女に「六神丹」を服用させた。すると翌日、彼女は青色の粘液を排出した。それはまるでカエルの皮膚のようなものであり、それとともに病は治ったのである。

    【AI 2】趙峦は彼女に「六神丹(ろくしんたん)」という薬を服用させた。翌日、王氏はカエルの皮のような形状の青い粘液を排出し、それによって病は完全に治癒した。

趙巒本太原晉陽人,愚嘗問王氏之病,巒言:診得右關脉伏結木積,病其如作。

    【AI譯文】 ★「木積」:原文は「診得右關脉伏結,水積病,其如作聲者」と句讀すべきであろう。

赵峦本是太原晋阳人,我曾经询问王氏的病情,赵峦说:“我诊断出她的右关脉伏结木积,她的病发作时就会这样。”

    【AI 1】趙峦は本来、太原・晋陽の出身であった。私はかつて王氏の病状について尋ねたことがあり、その際、趙峦はこう語った。「彼女の右関脈には伏結した木積があり、発病するとこのような症状が出るのです。

    【AI 2】趙峦は太原の晋陽の人であり、私は彼に王氏の病について尋ねたところ、彼はこう答えた:「私は彼女の右関脈に“伏結の木積(ふくけつのもくせき)”を感じ取りました。彼女の病が発作する時には、まさにこのような症状が現れるのです。

聲者,非感其聲之氣,焉能亦聲也?

    【AI譯文】

声音,如果不是感受到发出声音的那种气,怎么能也发出声音呢?

    【AI 1】音が鳴るということは、体内に音を発生させる気があるということ。それが積もることで病へと発展するのです。

    【AI 2】音が鳴るということは、音を発する“気”がなければ起こりえません。

故止作積病,用六神丹泄之而差也。

    【AI譯文】 ★「止」を「とめる」ではなく,「ただ」と解している。

所以只造成积病(的情况),用六神丹来泄泻(通便)就痊愈了。

    【AI 1】そのため『六神丹』を用いた排泄作用によって完治したのです。」

    【AI 2】つまり、それは“積病(慢性的な内臓の病気)”なのです。だから、六神丹で下してやれば治るのです。」